出版社 : ハーパーコリンズ・ジャパン
高級デパートチェーンの社長秘書エヴァは、会議の準備中、服にコーヒーをこぼしてしまい、慌てて着替えをしていた。運悪くそこへ次期社長のジョスが現れ、彼女は恥ずかしさに息をのんだ。長年、有能な彼にときめいても、必死に恋心を抑えてきたのだ。今も平静を装いながら、エヴァが背中のファスナーを上げるのを手伝ってほしいと頼むと、ジョスは紳士らしく手を貸してくれた。だが、まさにその瞬間を目撃した彼の父である現社長が、二人の仲を誤解した様子の訳知り顔で、衝撃の事実を告げるーじつは自分は末期癌だが、これで安心して息子に会社を譲れる、と。エヴァが誤解を正そうとすると、ジョスがそれを遮るように宣言した。「彼女とは真剣な関係だ。じつは、僕たち、婚約したんだ」
看護師のエマは車でオランダを旅行中、誤って高級車にぶつかってしまう。すぐに謝り、弁償すると申し出たが、相手の男性は冷たくそっけない。それでいて、同乗していたエマの母には優しくふるまう彼に、苛立ちと、切ないような不思議な感覚を胸におぼえ、エマは戸惑った。名も告げず去った彼を、その後も思い出しつつ迎えた旅の最終日、古城での催しで、エマは件の男性と偶然再会し、胸を高鳴らせる。ユスティンと名乗った彼はしかし、隣にすらりとした美女を連れていた。「そういうことなのね…」小さくつぶやいて肩を落とすエマだったが、帰国後、職場の病院で、驚くべき事態が彼女を待っていたー手術の最新技術を伝授する外科医として、ユスティンが現れたのだ!
23歳のモリーはまだ男性経験がないが、2週間前の仮面パーティで夢のようなキスをしてくれた男性こそ、運命の人と確信した。顔はわからないながらも、相手の指輪から、彼が誰かは見当がついた。そこでモリーは、相手の弟であるジュリアンを訪ねる。ジュリアンとは兄妹も同然に育ったので気恥ずかしいけれど、意を決して恋の相談をすると、彼は思いがけない提案をした。1カ月間、ジュリアンとモリーが恋人同士のふりをすれば、兄の嫉妬心をかき立て、振り向かせることができるというのだ。だがモリーは知る由もなかったー目の前のジュリアンこそ、あの夜、魅惑のキスで彼女の心を奪った“運命の人”とは!
十代で母と妹を事故で亡くし、自らも癌を患った過去を持つナオミは、ある日、人里離れた場所に立つガラス張りの館を訪れた。ここに住む有能な大富豪、ロイスの協力のもと家業を盛り立て、もう病弱な自分ではないことを、家族に証明したいのだ。でも、世間を寄せつけない彼との交渉は慎重に進めなければ。いざ会ったロイスは、優しく魅力的な男性だった。悪天候でガラスの館に閉じ込められ、ともに過ごすうち、ナオミは孤高の大富豪に強く惹かれ、身も心も任せてしまう。しかし、性急に燃え上がった情熱の余韻も冷めやらぬなか、ロイスが氷のように硬い表情で言った。「きみの本当の目的はなんだ?」
2カ月前に母を病で亡くしたばかりのマリーナは、白血病の少女に骨髄を提供するため、はるばるイギリスへやってきた。空港に迎えに来ていたのは、約束の運転手ではなく、少女の親族である若く美しきウィンターボーン伯爵、ジェームズだった。はじめこそ、尊大な態度をとる彼に反感をおぼえたものの、互いに身の上話をするうち、しだいに打ち解けていった。そしてマリーナは伯爵に魅了されている自分に気づくー心も、体も。経験したことのない我が身の反応に戸惑うと同時に、気分が浮き立つ。だが、伯爵邸に案内されるなり、ジェームズの世話係の老人が忠告した。伯爵様には、婚約を考えている美しい令嬢がおられます、と。
ケイトの勤務する会社が突然買収され、現れた新社長の姿を見て、彼女は我が目を疑った。5年前、事業が成功して富豪になるや、別の女性を作ってケイトを捨てた元夫のショーン。今でも私の心は血を流しているというのに、彼の下でなんて働けないわ。ましてや、離婚後に身ごもったと気づいた息子の存在は知られたくない…。(『愛を捨てた理由』)。牧師の次女ジョージアがイタリア名家の子息レンツォと結婚するのには、誰にも言えない事情があった。もともとレンツォの婚約者だったジョージアの姉が、彼の既婚の弟と駆け落ちしてしまい、姉の身代わりとして結婚に同意しなければ、父親に事実を告げると脅されたのだ。姉の背徳を知れば、聖職者の父はどれほど悲しむか…。(『ハネムーン』)
シアは両親亡き後、ウエイトレスをしながら大学で学んでいる。華やかな生活を送る友人からNYでの休暇に招かれたが、連日連夜のセレブの集いには、気後れして楽しむことができない。ある晩、会場のバルコニーでシアは男性に声をかけられた。目を見張るほどハンサムで、富と権力がにじみ出るようなオーラに、男性経験のない彼女は恐れをなして逃げ出してしまう。彼こそがパーティーの主賓、大富豪のルシアン・スティールであり、目を留めた女性は必ず手に入れると知ったのは、そのあとだ。翌朝、高級ホテルの鍵が届き、友人宅から彼女の荷物が運び出された。シアは震え上がった。私は、彼の標的になってしまったの…?
