1989年7月発売
右大臣兼家の第二夫人で、本朝三美人の一人といわれた道綱の母は、夫の愛を独占出来ぬ一夫多妻の世で、日夜懊悩する。染め物・和歌・散文と多芸多才な、平安女流作家の謎の生涯を描いた書き下ろし長編歴史小説。
派闘争いに巻き込まれ、背任の濡衣を着せられて、大日本商事を辞めたエリートサラリーマン・谷沢。身の潔白を証明し、真相を究明する谷沢が、事件の鍵を握りながらも謎の失踪を遂げた元上司・佐々木の行方を追ううちに辿りついたのは、意外にも新興宗教団体〈浄霊九竜教〉の存在だった。しかも、調べを進めるにつれ教団の背後には麻薬とセックスを餌にした、とてつもない野望が浮び上ってきたのだ。谷沢は、教団本部に囚われているらしい佐々木の救出を決意。ひとり内部に潜入する。だが、そこで谷沢が眼にしたものは…。書下ろし長篇官能バイオレンス。
新宿発小田急線経堂行き最終電車が、ライフルを持った男にジャックされた。警察は直ちに犯人との交渉を開発した。だが、男は警官に発砲、その後は不気味な沈黙を守るだけだった。一方、唯ひとり人質にされたOL杏子は、恐怖に震えながらも、凶悪犯とは思えぬ男の優しさに、何か割り切れぬものを感じていた…(「朝の柩」)。都会の闇に、ポッカリと口を開けた落し穴に嵌った人間たちのあがきを活写する、異色作品集。
横浜の分譲マンションの地下受水槽から、若い女性の腐乱死体が発見された。そして、時を前後して起きた幼女誘拐事件。新聞記者・梶は、一見何ら関連性のない二つの事件に〈水問題〉が絡んでいる事に着目し、一人調査を開始する。だが、二つの事件は交錯しえないばかりか、関係者に失踪・変死が相次ぎ、混迷の様相を呈してきた…。著者の代表的長篇推理三部作の第一弾。(全二巻)
幼女を誘拐したまま犯人の連絡は途絶えた。二人の容疑者も連続して殺され、その葬儀と殺害現場に犯人からの雛罌粟の花が…。雛罌粟の示唆するものは何か?一方、腐乱死体の女性の過去を洗った捜査員は、思いがけない人物の影に遭遇した。ついに一点で交錯した二つの事件は、様々な運命を弄びながら、悲劇の終局を迎える…。大河ミステリー第一部完結編!(全二巻)
あたし高田周子、15才。あたしの特技は、毎晩、夢の続きを見られるってこと。2ケ月前、あたしはホンのいたずら心で、理想のカレの顔を描いた紙を枕の下に敷いて寝た。そしたらちゃあんと出て来たじゃない。あたしの理想のカレ。22才、オトナの香りがするけど、案外無邪気な人。その日以来、あたしは夢の中で毎日カレとデート。ところがある日、お姉ちゃんに誘われてテニスにでかけたあたしは、もうビックリ。だって、お姉ちゃんの恋人が連れて来た男の人、夢の君にウリふたつなんだもん…。夢と現実の間で揺れる周子の夏のラブストーリー。
純子は元気印の14歳。幼なじみの充弘をいじめて遊ぶ夏休みにあきたなーと思った夕暮れ時。ボーと歩いている純子を避けたバイク少年が、事故ってしまった。ヘルメットを取った彼は、まさしく理想の人。傷は浅かったけど、身寄りのない彼をしばらくあずかることになって純子は舞い上がる。そして、海辺で愛を告白された時には、これぞ幸福の絶頂!と思ったのだが…。なんと、初めて恋した人の正体は?夏に負けないピュアガールのロマンチックコメディ第1弾。
ナミビアの僻地で突如起こった村民皆殺し事件。一夜にして消えた死体。それは世界を揺るがす大陰謀の発端にすぎなかった。恐るべき謎に挑む米人記者スティーブ・デントン!アフリカ、パリ、ニューヨーク、ワシントン、地中海を舞台にスピーディーに展開する国際的スケールのカタストロフ・フィクション。フランス・サスペンス賞受賞。
