ジャンル : 外国の小説
「ただ、自由な国に暮らすのがどういうことなのか、感じてみたいんです。そうしたら、僕の人生の邪悪なものが正されていくかも知れない」 アパルトヘイト時代、南アフリカ。政治犯として刑務所で二年間を過ごしたジャーナリストの青年マカヤは、国境近くに隠れて夜を待っていた。闇に紛れて国境フェンスを乗り越え、新たな人生へ踏み出すために。たどり着いたのは独立前夜の隣国ボツワナの村ホレマ・ミディ。農業開発に奮闘する英国人の青年ギルバートと出会い、初めて農業・牧畜に携わることになったマカヤ。しかし、非人間的なアパルトヘイト社会の南アフリカとはまるで違う、自由の国であるはずのボツワナにも抑圧者は存在した。マカヤはこの国の抱える人種主義や抑圧の問題、人間の善悪、そして干ばつの苦しみを目の当たりにする。深い心の闇を抱えたマカヤは、やがて村人との出会いで傷ついた自らの心を癒していくが……。 「人間がもっとも必要としているのは、他の生命との関わりあいだ。もしかすると、ユートピアもただの木々なのかもしれない。もしかすると」 南アフリカ出身の重要作家ベッシー・ヘッドが、亡命先ボツワナで発表した1968年の長編第一作、待望の邦訳。アパルトヘイトの抑圧から逃れ、自由を求めて国境を越えた青年マカヤは、ボツワナ農村の開発に関わりながら、差別や抑圧、人間の善悪を目の当たりにする。貧困、開発、宗教、民主主義、ジェンダー、部族主義と向き合い、鋭い筆致で人間の本質を描いたアフリカ文学の傑作。
宮殿の使用人にすぎない私が、 おそれ多くも、王妃になるですってーー? セドヴィア国王夫妻が急死し、戴冠式を間近に控え、 皇太子アレッシオは頭を抱えた。婚約者が駆け落ちしてしまったのだ。 だがやがて、先日、車の接触事故に遭った赤毛の女性を助けたことを 思い出したーー見事なプロポーションの王宮の使用人、ロージー。 皇太子は彼女を呼び出し、婚約者が駆け落ちしたと説明した。 「ロージー、きみの家族は多額の負債をかかえているね」 なぜ知っているの? ロージーは重い口調で答えた。「そうです」 「ぼくは婚約者の代理の花嫁を見つけ、結婚式を決行する必要がある」 「式まで9日しかないのに、どこにそんな花嫁が?」ロージーは困惑した。 「今、ぼくの目の前にいる。きみにぜひ引き受けてもらいたい」 リン・グレアムファンの皆様、お待たせしました! 正真正銘の王子様にプロポーズされた、貧しき苦労人ヒロイン。次期国王となる彼は面目を保つため、結婚して愛し合っているふりをしてほしいと言いますが……。身分違いのシンデレラ物語をお楽しみください。
真夏の夜の暗い森の中で、 彼女は美神の虜になった。 モードは放蕩者で知られる大富豪ドミニクの邸宅を囲む森の、 コテージに住み込みで働いている。今日は年に一度開かれる、 上流階級の男女が集う秘密の酒宴の日。モードたちスタッフは、 けっして森に足を踏み入れないよう厳命されていた。 だが真夜中、嬌声に起こされてつい迷い込んだ森で、 モードは神々しい半裸のドミニクにでくわし、釘づけになった。 そして名も告げぬまま身を任せ、純潔を捧げてしまったのだ。 数カ月後、森の滝つぼで水浴びをしているモードの前に彼が現れ、 厳しく問うた。「きみは妊娠しているね。あの夜の女性なのか?」 モードは俯いた。ええ、でも安心して。私がひとりで育てるから。 個性的なヒロインを描いて人気のジャッキー・アシェンデン。今作ではスコットランドの森で育ち、自然と自由を何より愛するヒロインが、大富豪の跡継ぎを身籠ったことから契約結婚を受け入れざるを得ない展開に。ヒーローの思いがけない優しい一面にも注目!
