著者 : 大久保洋子
一九六六年のある寒い夜、ボルヘスは汽船の甲板に立ち、海に向けて一枚の硬貨を抛った。-『夜の潜水艦』僕は、この鍵はUSBメモリで、家はまだ完全な状態でこのメモリの中に保存されているだけなのだと想像した。-『竹峰寺鍵と碑の物語』奇妙なペンは、液状のオーロラで満たした試験管のようでもあった。-『彩筆伝承』僕の日常業務は雲の剪定やメンテナンス、広告の印刷、剪定所の運営維持だ。-『裁雲記』しなやかな始まり、雄大な続き、玄妙な転換、そして虚無の終わり。-『杜氏』変な感じがする、と彼女は言った。ちょっと感動するし、とても「ちゅんとする」ような気もする。-『李茵の湖』隕鉄は夜空の星屑だから、夜空そのものを煮つめた液体で焼き入れをしなければならない。-『尺波』彼の内心の聴覚はとても強く、楽譜を読みさえすれば音符の奥底に潜むイメージを見ることができた。-『音楽家』
ネット・スマホ依存症対策条例が施行された近未来の香川県。全未成年者たちは例外なく、液晶画面を通じたネットへの視覚的なアクセスを遮断する特殊眼鏡「ガーンズバックV」を着用することを義務付けられていた。そんな香川から、女子高生の美優が大阪へやってきた目的とはー?大阪観光サイバーパンクの表題作をはじめ、創作と道徳をめぐる脳科学SF「サンクチュアリ」、ボルヘスとカルヴィーノの影響を受けて書かれた吟遊詩人ファンタジー「物語の歌い手」、スマホゲーム開発をめぐる知的遊戯「開かれた世界から有限宇宙へ」、さらに百合SFアンソロジーや『異常論文』といった日本の書籍のために書き下ろされた傑作など、全8篇を収録。『元年春之祭』『文学少女対数学少女』華文ミステリ作家・陸秋槎、初のSF作品集!
22世紀、地球とその開発基地があった火星のあいだで独立戦争が起き、そして火星の独立で終結した。火星暦35年、友好のために、火星の少年少女たちが使節「水星団」として地球に送られる。彼らは地球での5年にわたる華やかで享楽的な日々を経て、厳粛でひそやかな火星へと帰還するが、どちらの星にも馴染めず、アイデンティティを見いだせずにいた。なかでも火星の総督ハンスを祖父に持つ“火星のプリンセス”ロレインは、その出自ゆえに苦悩していた…。ケン・リュウ激賞、短篇「折りたたみ北京」で2016年ヒューゴー賞を受賞した著者が贈る、繊細な感情が美しい筆致で描かれる火星SF長篇。
悠久の歴史×無窮の想像。孔子は六十にして時空を越え、諸葛亮はコーヒーを嗜み、魯迅は故郷でH・G・ウェルズのタイムマシンに出くわすー中国の作家7人が想像力の限りを尽くした超豪華短篇集。