街中の白い目を逃れて、ケヴィンとセイディーが故郷ベルファストから駆け落ちして4年。お金も、家も、たしかな仕事もなにも持っていない。ロンドンへ、リヴァプールへ、ふたりは、自分たちの本当の場所をさがして移り住む。やがて、ちいさな新しい家族ブレンダンも加わった。だが、ようやく落ち着いたチェシャーの田舎暮らしもつかのま、農園主の突然の死が、一家の運命をまたもや変える…。若い夫婦と赤んぽう、そして犬のタムシンは、ポンコツのワゴン車を改造して、ふたたび旅立っていく。カトリックの夫、プロテスタントの妻。旧世代がけっして越えることのできなかった、あの厳しい宗教的対立を、この若い夫婦は身をもって乗りこえようとする。イギリスの女性作家ジョアン・リンガードの感動の5部作、待望の完結篇。
マーサズ・ビンヤード島で生まれたエドワード・マナリングは、この島に生を亨けた者のならわしどおり船乗りとなった。今はマサチューセッツ州議会所属の沿岸航路定期船アシーナ号の船長をしている。そこに“ジェンキンズの耳の戦争”という奇妙な名前の戦争が勃発した。乗組員はそのままに、アシーナ号はイギリス海軍の購入するところとなり、マナリングは正規のイギリス海軍将校となった。アシーナ号はただちにジャマイカ島南岸の、カリブ海のイギリス海軍の基地ポート・ロイアルに向かった。1739年10月のことである。泊地にはすでに戦列艦が勢揃いしていたル
ただひとつ、ずっとわかっていることは、この恋が淋しさに支えられているということだけだ。この光るように孤独な闇の中に2人でひっそりいることの、じんとしびれるような心地から立ち上がれずにいるのだ(「白河夜船」)。あの時、夜はうんと光っていた。永遠のように長く思えた。いつもいたずらな感じに目を光らせていた兄の向こうには、何か、はるかな景色が見えた(「夜と夜の旅人」)。また朝になってゼロになるまで、無限に映るこの夜景のにじむ感じがこんなにも美しいのを楽しんでいることができるなら、人の胸に必ずあるどうしようもない心のこりはその色どりにすぎなくても、全然構わない気がした(「ある体験」)。
外国で殺した男の形見として持ち帰った1本の手に復讐される話(「手」)、雪深い山小屋に一冬閉じこめられ、遂に発狂してしまう男(「山の宿」)、眠っている間に無意識のうちにテーブルの上の水を飲んだりする一種の「人格遊離〈ドッペルゲンガー〉」をテーマにした「オルラ」など、11篇の怪奇短篇を厳選して新訳。
地球の温暖化によって気候が大きく変動し、世界の農業生産に大きな影響が生じる。これを重く見た米ソは火山を人工的に噴火させて気温の低下を図る。しかし、海底地震が誘発して南極大陸の巨大な氷棚が崩壊。世界の各地を襲う大波は、次々といくつもの国々を呑みこんでゆく。作者が地球滅亡への悲劇を、鋭く描く巨大フィクション長編大作。
少年アモンは、竜を追っていた。狩竜の一族の乱獲を恐れ、大樹ヴァルハラに群れているはずの竜が、何故?竜は、アモンの見いてる前で、近くの森へと降り立った。追うアモン。そこでは、ヴィジルと名乗る少女との出会いが待っていた。それが、すべての始まりだったのだ-。生きながら石と化す竜。野を駆け、街を喰らい、広がり続ける砂漠・大喰らい。砂人と組み、神となることを夢見る男たち。そして、ヴィジルの正体は…?