大富豪は見逃さなかった── 泥まみれの少年の美しい素顔を。 多額の借金を残して父が亡くなり、母は早々に愛人と出奔し、 カミラはひとり呆然としていた。家も牧場も馬たちもすべて、 スペイン富豪マティアスに奪われてしまった。私はこれから、 どう生きていけばいいの? せめて愛馬の傍にいられたら……。 カミラは髪をばっさり切ると、ぶかぶかの服で少年に成りすまし、 厩務員としてマティアスに雇われることに成功した。 泥まみれで朝から晩まで必死に働いて2カ月、うっかりして 彼女はマティアスに正体を見破られてしまう。万事休す、だ。 だがなぜかくびにはならず、便宜結婚を申し込まれることに。 彼の瞳の熱い炎に気づかず、無垢なカミラは承諾するが……。 兄に婚約者を奪われ、その身代わりとして報酬と引き換えにヒロインと愛なき結婚をしたヒーロー。寝室は別という契約でしたが、少年から美しい花嫁へと変身した彼女の魅力に抗えず……。メイシー・イェーツらしい、ヒロインの愛らしさが光るロマンスです!
こんなに完璧な夫のことを思い出せないなんて、 どんなつらい出来事が起きたのかしら……。 目を覚ましたジュリアは、傍らに立つハンサムな男性を見た。 誰かしら? 見覚えのないその男性はロスと名乗った。 しかもーー彼女の夫だと言うではないか! そこは病院だった。ジュリアは事故に遭い昏睡していたのだ。 富豪の彼と出会って恋に落ち、結婚した3カ月間の記憶だけが すっぽり抜け落ちているなんて。どうして……? 結婚するほど深く愛していたはずの人を、なぜ思い出せないの? 肝心なことを何も語らないロスに、ジュリアは苦悩を深めていく。 ある日、偶然話に出たルーという女性の名に夫が動揺してーー。 ケイ・ソープが大人気の記憶喪失がテーマの物語を、ハーレクインの黎明期1973年に書いていました! ヒーローとヒロイン以外の2人の男女が絡んで、もつれる恋愛模様をご堪能ください。
あの夜に授かった天からの贈りもの。 二人で分かち合うべきだけれど……。 1年前からフロリダのキーウエストで働くステイシーは、 事故で重傷を負った同僚を病院に運びこんだ。 怪我の状況をきこうと担当医の顔を見て、彼女は息をのんだーー 5年前、ビーチでめくるめく情熱の一夜を分かち合ったルイス! あの翌日、彼は医療活動で海外へ旅立ち、それっきりになっていた。 今、目が合ったはずなのに、驚いた表情を浮かべたルイスは 非常口のドアを押し開け、どこかへ行ってしまった……。 しっかりしなさい。落ち着くのよ。そう自分に言い聞かせる。 だがほどなく、ステイシーは仕事で再びルイスと顔を合わせた。 もう向き合うしかないーー私の4歳になる息子の父親である彼と! USAトゥデイのベストセラー作家トレイシー・ダグラスが贈る、予期せぬ妊娠物語! 顔やふとした仕草など、ルイスと息子がよく似ていることに気づき、愛がこみ上げるステイシー。でも彼がいつまた突然遠い国へ行ってしまうかわからず、恋をためらい……。
愛しすぎれば傷つくと知る娘は、 愛を恐れ、愛を隠す……。 ヘロンは幼いころ、睡蓮の花を摘もうとして湖に落ちた。 そのとき助けてくれた庭師の青年のことが忘れられず、 美しく成長した今も、ほかの誰も愛することができずにいた。 とはいえ、その青年のことはおぼろげにしか憶えていないけれど。 ある晩、ヘロンはパーティで端正な紳士に突然プロポーズされる。 エドウィンと名乗った彼は外国から戻ったばかりの実業家で、 町外れの海に面した崖に立つ“ガラスの城”を買い取ったので、 そこに似合うような美しい若妻が欲しいのだという。 よく知りもしない年上男性と暮らすなんて、絶対にいや! 激しく拒むヘロンを、彼はすべてを見透かすような目で見つめ……。 不世出の作家ヴァイオレット・ウィンズピアが生んだ名作の中でも特におすすめの本作には、まるで言葉の宝石箱のように美しい表現が詰まっています。幻想的な初恋と年の差ロマンスが描かれ、ウィンズピアの耽美な世界観を存分に味わえる極上の物語です。
瞳も言葉も冷たいのに、ときに優しい。 彼の矛盾に戸惑うばかりで……。 アビゲイルはいま、早急にお金が必要だった。 看護師をしていた病院は亡き母の看病のために辞めていたし、 少しずつ切り崩していた貯金も、葬儀代で底をついてしまったのだ。 そしてオランダでの仕事で出逢ったのが、ファン・ワイケレン教授。 外科医の彼は容姿端麗で、聞き惚れるほどすてきな声の持ち主だけれど、 視線にも口調にも温かみはなく、なんだか嫌われているような気がする。 でもどんなにうとまれても、彼を見ると胸がどきどきしてしまう! 教授は昔、誰かに傷つけられて、冷たく気難しい人になったという。 彼がまた人を愛せるよう、私が役に立てたらいいのに。 だから今日も、涙を隠してほほえむアビゲイルだったが……。 唯一無二の作風で世界中のファンから愛される名作家ベティ・ニールズが1972年に発表した本作。けなげなヒロインのせつない片想いの行方やいかに?
