著者 : 似鳥航一
海堂財閥の創業者・右近が残した異様な遺言。それは同家に縁がありながらも、理不尽な扱いを受けていた美雪にすべての財産を渡すというものだった。条件は海堂家の三兄弟のだれかと一ヶ月以内に結婚することー。それが惨劇のはじまりだった。ある夜、結婚相手にと名乗り出た次男の月弥が同家の別えびす伝説に見立てられて変死を遂げ、美雪は否応なく遺産相続に巻きこまれていく。そして招かれた、異端の民俗学者にして探偵の桜小路光彦が連続殺人の謎に挑む。
江戸情緒漂う人情の町ー東京、浅草。その賑やかな昔馴染みのご近所さんたちの熱い声援を受けつつ、栗田はある決意を胸に、和菓子職人の大会の優勝を目指して葵とともに試合に挑む。準決勝に勝ち残った四チームはいずれも強豪ばかりで、そのなかには因縁の相手、上宮もいる。去来するそれぞれの思惑を胸に、闘いの幕は切って落とされた。二人の未来を信じて、栗田と葵は渾身の和菓子を作り上げるがー。おいしい和菓子でつながれたシリーズ、ついに完結!
梅雨空の東京・日比谷のホテルの宴会場。菓子職人の大会準決勝を前に、出場者が一堂に会し記者会見が催されていた。全国から集まった一癖も二癖もありそうな強豪たちの中で、栗田と葵は決意を新たにする。一方、栗丸堂には栗田の祖父が作った和菓子を求め、ある人物が訪ねてきた。かつて、一口食べて心を動かされたという祖父のものと同じ味の和菓子を食べたいと言う。栗田は五十年前の味を再現しようと祖父の友人を訪ねるのだがー。
葉桜が雨に映える東京、浅草。栗田は葵の父に認めてもらうべく和菓子職人の大会優勝に向け、今日も葵とふたり、自分たちの味を模索していた。しかし栗丸堂にかかってきた一本の不思議な電話から人探しが始まる。心当たりを探して街を歩くうち、栗田は気にかけていた人物とばったり出会うことになるー。やさしい甘さの和菓子の中に、それぞれの人が見つけた大切なものとは?吾妻橋のたもとの傘の中、栗田と葵のふたりの距離も縮まって…。
もうじき桜が咲きそうな三月の浅草。葵の父・義和に二人の交際を認めさせるため、決意を新たにする栗田。そんな折、二人は想像もしない事件に巻き込まれてしまうー。向かった先は、古都・京都。なんでも、鳳凰堂の支店でとある謎めいた事件が起こったのだという。居ても立っても居られず、新幹線に飛び乗る葵たちだったが…。花冷えのする京都で繰り広げられる、人と和菓子をめぐる大騒動。それは、やがて散る桜のように、鮮やかさと儚さをあわせ持っていてー。
白い沫雪がちらつき、町を彩る赤に薄化粧を施す元旦の浅草。美しい着物姿の葵を前に、栗田の心臓は早鐘を打っていた。それもそのはず、この日は赤坂鳳凰堂社長とその妻ー葵の両親と初めて顔を合わせる初詣の約束があったのだ。葵に対する純粋な想いとは裏腹に、父からの一言に引け目を感じてしまう栗田。やがて葵との間に大きな溝が生まれてしまい…。にぎやかな新春の浅草に浮かび上がる光と影。さて、今回の騒動はいかに?
冬の足音が近づく晩秋の浅草。晴れて営業再開となった栗丸堂には、ふわりと微笑む和菓子のお嬢様と、苦い顔をした若主人の姿があった。それもそのはず、伝統ある茶道家・白鷺流宗家から関西支部の客人を饗す茶菓子の用意を頼まれたのだ。浅草に軒を構えたばかりのライバル店「夢祭菓子舗」の主も同じ依頼を受けているという。和菓子をめぐる騒動は、秋の空のようにころころとその表情を変えー。にぎやかであたたかい、おいしい人情物語をどうぞ。
東京、浅草。下町の一角に明治時代から四代続く老舗『甘味処栗丸堂』はある。端整な顔立ちをした若店主の栗田は、無愛想だが腕は確か。普段は客が持ち込む騒動でにぎやかなこの店も、訳あって今は一時休業中らしい。そんな秋口、なにやら気をもむ栗田。いつもは天然なお嬢様の葵もどこか心配げ。聞けば、近所にできた和菓子屋がたいそう評判なのだという。あらたな季節を迎える栗丸堂。葉色とともに、和菓子がつなぐ縁も深みを増していくようで。さて今回の騒動は?
借金のカタに山奥の寂れた神社で働くことになった女子大生の奏。神主の息子・遊麻から神社の存続をかけ稲荷茶屋の手伝いを頼まれるが、なんと遊麻から狐耳と尻尾がピコン!そこはあやかしに先祖返りした者の秘境だったのだ。何故か筋トレ大好きな妖狐の遊麻を筆頭に、隙あらば奏を口説いてくる化け狸など、色々ややこしいあやかしだらけ。そんな中、稲荷寿司作りに励む奏を悩ますことが実はもう一つだけあってー!?読んだらお稲荷さんが食べたくなる!?あやかし茶屋を巡る、ほのぼの神社繁盛記!
