出版社 : 幻冬舎
二〇〇〇年春、東京大森に事務所をもつ彦坂一郎のもとに、白鳥和子は現れた。初対面の彦坂に「わたしの遺言の執行人となってほしい」と依頼する和子にその理由を尋ねると、「あなたの名前がとても素敵だから」と言う。特別な名前ではないと不思議に思う彦坂だったがー。和子の死後に明かされる、隠されていた戦争の悲劇と愛。心に響く、現代の名作。後見契約によって結びつけられた天涯孤独の女性と司法書士が奏でる、希望の物語。
舶用機器専業の会社を経営し、日々ソナー開発に奔走する芦原俊夫はある日を境に封印していた過去と向き合うことになる。「自分には似つかわしくない人生を自分は生きている。そういう思いをどのように自分に納得させればいいのか分からない」俊夫の歩んだ道の先にあるものとは果たして…。ひょんなことがキッカケで、自分の中に眠る凶暴な一面に気づいた芦原。人は“定められし運命”から逃れることはできないのだろうかー。苦悩と葛藤を抱えながら、懸命に生きる男の物語。
アメリカ人の父が3歳の時に去り、母子家庭で育ったエリが見つけた天職は料理人。しかし、なぜか卵の殻が割れなくなってしまう。そんな折、結婚を望まない相手との妊娠が発覚し、実母と同じシングルマザーになることを決意。幾多の困難を前に、エリは一人でどうやって生きていくのかー。原因不明の病気をめぐる様々な人間模様と愛の物語。
変化が与えたものは、希望。そして、ひとりで生きる原動力だった。地方企業に勤める凡庸な会社員が紡ぐ、起業に至るまでの生々しくも鮮明な足跡。組織・企業・生物化学・インターネット・経済的要素が不揃いに混じり合う、ニュータイプの社会派小説。
花街で育った賢治は、歳の割にませた少年だった。昭和11年、明治大学の予科に進学した賢治は、広告研究会に所属し、華やかな時代の流れに乗り、広告の研究に情熱を燃やす。卒業後、サークルの機関誌をきっかけに就職した会社は外国向け宣伝誌の制作会社だったが、ある日上海への転勤を命じられる。当時の上海は、“洗練と猥雑”が同居した、まさに“混沌”とした街だった。第二次世界大戦の戦火が激しくなる中、ダンスホールや、バーで出会う人々との交流を通して、「魔都」と称される上海の裏側に、賢治は意図せずして足を踏み入れていくー。激動の時代を生きた若者たちの“熱”を感じる歴史群像劇。
ごくありふれた日常を送っていた林さんと妻・文音のもとに、離婚した娘の頼子と、仮釈放で出所した息子の正勝が帰ってきた。久しぶりに一家が揃うも、それぞれが問題を抱え、素直に気持ちを打ち明けられなくなっていた四人。ある日、林さんの前に現れた不思議な男との出会いから、文音の秘密が明らかになりー。“平凡”な家族が辿る数奇な運命の物語。
限られた人生の余白を、どう生きていくべきか。戦争・差別・テロ等準備罪…。現代を生きる人々に、戦争を知る最後の世代の著者が届ける自伝的物語。
アルミ鋳物を事業にし海外進出にも力を入れる中、順調に成長を続けていた松葉哲造率いる松葉工業。しかし、突如始まった鹿児島第一銀行の貸し剥がしに合い、倒産の危機を迎えてしまう。「法人を真綿で絞殺」するような金融機関に敢然と立ち向かう、一経営者の物語。
20代なかばのムシナは“芸人としては”美人でスタイルも悪くない。そのことと、実家暮らしなことがコンプレックスでもある。恋愛は邪魔だとわかっていても、男性に求められると応えてしまう。結婚も出産もしたいけど、売れるまではできないと思っている。先輩たちは解散して結婚したり、B級タレントに転身したり。かと思うと、見た目にインパクトのある後輩に、サクッと抜かれてしまう。賞レースやテレビに出たりするようになって、底辺からは脱出したような気がするけれど、引退して赤ちゃんを抱く先輩のことは、素直に祝福できない…。「どっちつかず」な女芸人の、もどかしくも愛おしい日々。
どこかの誰かが、幸せでありますように。失恋したばかりの社会人と、元いじめられっこのスパイ。知らないうちに誰かを助けていたり、誰かに助けられたり…。ふたりの仕事が交錯する現代版おとぎ話。
抗えぬ運命に絶望する彼に訪れた、唯一愛した女性との再会。次第に惹かれあう2人の時間が、30年の時を経て動きだす。彼女と音楽への閉じ込めてきた愛を取り戻す、純粋な恋物語。
北朝鮮の陸海空軍による大規模軍事演習。国の威信をかけたこの行事で、桂東月大佐は潜水艦による日本への亡命を決行した。しかも、拉致被害者の女性を連れてー。だが、そんな彼らを朝鮮人民軍が逃すはずがない。特殊部隊、爆撃機、魚雷艇、対潜ヘリ、コルベット艦、そして…。息つく間もなく送り込まれる殱滅隊の攻撃をくぐり抜け、東月達は日本に辿り着けるか?極限状況ゆえに生まれる感涙の人間ドラマ。超弩級エンターテインメント!
自由奔放・ハチャメチャに生き抜いてきた男が、色と欲に別れを告げて大変身!?環境破壊で破滅の淵に立たされた全人類を救わんと、身の程もわきまえず神のお告げを世人に伝えることにー。“人が生きるとはどういうことか”を問いかけながら、抱腹絶倒な人間模様を描いた大人のための寓意小説。
憧れの留学を決意し、アメリカへ飛び立つかおり。しかし、そこには予期せぬ困難が。かおりを救うのは、声しか知らないリュウ、そして鐘の音。大切なのは、自分の気持ちか、恋人か、周りの人間か。「間違っていなかったよ」と、どこからか聞こえてくるような選択をしたい。遠い異国の地での葛藤の中、かおりの決断はー。少し切ない恋愛小説。