出版社 : ハーパーコリンズ・ジャパン
集中治療室で働く看護師のエリーズは、事故で重傷を負ったデーモンを担当することになった。有名な大企業を牛耳る社長だというが、今はその端整な顔も腫れ、全身を管につながれて、昏睡状態だ。見舞いの家族も来ない彼に寄り添い、耳元で懸命に声をかけるうち、エリーズの心にはいつしか、特別な感情が芽生え始めていた。だめよ、私情を挟んだりしちゃ。そう自分を戒めた矢先、ついにデーモンが意識を取り戻すー視力が失われた状態で。やがて、看護師が同伴するという条件で退院を許された彼は、ためらうエリーズを連れて、湖畔の別荘へ向かい…。
私の代わりに、婚約を破棄したいと彼に伝えてきてーアリスは妹からの無理なお願いを断りきれず、妹の婚約者に会うため、ひとりギリシアへ飛んだ。旅の途中、とあるホテルに滞在していたとき、あろうことかボーイに扮した謎の男に誘拐されてしまう。名はステファン・カサンドロス。妹の婚約者をよく思わぬホテル王。アリスを妹だと思い、彼女を道具に一矢を報いようとしているらしい。彼女が必死で人違いだと訴えても耳を貸そうとせず、ステファンは彼が所有する地所へアリスを連れ去った。「きみを、思うがままに扱わせてもらう」と、容赦なく宣告して。
愛する家族を亡くし、横暴な祖父にこき使われているリジーは、祖父に付き添って訪れた保養地でハリー・ブレザートンと出会う。どこか陰のある青い瞳の、優しくて魅惑的な紳士ーこんなにすてきな男性が、私なんかに話しかけてくれるなんて…。夢のような出来事に戸惑いながらも彼に惹かれていくリジーだったが、噂を聞いた祖父に激怒され、田舎町の屋敷に連れ戻される。ふたたびひっそりと使用人同然の暮らしをしていたある日、リジーの前にハリー・ブレザートンが現れた。彼は信じられないことを口にしたー僕はインバーセッグ伯爵で、あなたに求婚するつもりだと。
3年前、父の死に伴い、カミラは母と妹を連れて別の地へ移り住んだ。上流階級でありながら一家の経済状態は困窮しており、カミラは家族にも内緒で、扮装して“リゼット”の名で舞台に立った。はしたないと揶揄される仕事で日銭を稼いでいるのが明るみに出れば、社交界から軽蔑され良縁は望めないため、一生独身を貫くつもりで。しかし、ようやく目処が立ち、これを最後と仕事を引退した夜、彼女は賊に襲われ、舞台を見ていたアシュビー伯爵ニコラスに救われる。すてきなお方…。でも、“リゼット”の正体は、絶対に明かせない。朝まで護衛すると言われたが、彼女は不意をついて逃げ出した。後日、さるレディの家で、カミラは妹から紹介された男性を見て凍りつく。「カミラ、こちらはアシュビー伯爵。お近づきになりたいそうよ」
エンジェルは7歳で最愛の母を亡くしたあと、暴力を振るう父から逃れ、里親の家を転々としてきた。大人になった今も“我が家”を知らず、方々を渡り歩いている。先日、雇主から嫌がらせを受けて勤め先を辞めたのを機に、新天地を求めてヒッチハイクをすることに決めた。ある大雨の夜、エンジェルは美しい瞳の男に拾われる。ロイヤルと名乗る彼は、今夜家に泊めてくれるだけでなく、家政婦の仕事を提供してくれるという。あまりに親切な申し出に戸惑いながらも彼女は承諾するが…。
ある日コリーンは、車を運転中トレーラーに衝突され、全身に傷を負ったばかりか、同乗していた妹も亡くした。遺された妹の幼い子供たちは、コリーンの入院中に、伯父である富豪ケイドの家に引き取られたらしい。子供たちに会いたくてたまらず、コリーンは彼の家を訪ねるが、ケイドに冷酷そのもののまなざしを向けられ、愛する甥にも“ママを殺した”と非難されてしまう。コリーンはあまりのショックにその場で気を失った。そして目覚めたとき、介抱してくれたのは意外にもケイドで…。
人でごった返すスペイン、マドリードの空港。搭乗便を待つメーガンは思いがけない人物にでくわした。エミリオ・リオスーずっと憧れていた兄の友人。冷酷な経営手腕と派手な女性関係で知られる裕福な実業家だ。2年前に冷たくあしらわれて以来、距離を置いてきたけれど…。すると彼は挨拶もないまま、メーガンを引き寄せてキスした。呆然とするメーガンに、彼は謎めいた視線を送ってたたみかける。「今夜、僕と一緒に過ごさないか?」「100万ドル出せるならね」動揺のあまりメーガンは軽口で返した。それが、めくるめく嵐のような1日の始まりだったー