何の変哲もないウェイトレスの私を、 なぜ大富豪が花嫁にしたがるのーー? 姉が遺した幼子2人を引き取ったフレディは、大学を辞め、 高級ホテルのバーでウェイトレスとして働いている。 まだ若く貧しいので、正式な養母になれないのが悩みの種だ。 そんな折、最上階の大富豪から契約結婚を持ちかけられて驚く。 ザック・ダ・ローシャは言ったーー 莫大な遺産を継承させる後継ぎのみが必要で、愛はいっさい不要、 子供さえ産んでくれれば、幼子たちも養子に迎えよう、と。 もちろん、愛する家族を守りたい。 でも……そのために純潔を捧げてしまっていいの? ハンサムなだめ男に身を滅ぼされた亡姉のようになるのが怖くて、恋愛に臆病なヒロイン。ハンサムな大富豪と契約結婚することで、運命はどう変わるのでしょうか? 『天使に魅入られた大富豪』、『王子と間に合わせの妻』に続く、身分違いロマンスの決定版! リン・グレアムが得意とする、ピュアで芯のあるヒロインが登場する心揺さぶる珠玉作です。
名作家イヴォンヌ・ウィタル 涙のデビュー秘話ほか 巻末に特別付録! 〜自伝的エッセイ&全作品リスト〜 大スター作家L・グレアムの乙女心をくすぐる珠玉の短編のほか、L・ゴードンのシークレットベビー物語と、名作家Y・ウィタルのデビュー作を豪華収録! 特におすすめは巻末のイヴォンヌの自伝的エッセイ。読むと、デビュー作を改めて読み直したくなります。
二大巨匠による贅沢なアンソロジー! 甘くせつないシークレットベビー物語2編。 北米ロマンス界の重鎮ダイアナ・パーマーが描いた衝撃作が初再版されます! 複雑に絡み合い、もつれ合う人間模様や恋模様。英国の大スター作家シャロン・ケンドリックの大ヒット作と合わせて、読み応えあるシークレットベビー・アンソロジーをお贈りします。
白い犬の後を追いかけてきたタロコ族の少年と、自分を売ろうとする父親から逃げてきた少女。山の深い洞穴で二人は出会い、心を交わす。 少年が少女の村に、少女が少年の村へ入れ替わり出ていくのを、巨人は見つめていた。 山は巨人の体であった。人々に忘れ去られた最後の巨人ダナマイ。彼の言葉を解すのは、傷を負った動物たち。 時を経て再会する二人を軸に、様々な過去を背負う人々を抱えて物語は動き出す。 舞台は原住民と漢人、祖霊と神が宿る台湾東部の海豊村。 山を切り崩すセメント工場の計画が持ち上がり、村の未来を前にして、誇りを守ろうとする人々と、利益を享受しようとする人々が対立する。 巨人がなおも見つめ続ける中、かつてない規模の台風が村を襲い、巨人と人間の運命が再び交差するーー。 物語を動かすのはつねに、大いなるものに耳を傾ける、小さき者たち。 ★2023年台湾書店大賞小説賞受賞 ★「博客来」ブックス・オブ・ザ・イヤー入選
1944年、カリフォルニア。刑事サリバンは、大統領候補ウォルターが暗殺された事件を追いかけていた。やがて、同じホテルで10年前に少女が不審な死を遂げていたと知る。サリバンは、政治的圧力を受けながらも名家の影に隠された衝撃の真相を突き止めるが……。
リチャードソン家の邸宅が燃えた。厳しい母が管理する、完璧に見える家庭だった。母の唯一の悩みは末娘のイジーだが、今は姿を消していた。一家の貸家に住む母娘も見えない。誰が、なぜ火をつけたのか。秘密を抱える二つの家族が、焼け跡で見つけた真実とは?
