出版社 : 新潮社
吸血鬼一家が営む山奥のピッツェリア。ある日、新たな仲間が加わることに! 漫画家を目指す双子の小学生吸血鬼、ルキアとラキア。二人はスランプから抜け出すため、ピッツェリアに見習い職人としてやってきたオーエンにキャンプに連れて行ってもらうことになった。オーエンには吸血鬼だということを知られてはいけない。でもその夜、ある事件に遭遇しーー。変速するヴァンパイアストーリー全三篇。
探偵作家と外交官。若き二人が友となり……斬新な発想で描く波瀾万丈の物語。大学の先輩後輩、江戸川乱歩と杉原千畝。まだ何者でもない青年だったが、夢だけはあった。希望と不安を抱え、浅草の猥雑な路地を歩き語り合い、それぞれの道へ別れていく……。若き横溝正史や巨頭松岡洋右と出会い、新しい歴史を作り、互いの人生が交差しつつ感動の最終章へ。「真の友人はあなただけでしたよ」--泣ける傑作。
救いのない日々。でも、何気ない行動が、誰かの人生を救うことだってーーある。事故で妻を亡くした会社員、友人も彼女も才能もない大学生、母の看病で全てを失った女性ーーコンビニですれ違っただけの3人の男女。人気最下位の競走馬「マジメガイチバン」がレースで一発逆転した夜、彼らの人生をひっくり返す大事件が起こる。懸命に生きているのに報われない人たちの、運命の72時間を描く感動作。
究極のエロチシスムとは、何なのかーー官能小説で伝えたいーー。生誕百年で話題の作家三島由紀夫の作品についての評論「金閣寺」、エッセイ「薬剤師」、官能小説「魔王」を収録、〈不条理の罰に絶望するのではなく希望を見いだすエロチシスム=悪とエロチシスム、死とエロチシスムの関係を考えている。エロチシスムの本質は「倒錯」、そして、そこから生まれ変わること〉という著者の作品集。
撮影中止か、さもなくば死を! 呪われた映画に挑んだ新進女優に密着する。主演すべてが不可解な死を遂げてきた、呪われたシナリオ。三度復活した企画に、新進女優が果敢に挑む。モチーフは実際にあった連続殺人事件。昼間は目立たないOLが、夜は街角に立って客を取り、時に絞殺する。主役の殺人鬼の役作りに悩むうち、いつしか女優は心の平穏を失っていく。惨劇はまたしても繰り返されるのか?
誰かの力を借りなきゃ、笑えなかったーー警報級の大型新人、満身創痍のデビュー作! 主人公の沙智は、難病の母を介護しながら高校に通う17歳。母の排泄介助をしていると言ったら、担任の先生におおげさなくらい同情された。「わたしは不幸自慢スカウターで言えば結構戦闘力高めなんだと思う」。そんな彼女を生かしたのは、くだらない奇跡だった。選考委員が大絶賛した「R-18文学賞」大賞受賞作。
空襲で焼け落ちた明治宮殿に代わる、戦後日本、象徴天皇にふさわしい「新宮殿」をーー。敗戦から15年、皇居「新宮殿」造営という世紀の難事業に挑む建築家・村井俊輔。彼を支える者、反目する者、立ちはだかる壁……。戦前から戦中、戦後、高度成長期の日本社会と皇室の変遷を辿り、理想の建築をめぐる息詰まる人間ドラマを描き尽くす、かつてない密度とスケールの大長篇。『火山のふもとで』前日譚ついに刊行!
空襲で焼け落ちた明治宮殿に代わる、戦後日本、象徴天皇にふさわしい「新宮殿」をーー。敗戦から15年、皇居「新宮殿」造営という世紀の難事業に挑む建築家・村井俊輔。彼を支える者、反目する者、立ちはだかる壁……。戦前から戦中、戦後、高度成長期の日本社会と皇室の変遷を辿り、理想の建築をめぐる息詰まる人間ドラマを描き尽くす、かつてない密度とスケールの大長篇。『火山のふもとで』前日譚ついに刊行!