挙式の直前で婚約者に裏切られたリリーは、おばのもとに、しばらく滞在することにした。だが、一つ気がかりなことがある。アレッサンドローおばの屋敷に住まう、初恋の相手のことだ。おばに拾われて、イタリア有数の実業家にまでなったが、孤児だった彼は、想像を絶する悲惨な少年時代をおくったという。その生い立ちが影を落とし、鼻持ちならない人間なのだ。いまは誰にも傷つけられたくない…誰も愛したくない…複雑な想いを抱えたまま、リリーはアレッサンドロと再会する。変わらぬ美貌にひどく冷酷な笑みを浮かばせたー。
病身の母を救うため、オリンピアは祖父のもとを訪ねていた。駆け落ちした母は、ギリシア富豪の祖父に勘当されたが、かつてオリンピアは祖父の屋敷に招待されたことがあった。そこで結婚相手にと紹介されたのが、若き実業家ニックだった。魅力的な大富豪に、オリンピアはたちまち夢中になるも、ニックの親友とあらぬ関係を疑われて、疎遠になっていたのだ。援助する代わりに、その彼との結婚を祖父につきつけられ、戸惑うオリンピアをニックは無遠慮に眺めながら、言い切った。「僕の跡継ぎを産むのが、結婚の条件だ」と。
母の死後、19歳のメレデスは幼い弟とふたりだけになった。困窮したメレデスは、長らく絶縁状態にあったファウラー大財閥を築いた、母方の祖父を頼るしかなくなった。だが祖父は血筋のためなら、なんでもする冷帝な人物だという。機転をきかせた彼女は屋敷に着くなり、権力闘争から守るため弟を自分の息子だと偽るが、すぐに激しく後悔した。祖父の後継者、実質上の大財閥の統括者であるデインに、身持ちの悪い女だと、底冷えする目つきで蔑まれたから。そして、メレデスは寡黙で美しい彼に心を奪われたから。
私が本当に愛されるわけがないーわかってはいたが、バイオレットはその夜、憧れのブレイクの腕を拒めなかった。元ボスのブレイクは、太り気味だと彼女を揶揄していたのに、会社を辞めて垢抜けると、とたんに目の色を変えてきたのだ。ところが、バージンを捧げたバイオレットの妊娠が発覚しーブレイクは結婚を申し込んでくれたけれど、彼女は落ち込む。恋人を事故で失って以来、独身を通してきたブレイクにとって、それは愛でなく、責任を果たすためのものにすぎないから。それどころか目的は、バイオレットの体だと告げられて…。
就任式で新オーナーを見てキャシーは気を失いそうになった。6年前、キャシーと情熱的な一夜をともにして結婚も誓ったのに、そのまま姿を消し、ひどい仕打ちをしたサンドロではないかと。その後、キャシーは妊娠に気づいて愕然としたが、誰にも頼ることなく、一人で双子を産んで育ててきた。妊娠がわかったときに一度だけ電話をし、すげなくされた、あのときの絶望感は、いま思いだしても鋭く胸を刺す。呆然とする彼女の前で、サンドロは残酷すぎる言葉を口にした。「僕たちは以前、どこかで会ったことがあるのだろうか」
長い金髪を額でわけて腰まで垂らし、透き通るように白い肌。19世紀の絵画から抜けだしてきたような花屋のソーニャは、30歳以上も年上の富豪に見初められて、婚約間近だった。ところが晩餐会で見た、富豪の甥デイヴィッドに胸がざわつく。男らしい彫りの深い美貌が眩しく、心惹かれたのだ。だが身を落としているとはいえ、ソーニャは滅びた貴族の末裔で、誰にも言えないような、忌まわしい過去の呪縛に囚われている。しかも、デイヴィッドには財産目当ての女と嫌われていて…。私の愛は叶わぬ夢と、未練を断ち切るように彼女は目を伏せた。
グアテマラの殺戮から1年。メキシコの麻薬王アダン・バレーラの死は、麻薬戦争に終結をもたらすどころか、新たな混沌と破壊を解き放っただけだった。後継者を指名する遺言が火種となり、カルテルの玉座をかけた血で血を洗う抗争が勃発したのだ。一方、ヘロイン流入が止まらぬアメリカでは、DEA局長に就任したアート・ケラーがニューヨーク市警麻薬捜査課とある極秘作戦に着手していたー。21世紀のクライムノベルの金字塔『犬の力』『ザ・カルテル』のシリーズ第3弾、完結!
