出版社 : 朝日新聞出版
幕末。会津白虎隊でただひとり生き残った少年・三村虎太郎は維新後、新政府のもとで生きることを拒み、新天地アメリカへの移民へ参加した。異国での過酷な暮らしが続く中、ある日、虎太郎は行き倒れているシャイアン族の少女を助ける。一族を虐殺されひとり生き残った少女はカスター将軍の“ある秘密”を握っているため追われているという。似た運命を背負ったふたりは、時に反発し、時に支えあいながら、暴虐非道の第7騎兵隊へと立ち向かうこととなるがー。歴史の敗者に光を当て続けてきた著者が、米史の闇・インディアン戦争に挑む!
両親の離婚によって母親の実家近くに暮らしはじめた望子。そのマンションの部屋からは郊外を流れる大きな川が見える。父親との面会、新しくできた友達。望子の目に映る景色と彼女の成長を活写した「川のある街」。河口近くの市街地を根城とするカラスたち、結婚相手の家族に会うため北陸の地方都市にやってきた麻美、出産を控える三人の妊婦…。閑散とした街に住まうひとびとの地縁と鳥たちの生態を同じ地平で描く「川のある街 2」。四十年以上も前に運河の張りめぐらされたヨーロッパの街に移住した芙美子。認知症が進行するなか鮮やかに思い出されるのは、今は亡き愛する希子との生活だ。水の都を舞台に、薄れ、霞み、消えゆく記憶のありようをとらえた「川のある街 3」。“場所”と“時間”と“生”を描いた三編を収録。
ピン留めできない今に抗いもがいた先に直面する生への恐怖、価値観を「アップデート」できない女子高生が「暴力的」な恋に落ちた数時間、学生時代の親友とのどうしようもなくしょうもない交流。全三篇。長井短にしか描けない言葉が躍る、恋と友情、怒りと怠惰の小説集。
感情がほとばしって言い過ぎた言葉、平気をよそおって言えなかった言葉。「もう黙って」「もっと喋って」と思わずにはいられない、もどかしくて愛おしい掌編18本。記憶の片隅にあった感情がじわっとあふれ出す短編恋愛小説集。
「絶対にお父さんと同じお墓には入りたくない!」四十九日の法要を目前に控え、突然明らかになった姑の遺言。いきなりの真実に黙り込む義父と、亡き母の希望を叶えるために奔走する義姉。騒動の行方をワクワクしながら見ていた五月だが、自分の娘たちも厄介な問題を抱え込んでいて…。面倒なことこの上ない現代墓問題。あなたならどうする?
“ツボ師”の異名を持つ鍼灸師・染谷の凄腕が、ますます冴えわたる!父・染谷に弟子入りした娘いまりを嗅ぎまわる渡世人たちの正体は?戯作者を目指す長男・勘四郎の元へは破格の縁談が持ち込まれるが…!?
時は昭和41年。テレビに怪獣が登場したことで、漫画雑誌、映画、玩具が一体となり、大怪獣ブームが巻き起こっていった。怪獣映画に新規参入する映画会社の脚本家、山本淳はシナリオハンティングで龍神伝説のある湖を訪れる。そこで遭遇した恐ろしい出来事とは!一方、淳の従弟で戦闘機パイロットの山本猛はアメリカで極秘の訓練を受け、ロボットパイロットとなる。その猛を待ち受けるものとはいったい!?元祖怪獣玩具会社六代目書き下ろし、怪獣昭和時代小説。
周到な準備と計画で強盗殺人を遂行していく男ー。府警捜査一課の舘野と箕面北署のベテラン刑事・玉川が箕面で起きた広告代理店元社長の殺害事件を追うなか、手口の異なる新たな強盗殺人が発生する。被害者同士には面識があり、それぞれに士業詐欺とマルチ商法によって莫大な金を稼いだ二人は、情報屋の標的となっていた。さらには戦時中に麻薬密売組織に関わり、政治家とも昵懇だった新興宗教の宗務総長が殺害される。警察捜査を巧みに撹乱する男の目的とはー。舘野と玉川は、凶悪な知能犯による完全犯罪を突き崩すことができるのか?犯罪の最前線で追う者と追われる者を活写する新次元のクライム・サスペンス。
ソ連時代のバルト三国・エストニアに生まれたラウリ・クースク。黎明期のコンピュータ・プログラミングで稀有な才能をみせたラウリは、魂の親友と呼べるロシア人のイヴァンと出会う。だがソ連は崩壊しエストニアは独立、ラウリたちは時代の波に翻弄されていく。彼はいまどこで、どう生きているのか?-ラウリの足取りを追う“わたし”の視点で綴られる、人生のかけがえのなさを描き出す物語。
京、青澄、土、しき。高校で4人は出会い、恋に落ちた。身体が発熱し、恋愛のぜんぶを出し尽くしてしまった。あの事件が起こるまではー。あれから15年。歪な力関係の社内恋愛をつづける「京」、娘を家庭に縛り付ける毒親から離れられない「青澄」、貧しい大家族のなかで育った「土」、両親の死から心身に不調をきたし社会との接点を失った「しき」-「あけましておめでとう!久しぶり。みんなどうしてる?」大晦日に送られた京からのメッセージが、どん底のいまを動かしはじめる。
サプライズパーティを予定する女性、長期休暇中の中年男性、治らぬ歯痛を抱える女性会社員…。眼の前の世界が不意にぐらりと揺らぐ瞬間を、さわやかに、艶めかしく、ユーモラスに描き出す。『カラフル』『みかづき』の著者が贈る、掌編を含む7編の愛すべき作品集!