他人の命のため、自らの命を削る。過酷な救命の現場を描く、魂の衝撃作。感染症の拡大を背景に周囲の病院の救急態勢が崩壊する中、青年医師・公河が働く病院は「誰の命も見捨てない」を院是に患者を受け入れ続ける。長時間の連続勤務による極度の疲労で、死と狂気が常に隣り合わせの日々。我々の命だけは見捨てられるのかーー芥川賞受賞の気鋭が医師としての経験を元に描いた、受賞後初の単行本。
時空を超え、鮮烈に蘇る古の声、声、声。高村文学の極限と愉楽がここに。老いて死に瀕した一人の男が、意識の塊と化して長い仮死の夢を見る。そこに沸き立つのは高らかな万葉びとの声、野辺送りの声、笑い転げる兎や蛙の声、源氏の男君女君の声、都を駆けるつわものたちの声、定家ら歌詠みたちの声、そして名もなき女たちの声ーー。古文と現代文の自在な往還を試みた独創的文体、渾身の長篇小説。
おれは吸血鬼に会ったんだぜ、本当さ。選考委員絶賛の新潮ミステリー大賞受賞作! 食材として冷凍されていた男が生き返り、おれは咬まれ、殺されかけたわけだけど、冷静に考えるに最初から仕組まれていたんだーー。銀翼戦争後の北の街を、解体師のオズヴァルドと美少年ルカ、白髪の殺し屋エヴェリスたちが駆ける! 驚異の筆力と世界観で、選考会をぶっちぎりで勝ち上がった圧倒的ヴァンパイアミステリー。
お嫁さん養成ギプスなんか嚙みきってやるーー私たちの奇妙な生活の行き先は。楓はお腹の子の父親である先生と、その妻・野ゆりと暮らし始めるが、先生が姿を消してしまう。二人の同居生活はうまく回りそうにも思えたが、楓には秘密があり、やがて限界が訪れて……。「こんな生活、いますぐぶっこわしたほうがいい」「ぶっこわして、それからどうするつもりなの?」しなやかで爽やかなスタートの物語。
100パーセントの恋人たちへーー村上春樹と台湾の画家が描く瑞々しい世界。世界中の読者に愛される初期短編の表題作と「鏡」。二つの超人気短編が、瀟洒なピクチャー・ブックに! 物語は「昔々」で始まり、「悲しい話だと思いませんか」で終わるーーある朝、原宿の裏通りで少年と少女が偶然出会い、恋に落ちる。しかし二人の運命は……。若手画家と短編の村上ワールドが心地よく響き合う美しい一冊。
震災さえなければ、この人生は違ったのだろうか? 大震災直後に殺人を犯し、死刑を覚悟しながらもある人物を探すため姿を消した青年。自らの家族も被災した一人の刑事が、執念の捜査で容疑者に迫る。壊れた道、選べなかった人生ーー混沌とした被災地で繰り広げられる逃亡劇! 『孤狼の血』『盤上の向日葵』の著者が地元・東北を舞台に描く震災クライムサスペンス。
夫は私の気持ちに気づかない。駐在妻のマリが求めたのは、無垢で危険な愛。バンコクの高級アパートで暮らすマリは、コロナ禍で出張先から帰ってこられない夫と別居生活を送っている。日本にいた母の葬儀にも参加できず、孤独なマリに声を掛けたのは、テオというタイ人青年だった。寄り添い、理解しようと向き合ってくれるテオに、マリは心惹かれるようになる。魂が震える最高純度の恋愛小説。
化け猫、河童、そして山姥ーー狂気に塗れた苦界を生き抜く女と、化生の者どもが織りなす怪奇譚。江戸は神田三島町にある三島屋の次男坊富次郎は、変わり百物語の二代目聞き手。飼い主の恨みを晴らす化け猫、命懸けで悪党壊滅に挑む河童、懺悔を泣き叫ぶ山姥が登場する客人の身の上話を聞いている。一方、兄・伊一郎の秘密の恋人が出奔。伊一郎の縁談を巡って、三島屋は大騒動に巻き込まれてしまう……。
許されなくてもいい。だから優しく無視して。絶望的な幸福感とモラルの間で揺れる、18歳差の叔父と姪の愛の行方はーー。弁護士の永遠子は33歳。結婚3年目の夫と問題のない関係性を保ちながら、18歳年上の実の叔父・遼一としばしば逢瀬を重ねている。しかし信じていた夫が浮気相手を妊娠させ離婚し、その後、惰性で付き合った若い恋人とも別れてしまう。子供の頃から抱く自らの叔父への歪な欲望に向き合った永遠子が気付いた唯一無二の愛とは。
ドン・ファンと呼ばれた老資産家殺しは元妻が真犯人なのか、彼女は拘置所から私を操るのか。「銚子のドン・ファン」の異名をもつ好色な老資産家が死んだ。殺人罪で起訴されたのは、結婚したばかりの55歳下の若妻ーー。接見を重ねる新人女性弁護士は、被告の曰くありげな言動に翻弄されつつ、不可解な示唆と時に鋭い指摘に誘導されるように、事件の真相に迫っていく。異様な感動へ跳躍する新たな実話系ミステリー。
突然の激震に襲われ、男は裏山に駆け上がった。直後、自宅は津波に飲み込まれた。……なすすべもなくその様子を眺める男。だが、その手には分厚い原稿の束があった。それは十二年にわたって書き続けたもの。生と死、理解と誤解、希望と絶望。普遍の理。閉塞された空間、限られた時間。癌患者と臨む極限。その全てを「観て、覚え、感じ、捧げ、描い」た「看察(看病×観察)」の記。被災地の混沌を潜り抜け、今、ここに。