アリスはコーンウォールの漁村にある小さな診療所の医師だ。ある日、村の不良少年たちに絡まれてしまったアリスは、ハンサムでたくましい、イタリア系の男性に助けられる。それがジョヴァンニ・モレッティージオとの出会いだった。その年の夏、アリスの同僚が恋人とバカンスに出かけるあいだ、代わりに来てくれることになった元外科医だという。ひょんな手違いからジオはアリスの家に下宿することになり、職場でも家でも一緒という、気まずい夏が始まった。なぜなら、ジオは完璧すぎるのだ。腕の立つ医者で、優しくて、セクシー。アリスは初めて覚える胸のときめきに、とまどいを隠せず…。
看護師のルイーズは恋人の外科医ダニエルと結ばれた翌朝、君は僕の妻にはなれない、これは軽い“お楽しみ”だったと告げられた。ショックのあまり母国に戻るが、追い打ちをかけるように妊娠が発覚。彼女との結婚を望まないダニエルには知らせることなく、独りで産み、貧しいながらも懸命に赤ん坊を育てていた。息子が3カ月になり、仕事復帰に選んだ病院へルイーズが初出勤すると、そこには驚くべき人物がーなんとダニエルが勤務していたのだ!ルイーズが子育てをしていると人づてに知った彼は、なぜ秘密にしていたと責めるよりも、さらに残酷な言葉を口にした。「よかったね。僕のあとに、幸せになれる相手に巡り合えたんだね」
第9代ソーンリー公爵の命の灯は、暴漢の手によって消されようとしていた。逃げた花嫁を追い、貧民街になど足を踏み入れたせいだ。運命を呪う公爵だったが、颯爽と現れた男性に救いだされ、手厚い看病を受ける。目覚めた公爵の瞳に飛びこんできたのは、あるはずのない胸の膨らみーそう、恩人ジリーは女性だったのだ。治安の悪い場所で働くため、幼い頃から女性らしさを拒絶して生きてきたジリーは、今も男装を貫いている。しかし、男物のシャツでは隠しきれない可憐さと、意外にもうぶな一面が、公爵の男の部分を刺激して…。
目覚めたときトレヴァーは病院のベッドに横たわっていた。勤務する大使館を襲ったテロリストによる爆破ー親友をはじめ多くの人間が亡くなり、トレヴァーは数少ない生存者だった。しかし代償として左目を失い、絶望する日々のなか、彼は亡き親友が持っていた27通の手紙を目にする。そこにはカイラという女性からの愛に満ちた言葉が綴られていた。自分宛ではないとわかっているのに、その手紙はいつしかトレヴァーの心の支えになっていく。カイラに会いたいと願い、やがて退院したトレヴァーは彼女の住む町へ足を向けたが…。
父の死後、初めて母の遺品を見ることを許されたサビーヌは、実の父がほかにいるという事実を知って愕然とした。生前、母はフランスの生まれ故郷について多くを語らなかったが、かの地に行けば、本当の父親がわかるかもしれない。不安を胸に抱えて、サビーヌは母の故郷の村を訪ねた。すると一人の男がサビーヌを見たとたん、怒鳴りつけてきた。目に軽蔑の色を浮かべて、二度とここに来るなと言って。危険な香りと、鮮烈な魅力を放つ男の剣幕に思わず凍りつく。彼は、私の父が誰か知っているのだろうか…?
