出版社 : 勁文社
一九四七年の春。東京軍事裁判の資料調査を委嘱されていた呉景雄は、仕事の息苦しさから辞職を願い出、空路シンガポールへ帰国の途についた。やがて飛行機は広州上空を通過、眼下に点在する島々が彼の眼に映じた。思えば十五年前、彼はそこで白磁のような膚をもつ海賊の女頭目と夢幻の日々を過ごしたのだった。動乱の歴史の中にはかなく潰えた桃源の地を回想する表題作ほか、秀作四篇を収録。
白衣の下で疼く花芯、美沙子の細く白い指が密やかに息づく処女地にそっと触れたとき、未だ開かれたことのない花唇が甘いため息を洩らす。望みどおりドクターの硬く熱り立つ剛直を受け挿れた美沙子は、もう男なしでは生きていけない。
恋人のために守りとおしたバージンを、老獪な大物政治家と病院長に無残に散らされた看護婦・優香子。薄暗い地下室で両手を縛られ、無慈悲な凌辱に涙する美人処女。復讐を誓う優香子は、院長令嬢・ゆかりに親娘相姦の罠を仕掛ける。疼く花芯をしとどに濡らし、ゆかりと優香子の“女”が目を覚ます。
平安京に都が移り二百年ほどの時が流れた頃。かつては様々な種族が互いに覇権を争ったこの国も、朝廷によってひとつに統一され、藤原氏の摂関政治の下華やかな王朝絵巻がくり広げられていた。しかし、昼の華やかさとは裏腹に、漆黒の闇に沈んだ夜の京を支配していたのは、どこからともなく現われる野盗、妖かし、魑魅魍魎共であった。人々は、いつしか「平安の京には鬼が出る」と囁き、夜の闇を怖れていた。上総の国守源頼光、渡辺綱主従に、帝よりの勅命が下ったのはちょうどそんな頃であった-。朝廷側の尖兵として「鬼」との壮絶な戦いに巻き込まれていく男達の運命を、新鋭が鮮烈に描くファンタジー伝奇ロマン登場。
独身商社マン・南部良平は、仕事は有能かつハンサム。非の打ちどころがない男なのに、いざ結婚となるとなぜかうまくいかない。一計を案じた良平は、結婚前に、様々な女を徹底的に研究しようと決心するが…。長篇官能ロマンPART1。
夕子とゆかりは、イマドキの女子大生。バイト先で知り合った旅行代理店の吉村から、いまいちばんトレンドなリゾート地、タイ・プーケットへの旅行をプレゼントされた。だが、二人は穴うめ要員として、偽名を使うことが条件だった。不審を感じつつも、プーケットに出かけた二人。そして旅を満喫しようとした矢先のこと、吉村が殺された。しかも、彼は旅行代理店の人間ではなかったのだ-。軽い気分でリゾートしたはずの女子大生が遭遇した連続殺人事件の真相は?著者が新境地に挑む書下ろし長篇トラベルミステリー。
レスビアンの私は、楚々とした美女・高子に女同士だけが味わえる恍惚の味を教え込んで恋人にした。だが、高子は男のもとへ走り、やがて私は拾てられた。相手が男であることで凄まじい嫉妬に陥った私は、高子を殺そうと決意するが…。嫉妬が生み出した奇怪な犯罪を描く表題作をはじめとする異色官能サスペンス集。
中ソ間の熱核戦争によって、無人の荒野と化した北米大陸。その中央部にある小さな街、デザート・シティ。そこには、軌道上に電力を送るための巨大な螺旋形の塔が建設されつつあった。隅然、砂漠の中で酒場の女主人マギーを野盗の群れから助けることとなった〈バイロン〉は、タワー建設によって“デウス”に取り入ろうとする日系企業ラコム社と中国系マフィアのボス、ジョニー・ウォンとの争いに巻き込まれていく。おりしもバイロン抹殺の使命を帯びた美貌の女スーザンも、彼を追い軌道上からこの街へと向かいつつあった-。愛と欲望の渦巻く街を舞台に、一人の男と軌道上の超国家企業の死闘を描くシリーズ第二弾。
私立探偵・萩原の同業者・相川が殺られた。浮気調査の仕事を回してやった矢先のことだった。相川のヤサの荒らされように明らかにプロの仕事。だが、たかが女に裏切られて泣きついてきたチンピラの依頼に、何故プロが絡むんだ?唯一の遺留品から、事件の背後に“組織”の匂いを嗅ぎつけた萩原は、見えざる敵を追い始める…。地獄の戦闘へ自ら飛び込む、ベトナム帰りの私立探偵・萩原大吾の活躍を猫く迫力のシリーズPART2。
夫を亡くし、孤閨に耐えかねる圭子が家政婦として住み込んだ資産家の邸宅。家人の留守中訪れた義弟との情事をその家の息子に覗かれた時、圭子の地獄への転落は始まった。弱味を握られた圭子は、息子とその友人3人に輪姦され、家の主人に凌辱され、夫人にまで秘裂を嬲られる。狂気の家に囚われた圭子は、逃げることもままならずいつしか忠実な奴隷へと堕ちていく…。
敏腕事件記者だった橋田雄三は女でしくじって以来、横浜の支局でくすぶっていた。偶然に暴力団羽島組の麻薬取引きを知った橋田は、怠惰な毎日に別れを告げるべく、ボクサー崩れの花井、ドブチュー呼ばれる古物商とその娘を中間に、麻薬横取りを狙い、神戸へと向かった…。長篇ハードボイルド・アクション。
私立探偵・萩原が中本澄江から依頼された浮気調査は一流会社に勤める夫とバーのママを別れさせるというありきたりの仕事だった。だがその仕事を受けた直後、萩原の行動を阻止すべく暴力団が動き出し、情報提供者が殺される。事件の裏に陰諜の勾いが?萩原は失踪した中本の行方を追うが、その行く手には凶悪な銃口が立ち塞がっていた…。銃撃戦とカーチェイス。ベトナム帰りの私立探偵・萩原大吾の活躍を描くPART1。
警視庁の敏腕刑事・水上夏樹は、一流企業会長の御曹子にしてカクテル作りが趣味という独身貴族。馬主となって、休暇のあいだ競馬に熱中していた彼のもとへ、同僚である川辺刑事の溺死の報が入った。拳銃密輸組織を内偵中だった川辺刑事の死に不審を抱いた水上は単身、事故現場の神戸へ飛ぶ。そこで彼は馬主仲間で、憧れの芦屋夫人に再会、恋に溺れそうになるのだった。だが、捜査をすすめるうちに、その美女と川辺との意外なつながりが浮かんで…。大好評カクテル刑事シリーズ第3弾、ロマンチックミステリー。
西暦2001年。中ソ間で勃発した悪夢のような熱核戦争は、地球上に存在した全ての国家機構を壊滅させた。次代の支配者として人々の上に君臨したのは、荒廃した地表から軌道上へ脱出した、複数の財閥を中心とする超国家企業“デウス”だった。彼らは地上から乏しい資源を吸い上げ、人工のパラダイスの中で享楽に耽っていた。残された人々は、頭上に羨望と憎しみのこもった視線を投げつつも、必死に生きていた。しかし、その〈神に見捨てられた地〉地球の上を、何ものにも束縛されず風のようにさすらう一人の男がいた-。近未来を舞台に一人の謎の男と軌道上の超国家企業の死闘を描く、SFハイパーアクションロマン。