◆川端裕人さん推薦!!◆ 絶滅した生きものをめぐって、もはや四散しつつある記憶を掬い上げる。 著者の丁寧な語りは、静謐にして緊密だ。 魅了された読者は、自分自身、その静かな残響の一部となっていることに気づくだろう。 ここに絶滅文学の精髄がある。 (内容紹介) 「滅びたものと相まみえてみたいと、だれもが一度は夢見たのではないだろうか」 18世紀のロシア極東カムチャツカ半島(第1部)、19世紀アラスカ南東部(第2部)、現代フィンランドの自然史博物館(第3部)……300年の時を超えて、今はなき巨大海棲哺乳類ステラーカイギュウをめぐる、史実をもとにした息を呑む冒険譚。 葛藤を抱えその再生に情熱を燃やす人々が、いま歴史を変えるーー。 フィンランドですぐれた新人作家の作品に贈られるヘルシンギン・サノマット文学賞受賞&28言語で刊行のベストセラー。 消滅した世界を悼み、文学が弔う壮大な物語。 日本語版装画:ミロコマチコ 装幀:大倉真一郎 【目次】 第1部 栄光か、破滅かーー1741〜〈ロシア極東・カムチャツカ半島〉 第2部 征服ーー1859〜〈アラスカ南東部〉 第3部 命あるものたちーー1861、1950、2023〈フィンランド・ヘルシンキ〉 【訳者あとがきより】 登場人物それぞれが、時代によって課された制約の中で、 もがき、苦しみ、苛立ち、また喜びに震える、 その心のありようがいきいきと描き出される。 そして、互いに出会うことはない人々の思いが、 ステラーカイギュウを介して時空を超えて交差するとき、 読む者の胸に深く響く物語が立ち現れる。 (略)どれほど資料を集めても埋めきれないもの、 それは実際にその時代を生きた人々の心の襞であり、 そこを想像の力で補って骨太な作品世界を構築した著者の、 作家としての手腕は確かなものだ。
2019年、英国ルーベリー国際文学賞最終候補作、並びにカナダの公立3大学図書館の「貴重文献及び特別蒐集品」部門所蔵作品。 「影」として日本に帰国しなければならなかった長田栄造。 これは歴史の荒波に翻弄されながらも家族を思慕し一途に生きた一日本人の物語であり、 第二次世界大戦中の日系カナダ人強制収容という不当な 歴史的事実を背景に、主人公の心理的葛藤を活写した小説である。 「本書は同情心を呼び起こす男の物語で、緊張感もあり、主人公の境遇は心に強く訴え、また道徳的に複雑である」 (ルーベリ国際文学賞選評(英国)同賞の2019年度最終候補作)、 「感動的で説得力のある最終章に向けて盛り上がる小説」(ソーニア・アーンツェン、トロント大学東アジア研究学部名誉教授)、 「強制収容所を生き抜いた日系カナダ人の物語を生き生きと描いた、重要で示唆に富む歴史小説」 (イアン・ベアード、ウィスコンシン大学マディソン校地理学教授)、 「戦争がもたらす心の痛み、日系カナダ人の忍耐力、勇気、不屈性を描いた小説」 (ルーシイ・バーミンガム、日本外国特派員協会元会長)、 「主人公の人生を共に生きているかのように思わせる見事な描写で、百点満点の小説」 (レイチェル・バスティン・ブロッガー)、 「著者は胸に迫る語り口で、読者を孤独と強じんさ、そして犠牲的精神の物語に没入させる」 (レベッカ・コーポランド、ワシントン大学セントルイス校日本文学教授)、 「ソルジェニーツィンの『イワン・デニーソヴィチの一日』と本書は共に強制収容を扱っているが、 この物語は血の絆と心の絆を描いた感動的な小説」(オリヴィエ・フロリオ、映画音楽作曲家)、 「ドラマチックな驚きを与え、心理的洞察、鮮やかな描写に富んだ小説」 (スティーブン・ラージ、前ケンブリッジ大学アジア中東学部日本近現代史教授)、 「心が痛み、感動させる小説」(コーディ・ ポールトン博士、京都アメリカ大学コンソーシアム所長)、 「戦時中を生きた日系カナダ人の体験、及び日本に帰国した人々が受けた扱いについての物語」 (パトリシア・ ロイ、ビクトリア大学カナダ歴史学名誉教授)。