派遣会社で働くローラに、とある富豪の城での仕事が舞いこんだ。城主リチャードは先日前妻を亡くしており、幼い娘を引き取ることになったため子守を頼みたいのだという。彼は事故で顔に大怪我を負って以来、隠遁生活を送っていて、ここ数年、その姿を見た者は誰ひとりいないらしい。実際、城での仕事が始まってからも会話は常にドア越し。リチャードは一向に姿を現さず、娘にすら会わないと言い出した。これでは父を頼りに城にやってきた少女がかわいそうだ…。ローラは決心したーなんとかして彼を孤独の闇から出そうと。
怪我をしたバレリーナ、ルビーがバレエ団から命じられた仕事は、大事な支援者、大富豪マッテオの案内役だった。銀行家で、プレイボーイとしても有名な彼の魅力にあらがえず、ルビーは一夜をともにした。数週間後、身ごもるとも思わず。私は親に愛されずに育ったけれど、この子に同じ思いはさせない。彼女はマッテオに伝えるため、貯金をはたいて飛行機に乗った。だがパーティを開いていた彼は、ルビーを見るなり顔色を変え、人目に触れないように別の部屋に追いたてて姿を消した。これは厄介払いということ?彼女は人知れず泣いた。
テディーは密かに産んだ息子をひとりで育てている。あるとき訪れたホテルで元夫のギリシア富豪アリストとでくわし、激しく動揺した。もう会わないはずだったのに、今ごろなぜ?じつは4年前の離婚の前夜、くすぶる最後の情熱を燃やすようにテディーはアリストと肌を重ね合わせ、妊娠したのだった。彼女の息子をひと目見るなりすべてを悟ったアリストは、子供には両親のいる家庭が必要だと主張し、再婚を迫るが、テディーの心は虚しく揺らいだ。彼がほしいのは息子だけ。わたしが今も彼を愛していることに気づきもしない…。
ジョゼフィーヌはヨットから海に転落した男性を助けた。怪我をした彼は記憶を失い、名前も出身もわからなかった。ギリシアの太陽の下、二人はアダムとイヴのように惹かれ合い、情熱的な7日間を過ごす。しかし、幸せは長く続かなかった。彼の名前がアレクサンデルで、皇太子だなんて知りたくなかった。すべてを忘れていたから、野暮ったい私を恋人と呼んだことも。だが皇太子が国に戻ったあと、ジョゼフィーヌは妊娠に気づいた。そのことを知らされたアレクサンデルの行動は迅速だった。彼の命により、ジョゼフィーヌは塔に囚われの身となってしまう!
空虚な船上パーティーの翌朝、頭痛に苦しむアリアンナの前に驚くほど傲慢でセクシーなイタリア人男性が現れた。「ぼくはサンティノ・ヴァザーリ。あなたの新しい護衛です」また父が、厄介者の愚かな娘の監視役を雇ったのねーようやく父の愛を諦め、自立への一歩を踏み出したところなのに。アリアンナは辟易したが、誘拐されかけたところを助けられ、シチリアに逃れて寝食を共にするうち、サンティノに恋心を抱く。だが、そのときのアリアンナには知るよしもなかった。彼が人を愛することなどできない、冷徹な大富豪だということを。
早くに両親を亡くしたメイジーは音楽大学に通いながら、学費を稼ぐために夜は清掃員として働く毎日。ある日いつものように掃除をしていると、真夜中のオフィスで一人ウィスキーグラスを傾ける、大富豪アントニオに出会った。今日は亡き弟の命日らしく、彼は悲しみから逃れるようにメイジーを誘惑し、二人はそのまま熱い夜を過ごす。でもきっとこれは一夜の過ち。彼は住む世界の違う人だもの…。そう自分に言い聞かせるメイジーだったが、数週間後、妊娠に気づき、意を決してアントニオに会いに行った。だが彼は冷たく告げたー君とは会ったこともない、と。
美しい海辺の式場で、花嫁のドーンは不安を隠せずにいた。挙式の時刻はとっくに過ぎているのに、新郎が現れないのだ。代わりに現れたのは、新郎の兄で富豪一族の長男クーパー。彼は弟の手紙をドーンに渡し、結婚式の中止を冷たく宣言した。これまでの人生、5度も恋人に手ひどく裏切られてきたけれど、まさか今度は結婚式当日に捨てられるなんてー“また捨てられた、かわいそうなドーン”という周囲の囁きにいたたまれず、ドーンはその場から逃げ出した。その彼女を追いかけてきたのは、当のクーパーだった。傷心のドーンは、彼にもまた思惑があるとは気づきもせず…。
貧困家庭に育ったキャリーは早くから働き、16歳で住む家さえ失った。やがて心安らぐ相手と結婚したが、その夫も半年前に病死し、今は遺された幼い息子たちを育てながら、小さな店を切り盛りしている。そんなある日、キャリーは店に客として現れたディーコンと知り合い、彼の熱心な求愛と子供たちへの優しさに、恋心を抱くようになった。想いは日増しに募り、キャリーはある告白をするー車椅子生活だった亡き夫とは体外授精で子を授かったので、男性とベッドをともにした経験がないのだ、と。前向きに受け止めたディーコンに、彼女はさらなるときめきを覚えた。じつは彼が、富豪一族の出身だった夫の異母兄弟で、息子たちを手に入れようと近づいてきたことなど知りもせずに。