出版社 : 河出書房新社
19世紀末アメリカ。死を求める魔女は、処刑用電気椅子を用いたショーに臨む。(「ニューヨークの魔女」)。子育て体験キットを育てることになった同性カップルの(非)日常。(「私のつまと、私のはは」)。その夏の日、女性は電信柱と激しい恋に落ちた。(「電信柱より」)。大戦のさなかに出会ったふたりの少女をつないだものは嘘だったー。(「嘘つき姫」)。新鋭・坂崎かおるが紡ぐ、珠玉の9篇。
パルチザンとして闘争を繰り広げ、投獄され、それでも社会主義者として生きた父。そんな父の葬儀のために故郷に帰ったアリの前に現れたのは、思いもよらない弔問客たちだった。かつて武装し闘った敵、生涯確執のあった叔父、元パルチザンの盟友たち、謎の見知らぬ少女…。知らなかった父を知るたびに、歴史の痛みで絡まった糸がほどけてゆく。悲しみと笑いが乱反射する、父と娘の葬儀の三日間。発禁作家による長編話題作。
絵衣子は成功を夢見る漫画家のタマゴ。しかしストーリー創りに煮詰まり、崖っぷち状態が続いている。そんなとき、自分と瓜ふたつの謎の女が残したフロッピーディスクにあったアイデアを借用して連載漫画を大ヒットさせる。人気絶頂の中で運命の嵐に飲み込まれていく絵衣子。女の正体、そして父の失踪の真相とは?過去と未来、もうひとつの人生の可能性…。点と点が繋がったとき、絵衣子のストーリーが再び動き出す!
池袋で連続殺人事件が発生。厳しく箝口令が敷かれていたが、殺害された被害者の額には刃物で「×」印が刻まれていた。反社ばかりを狙った犯行から、マスコミは犯人を、街をきれいにする清掃車にかけて“聖掃者”と名付けた。池袋署には特別捜査本部が設置され、刑事課強行犯係の警部補・薬師丸遼一をはじめとした捜査員は、日夜、犯人探しに奔走していた。そんな中、遼一のもとへ、娘の佳奈から電話が入る。この秋からバレエ留学を控えている、自慢の娘だ。電話越しに、彼女は信じられない言葉を発した。「…私、人を殺しちゃったかもしれない」-娘のもとへ急行する遼一。そこで目にしたのは、目から光を失った、金髪の男の姿だった。娘の人生をここで終わらせていいのかー「おまえを助ける」遼一は娘に告げると、金髪の男の額に、「×」を刻印した。いま、後戻りのできないミッションがスタートした。
1990年、内戦下のスリランカ・コロンボ。戦場カメラマンにしてギャンブラー、皮肉屋で放埓なゲイであるマーリ・アルメイダは、気がつくと冥界のカウンターにいた。自分が死んだ記憶はないが、ここに来る前、内戦を終わらせるための写真を撮ったことは覚えている。写真を公表するため、彼にあたえられた猶予は7回月が昇るまで。生者と死者の入り乱れた狂乱の世界をさまよう、マーリ・アルメイダの地獄めぐりがはじまる。ブッカー賞受賞作。
親友のジャキと恋人のDDに望みをかけ、写真を見つけるために奮闘するマーリ。そこに立ちはだかるのは、復讐を誓う殺された青年革命家、生者と死者を媒介する隠者、爆破テロの犠牲になった博士、冥界最凶の邪神…。陰謀が錯綜し、三つ巴の内戦は激化していく。報復に満ちたこの世界で、それぞれの悲劇が行きつく先は。血と煙と愛でつむがれる、魔術的タイムリミット・ミステリ。
球地ー人々はそこに散在する八つの聚落で生活していた。その球面世界を、五つの太陽が絶え間なく巡っていた。リナニツェたちの聚落の太陽が死に、太陽は四つになった。リナニツェは生きのび、奏で手の過去を封印した。そしてリナニツェはジラァンゼを生み、ジラァンゼはヌフレツンを生んだ。親子三代にまたがる壮大な物語が、いま幕を開ける。聞こえるだろうか、地に満ちる生命の賛歌がー
