1991年発売
うらぶれた場末の遊園地、「下高井戸オリンピック遊戯場」は双子の天才、藤島宙一・宙二兄弟の卓越した経営手腕により急成長を遂げ、「ゼウスガーデン」と名を変えて、ありとあらゆる欲望を吸収した巨大な快楽の王国となってゆく。果てなき人間の欲望と快楽の狂走を20世紀末から21世紀までの百年という壮大なスケールで描く快作長篇。
気位ばかり高い俗物貴族を皮肉たっぷりに描いた「陣中の邂逅」、酒で身をもちくずす天才音楽家への共感のまなざしに満ちた「アリベルト」、ヨーロッパ旅行中に目撃した死刑執行など西欧文明への批判をこめた「リュツェルン」ほか、「三つの死」「ポリクーシカ」の計5篇を厳選。文庫本初収録。
父とその年若い再婚相手とともに、幼い日々を過ごしたインドのバルラムにやってきた青年ルパート。若くして亡くなった母の墓を訪れた彼は、そこで意外な事実を発見する。凍りついた過去の記憶がゆるやかに融けだす、ミステリー仕立てのサイコドラマ。
失踪した姉・麻弓を探すべく、おぞましき男たちの肉欲の餌食となる霞美。二十二歳の麻弓にひけをとらない、早熟な処女の肉体に、嗜虐鬼たちは情け容赦なく魔手をのばす。初めてのフェラチオ奉仕、緊縛、ストリップ…。姉を助けたいため、勇を鼓して姉と同じ軌跡を辿るうち、霞美は意外な真実を発見する。マゾ…そう、自分にも姉と同じMの血が流れていることを。そして、ついに尊敬する姉と再会した時、霞美はかつての清純な女高生ではなかった…。
日本中の男が憧れている、知性と教養と気品を兼ねそなえた、美人キャスターの果肉を貫きながら、海藤はたおやかな乳房にむしゃぶりついた。屈辱に震える裸身が、嬲られ、突かれ、抉られてのけぞる。愛らしい目が涙ではなく潤みはじめた時、ひと美は被虐の悦びに目覚め、男の“隷獣”へと化身した。
オスマン少年はギニアの大自然の中で元気に育ちました。厳格な父、やさしい3人の母、21人の兄弟姉妹、サッカー・チームの仲間たち、初恋の人、先生など大勢の人々に囲まれて。しかし、やがて彼を待ち受けていたのは、父と兄の死、そして、サッカーの試合中の骨折による“右足不随”という、あまりにも残酷な宣告でした…。オスマン・サンコン初の私小説。
婦人科医と名乗る男のさそいに乗ったOLと女子大生の美人姉妹は、男の罠に嵌まり、検診台の上で2人重ねて犯される-。あまりに異常な性の体験に二人の女は、いやらしい検診台の上で性の歓びに悶え狂ってしまう。一度体験した死ぬほどの性感は、清純な姉妹を性に乱れる二匹の牡獣に変貌させていく。
信長死せり!報せは異常の迅さで秀吉の許へ届く。如何にして…?歴史の影に添って生きた忍びの者たち。とりわけ伊賀の、とりわけ二人の異能の者だけが駆使できた思念伝達(テレパシー)。驚くべきクライマックスは果して影の怨念を果したのか?柳俊太郎会心の遺作。
武田、松永、三好が裏切り、盟友家康も服した。伊勢に脱出した信長が、そこで企らんだことは?戦国時代の海上砲撃戦を、信長の側近、イタリア人技術者の視点で描いた異色長編。
太平洋戦争により崩れゆくサキ一家の変転の歳月と多くの庶民の、生きて死に逝く、“生死一如”の世界。かつての青春放浪の地、山形県庄内平野を舞台に人情味ある土地言葉を駆使しつつ、雄渾に物語る。生涯を賭けて深めた独自の仏教・東洋思想の視座から日本の風土と宗教を余すところなく描き尽した著者畢生の長篇大河小説。野間文芸賞受賞。
初体験の感傷的な記憶、書いても書いても売れなかった時代に飲んだ酒の味、殺されるのを覚悟した学生運動の日日…。売れっ子作家としてTVで顔も知られるようになって、問い続ける青春の意味。友情、恋愛、家族のいったい何が変わり、どこへ行こうとしているのか?走り続ける作家のハードボイルド連作。
上野発の急行「妙高」に乗りこんだ奇妙な男女。彼らに向けてシャッターをきったカメラマンは善光寺の戒壇めぐりの回廊で襲われ、フィルムを抜きとられた。一方、終点に着いた列車からは女性の絞殺体が発見された。一連の事件の背景には新興宗教団体の不気味な影が…。表題作ほか十津川警部名場面3篇。
長篇小説の国フランスでもいま短篇小説が注目されつつある。作家たちは「フィクション芸術のエッセンス」とよばれるにふさわしい表現を目ざして芸を競い、おのれのエスプリを証明する場として短篇を書くのだ。本書所収のリラダン、アポリネール、デュラスら、世紀末から現代にいたる作家たちの技の競演。