メキシコでは再び恐怖が街を支配していた。熾烈を極める抗争、凄惨さを競ってSNSで拡散する虐殺映像。終わりなき血と暴力の連鎖に、ケラーは米国国内からカルテルへの金の流れを断つべく、囮捜査官を潜入させる。やがて見えてきたのは、アメリカ政財界とメキシコの巨額ドラッグマネーが絡む腐敗の構造だった。大統領をも敵にまわしたケラーが最後に下す決断とはー。40年に及ぶ血と暴力の連鎖は、国境を越えてアメリカ合衆国へ。全米ベストセラーの問題作。
生活のために必死で働く23歳のアビーは愛も恋も知らない。空想でつくりあげた“完璧な婚約者”との恋愛話を憧れのまま周りに話していると、思いがけず慈善舞踏会へ招かれることに。婚約者の同伴は必須…困ったわ、どうすればいいの?ふとアビーの脳裏に、親友の兄で富豪のルークの姿が浮かんだ。慈善の目的だと彼に頼みこみ、練習のためキスを試してみると、アビーの体に熱い震えが走った。いったいこれはなに?陶然とする彼女をよそにルークは涼しい顔で念を押した。「今夜一夜かぎり、2時間が過ぎたら終わりだぞ、シンデレラ」
ダンテがはるばるロンドンからわたしに会いに来たというの?アリシャは胸にざわめきが広がるのを感じた。今や富豪となった彼は幼いころ、彼女の父のお気に入りだった。父は実の娘よりダンテをかわいがり、亡きあとは会社を託した。彼への嫉妬と恋心を封印して、遠い地へ逃れてきたのに…。「破綻寸前の君の慈善事業を守りたければ、僕と結婚するんだ」ダンテの真の狙いは、彼女が持つ亡父の遺産の株だと知りつつ、アリシャの心は揺れた。母の遺志である事業を潰したくはない。でも、愛されない花嫁になるのはあまりに哀しすぎる…。
巨大複合企業CEOアルトゥーロは、ローズを見て面食らった。古びた服を着た、この地味な女性が弁護士?身分を隠してここを訪ねたのは、手こずる再開発事業に業を煮やしたからだがー。彼は内心ほくそえんだ。面白い。デート相手には不向きでも、ぼくに落とせない女などいない。ローズは、冷酷な開発業者へのデモに参加したいと現れたアルトと名乗る男性に目を奪われた。端整な顔に、見事な体格。優雅な様子は活動家らしくないけれど、ローズは快く受け入れ、部屋数だけはあるぼろぼろの家に、アルトを泊めることにした。実は富豪の彼から誘惑の魔手が伸びるとは、つゆほども疑わず。
手元の食料はしわしわのじゃがいもだけ。赤ん坊のミルクもあと少し。クレアは妹の遺児を引き取って育てていたが、限界が近づいていた。仕事も辞めている今、もう赤ん坊の父親にすがるしかない。しかし、最後の頼みの綱だった富豪パトリックは、妹との関係を否定した。クレアはタクシー代を渡され、けんもほろろに追い払われてしまう。万策尽きて途方にくれていると、今度はパトリックが彼女を訪ねてきた。「赤ん坊は亡き兄の子だと思うから、いっしょに育てたい」と言って。ほほえむ彼を、クレアは出会った中でいちばんすてきな男性だと思った。でも子どもを育てるなら、パトリックに恋をして関係を複雑にはできない。裕福な彼は貧しいわたしを哀れんでいるだけ。誤解してはだめよ…。
伯爵領の使用人の娘ホリーは、女として未熟だと恋人に捨てられた。心沈む彼女のもとに、ある日、亡き伯爵からの遺言状が届く。“ふたりのうち先に結婚し、婚姻関係を1年続けたほうに地所を譲る”うまくいけば、父が大切に守ってきた土地を、父に贈ることができる。問題は、もうひとりの相続人候補、大富豪のステファンー8年前、国を追われて英国へ渡り、世界的な不動産王になった人物だ。いざ対面したとき、ホリーはステファンの凛々しさに息をのんだ。ほだされちゃだめ、男手一つで育ててくれた父に恩返しするのだから。一方、母国復帰の思惑を胸に秘めたステファンは、思いがけない台詞で彼女を翻弄した!「僕と結婚してくれ」。幼くして母親に見捨てられ、不実な恋人からも理不尽に捨てられたホリー。そんな彼女を拾うかのごとく求婚したのは、なんと真剣な恋や純真な愛を拒む大富豪で…。切ないシンデレラ・ストーリー。『さよならを言わせて』『妃になれないシンデレラ』の関連作。