息子は父に、父は母に、母は息子に殺意を抱く。「すばらしい中国のはなしを語る」という政治キャンペーンを逆手にとり、改革開放から取り残された家族の「声」を再構成した奇妙な物語。現代中国の闇を撃ち、発禁がつづく巨匠による最新作。
南アフリカで異例の雪が降り積もる中、医師ローレンツは小さな雪だるまの存在に気づく。誰が作ったのだろうか。不思議に思ったそのとき、「スノーマン」の影を見る。脳裏に蘇る「スノーマン」との記憶。彼は一体何者なのか。少年時代の追憶、失ったものと伝えたかった思い。雪降る世界に潜む「スノーマン」-彼を捜すため、ローレンツは旅立つ。『“心の黒”を吸い出すために、僕は真っ白にできてるんだー』名作『桜ノ雨』『Fire◎Flower』の超人気ボカロP halyosy原作最新作!!あなたの願いで命が宿るー一年に一度きりの冬の魔法。待ち焦がれた10年…伝説の神曲、待望のノベライズ!!!!
中三の夏休み、蒼子の母が元同僚で余命わずかのバナミさんをさらってきた。なんでうち。なんで今。腹を立てる蒼子だったが、ひょんなことから一緒に受験勉強に励むようになりー受賞作「私が鳥のときは」。英語の授業は気づまりだし、部活は基礎練ばかり。「社会」というもののハードさに気づきはじめた、中一のバナミと友人たち。夏休み、お屋敷に暮らす老婦人・英子さんと出会ってー書き下ろし「アイムアハッピー・フォーエバー」。軽やかに瑞々しく、世界をあざやかに変える傑作青春小説、誕生!第4回氷室冴子青春文学賞大賞作。少女と元少女たちに訪れた、奇跡のような夏の物語。
北九州の片田舎。幼少期に右手の小指と薬指の半分を失った中学生の界は、学校へ行かず、地元の不良グループとファミレスでたむろする日々。その中で出会った「バリイケとる」男・橘さんに強烈に心酔していく。ある日、東京のラッパーとトラブルを起こしたという橘さんのため、ひとり東京へ向かうことを決意するがー。どこまでも無謀でいつまでも終われない、行き場のない熱を抱えた少年の切実なる暴走劇!第60回文藝賞受賞作。
数日前のことも覚えておらず、生まれてから部屋を出たことのない怜王鳴門は、ある日「パパ上」のノートパソコンに届いた自分の過去についての物語を読みはじめ、喪失していた自分と世界の歴史を知ることになる。驚異の記憶力でクイズに耽溺した過去の自分や、クイズチームで共に無双したはずの「サッちゃん」と「パパ」、そして言語を獲得した血統犬の「ベリアル」は、一体どこへー?複数の世界線が現実と物語の境界を破壊する、究極の多層世界小説。第60回文藝賞優秀作。
日当7500円のバイトに遅刻しないため2000円払ってタクシーに乗り、スマホで消費者金融のアプリとマッチングアプリを交互に見る生活を送る、買い物依存で性依存の美帆。両親は貧乏で不仲。バイト先で再会した元同級生の宇津木は、筋金入りのストーカー。アプリで知り合ったアメと刹那的なセックスをし、ほとんど知らないベトナム料理屋の店員ナムちゃんが「唯一の友達」。その人生の歯車は、あるひとつの死をきっかけに急激に加速してー。地獄へと爆進する美帆と、全員が常識外れの登場人物たちを、軽やかな文体で活写する衝撃の問題作。第60回文藝賞優秀作。
「シャーロック・ホームズ物語」初版原本のイラストをすべて復刻掲載!「ホームズ物語」最後の長篇作!背後にひそむホームズ最大の敵、モリアーティ教授の影。ホームズが導きだした意外な答えとは?