「不思議に魅力的な本である」と故・立花隆氏に絶賛された前作『北斎と応為 上・下』(2014年、彩流社刊)に続く第2作!幕末から明治初期、日本の混乱期に多くの文化財が流出している。世界に名を馳せた葛飾北斎の作品も高値で取引されていた。北斎の娘・応為は、父に劣らず健筆を振るっていたわけだが、女性絵師は、女性であるだけで存在を消されることとなり、決して正当には認められることの無い時代であった。当時、来日したアーネスト・フェネロサやエドワード・モース、ウィリアム・ビゲローの3人が買い集めた作品群の中にも応為の作品は含まれていたのだが………。本書は、亡霊となることで明治の時代を死後に眺め続ける応為と三人のボストン人との関わりを描き、忍びながら華やいだ絵筆の後の浮世絵流出の姿と女性絵師の密やかでありながら光を燈し続けた復活を描く物語である。 第一部 1 一八八一年 神奈川の無縁仏 2 波止場での出来事 3 横浜グランドホテル 4 一八八二年 蛮人たちの家 5 一八八三年 美術品を追い求めて 6 狂ったように 7 リジーの役割 8 僧の拒絶 9 高野山 10 火事の後 11 幽霊の末路 12 そして、四人 13 暗い出来事 14 任務終了 第二部 15 一八三一年 江戸 16 数十日後 17 一八三五年 四年後の江戸 18 一八六八年 北曜 19 最期 20 一八五三年 浦賀湾、黒船 第三部 21 一八九二年 ボストン 22 失墜 23 さらなる失墜 24 闘鶏 25 本間耕曹 26 一八六七年 東京 応為 27 蛮人戻る 28 目録 29 一八九九年 東京 ダンス 30 一九〇〇年 パリ 31 一九〇〇年 東京 能 32 戸崎の菓子 第四部 33 一九〇四年 ボストン 34 一九〇四年 デトロイト 35 ウィノナ湖、インディアナ 36 デトロイト 37 一九〇八年 ロンドン 最初の旅立ち 38 ニューヨーク あの本 39 一九一三年 コベント・ガーデン ロンドン 40 出版人ハイネマンとのディナー 41 ロスト・ボーイズ 42 臨終の訪問 43 モビールのメアリー 44 東京ーー小布施 45 小布施ーー東京 菓子 46 再び東京で 47 東京 能楽 48 東京郊外、応為一人 ある小説家の応為研究 --あとがきにかえて 謝辞 訳者あとがき
井戸で発見された溺死体のお腹から取り出された胎児。彼には大地の「水脈を聴く」能力が宿っていた──。 ひどい頭痛に悩まされるマリアムは井戸の深淵からの「おいで、おいで」という囁きに導かれ、ついには溺死体として発見される。しかし、その体には胎児が宿っていた。無事(サーレム)に救われたことでサーレムと名付けられた息子は、耳を澄ませると地中を流れる水の音が聴こえるようになる。その噂はあっという間に広がり、避けられ孤立するようになるが、水源を探し当て村を襲った干ばつから救うことで必要とされるようになる。その評判は遠方まで轟き、15歳の少年は「水追い師」として各地で引く手あまたになるのだが──。 アラビア半島に位置し、雨のほとんど降らない小国オマーン。地下水路(ファラジュ)による独自の灌漑システムは、峻険な岩山や荒涼とした砂漠の地を潤してきた。『バグダードのフランケンシュタイン』などが過去に受賞したアラビア語圏最高の文学賞「アラブ小説国際賞」に輝く、水をめぐる傑作長編。 「気候変動や水資源の枯渇が世界的な課題となっている今日、この小説が描く「水に囚われる人間の姿」は、過去の物語ではなく、今まさに現代社会が直面する現実の縮図として読み解くことができる」(本書解説より)
第二次世界大戦の暗い影を落とす、バルト海に面した港町で暮らす少年たちの生き生きとしつつも、ちょっといびつな日常の物語。主人公と友人のマールケたちは沈没したポーランドの掃海艇に潜り、いろいろなものを引き上げてくる日々を送っていたが、やがて軍隊に加わり、戦争に関わっていくことに。 戦後の世界文学の最も偉大な作家の一人で、1999年ノーベル文学賞を受賞したギュンター・グラスの、初期を代表する「ダンツィヒ三部作」2作目の短編小説を刊行。「ダンツィヒ三部作」はグラスの故郷ダンツィヒを舞台にした、自伝的要素が強い3作品のことで、有名な『ブリキの太鼓』は1作目にあたる。 本書は1977年集英社発行を底本に復刊し、書き下ろしの解説を追録。