十二歳の夏を過ごしていた少年・嵯峨愁。彼はあるとき“心”だけが三十年後に飛ばされ、将来生まれるという自分の息子・ナツキの少年時代の心と入れ替わってしまう。途方に暮れる愁に、そっと寄り添う不思議な少女・雪見麻百合。彼女にはある秘密があってー。長い長い時を超えて紡がれる大きな愛の回想録。-物語は同時刊行の『あの日の君に恋をした、そして』に続く。
十二歳の夏を過ごしていた少年・嵯峨ナツキ。彼はある事故をきっかけに“心”だけが三十年前に飛ばされ、今は亡き父親・愁の少年時代の心と入れ替わってしまう。途方に暮れるナツキに、そっと近づく謎のクラスメイト・緑原瑠依。彼女にはある秘密があってー。「実は…ナツキくんに言わなきゃいけないことがあるの」長い長い時を超えて紡がれる小さな恋の回想録。-物語は同時刊行の『そして、その日まで君を愛する』に続く。
高校二年の僕が一目惚れした女の子。僕とは正反対の、物静かで不思議な魅力をもつ彼女への告白は、あっさり断られた。はずだった。卒業から一年とすこし後。目の前に突然現れた彼女は、それがまるで運命であるかのようにこう告げるー。「100日間だけ、いっしょに住みませんか?」二人きりで始まった共同生活。時を重ねるほどに近づく距離。しかし彼女は大きな秘密を抱えていてー。“100日間”に隠された意味を知ったとき、切ない恋が動き始める。
大都会東京の片隅に、ふと気まぐれに姿をあらわす移動式のスペイン風カフェ兼居酒屋“ウツツノバル”。とある理由で大手メーカーを脱サラした店主は、手間暇かけた料理と美味しいお酒の数々で、眠らない街の胃袋を満たしている。そして、思いがけず客が持ち寄る不思議な相談に、店主と風変わりな相棒は、ちょっとしたおせっかいと、気の利いた“逸品”で応えようとするのだがー。ささやかな出会いの物語。
大手メーカーの正社員の座を捨て、独立を決意した貝原。始めたのはカフェ兼酒場、スペイン風のバル。それも移動屋台という意外なものだった。大都会東京は24時間眠らない。そこで暮らす人々は多種多様、思いがけぬ出来事に遭遇することもある。でも、出会いは一期一会。貝原は青年ならではの純朴さで客に振る舞うのだ。料理と酒とちょっとだけおせっかいを添えて。なんとかなるし、明日は変わらずやってくる。そんな気持ちにさせてくれる、大都会のささやかな出会いの物語。
浅草に夏がやってきた。和菓子は涼を求められる季節である。清流の美「若鮎」を作ることになった栗田。これが富樫との思いがけぬ邂逅をもたらす。彼の真意とは一体?一方、若者の季節の到来に、それぞれの想いが交錯する。栗田は彼女らの想いを受けとめ、応えていく。葵に影のようにまとわりつく過去の亡霊、富樫と決着をつけるべく。かけがえのない時をともに歩んできた由加が、新たな一歩を笑顔で踏み出めるように。物語はいよいよ佳境へ。
三社祭の夜。葵の笑顔に秘められた過去を、栗田は垣間見る。それは多くの人生を狂わせた、重苦しいものだった。栗田は思い悩む。葵との出会いはひょんなことから。それは和菓子がとりもつ乙の縁。だが、いまやかけがえのないものになっている。願わくはともに歩んでいきたい。ならば、過去から彼女を救わなければいけない。決意を固める栗田だが、周りは放っておいてくれないようで。和菓子にまつわる奇妙な依頼は変わらず舞い込んでくる。はてさて今日の騒動は?
春めく浅草は、今日も多くの人でにぎわう。そんな陽気につられてか、甘味処栗丸堂はどこか落ち着かない。それもそのはず、若主人の栗田に悩みの種が増えたのだ。悪友の浅羽が調べた葵の正体は、栗田の心を揺るがすことに。自分は葵をどう思っているのか、どうするべきか。決断を迫られていた。そんな栗田の気持ちも知らず、店には面倒事が舞い込んでくる。笑いあり涙あり。和菓子が育む縁は末広がりのようで。やさしい味わいがもたらすそのてんまつはいかに?
浅草の仲見世通りから少し外れると、懐かしい雰囲気の和菓子屋が見えてくる。店主の栗田は気風のよい青年で、まだ若いが腕も確かだ。最近、栗田がそわつくことがあるらしい。どうも、可憐な女性がよく店に訪れるからだとか。葵はたいそう和菓子に詳しく、栗田すらその知識に驚くことがあるという。下町の日常にも悲喜こもごもはある。この店はそういうことに縁があるようで。二人はなんだかんだで関わることになってしまう。和菓子がもたらす、今日の騒動は?
大学生の春川梓はとある心理カウンセラーの助手を務めることに。工藤才希ー並はずれた手腕の、美貌の青年である。だが才希の評判は決してよいとは言えない。気まぐれで人の願いを叶える癖があり、そのやり方も相当ひねくれているとか。どうももぐりらしく、何でも屋の側面もある。悪徳商法など、悪党に対しては容赦ない手法で叩く彼に、呆れながらも頼りにする梓。この奇妙なコンビが遭遇する不可思議な事件の数々-金持ちになる悪の技術とは?