2004年発売
義経は華やかに歴史に登場する。木曽義仲を京から駆逐し、続いて平家を相手に転戦し、一ノ谷で、屋島で、壇ノ浦で潰滅させる…その得意の絶頂期に、既に破滅が忍びよっていた。彼は軍事的には天才であったが、あわれなほど政治感覚がないため、鎌倉幕府の運営に苦慮する頼朝にとって毒物以外の何物でもなくなっていた。
華道界の連続殺人 浅見光彦は京都へ! 国際生花シンポジウム開催中の京都で、雑誌記者が殺された。仕事を引き継いだ浅見光彦だが、目の前で第2の殺人が。500年の伝統を持つ華道家元の封印された秘密とは。 15歳の娘・奈緒をめぐる後継争い、異端の天才華道家との確執も絡む華麗なる連続殺人に、浅見は挑む。記念すべき傑作長篇。第100作!
堀江敏幸の文章は、いろっぽいのだ。--川上弘美(「解説」より) 芥川賞受賞作 「なんとなく」という感覚に支えられた違和と理解。そんな人とのつながりはあるのだろうか。 フランス滞在中、旧友ヤンを田舎に訪ねた私が出会ったのは、友につらなるユダヤ人の歴史と経験、そして家主の女性と目の見えない幼い息子だった。 芥川賞受賞の表題作をはじめ、人生の真実を静かに照らしだす作品集。 ヤンはそこでふいに立ち上がってレンジのほうへいき、やかんを火にかけ、そのままなにも言わず2階にあがって、大きな写真立てを持って下りてきた。私にそれを差し出し、もういちどレンジに戻って火を調節しながら、珈琲か紅茶かと訊いてくる。(「熊の敷石」より)
報道番組『ナイン・トゥ・テン』に売春の元締めとして登場した女子高生が全裸で首を吊った。恋人を番組に殺されたと訴える青年八尋樹一郎の姿は、ライバル局の視聴率を跳ね上げた。メディアが生んだ一人のカリスマ。その邪悪な正体に気づいたのは、砦を追われたテレビマン達だった。『破線のマリス』を超える衝撃。
「悪夢を見るなら今のうちだよ」と誰かがおれの耳元でささやいたー。「悪魔の館」と呼ばれる家に入り浸るジャンキーたち。アルコールをはじめ、睡眠薬、咳止めシロップなどの中毒者たちが引きおこす悲喜劇を濃密に描いた衝撃作。そして、今夜も言葉のイメージが怒涛のように、混濁した脳裡に押し寄せてくる。
名探偵ポアロが出会った美女ニックは、古びた邸の所有者であった。彼女は「三度も命を狙われた」ことを告白するが、まさにその最中、ポアロの目の前で彼女の帽子が撃ち抜かれた!ポアロは真相を探るべく邸に赴くが、手がかりはまったくつかめない。不安が支配する中、邸でパーティが催されることになるが…。
一時間で一億円の大博打。映像ディレクター小峰が誘われたのは、池袋最大のカジノ売上金強奪の狂言強盗。ところが、その金を横取りされた。どん底から這い上がる男たち…。逆転の確率は二分の一。赤か黒。人生の全てをその一瞬に賭ける。
ゴールデンウィーク間近の京都の旅館で、ギャンブル好きの中年女性が殺された!殺害現場のふすまには墨字で大きく「陰陽」の文字が書かれていた。さらに彼女の博打仲間の三人のうちの一人が東京の自宅で同じ凶器らしきもので殺され、寝室の壁にはまたもや「陰陽」の文字がー。十津川はその寝室にあった写真パネルに注目する。そこにはラスベガスで笑う博打仲間四人が写っていた。犯人はこの四人に恨みを抱いている、と推理した十津川は、捜査を進めるうちに、鎌倉・流鏑馬神事と四人の関連に気づく。やがて浮かびあがる容疑者。しかし彼には鉄壁のアリバイがあった!全国の祭りを舞台にして十津川が大活躍する「十津川警部・祭りシリーズ」待望の第4弾。
アイルランド、そしてダブリンに生涯こだわり続けたジョイス(一八八二ー一九四一)。「細心卑小な文体」を用いて、閉塞的なダブリンの市民階層の麻痺的な生態を描いた十五篇。『ユリシーズ』等につながる、ジョイス文学の展開の端緒をなす初期短篇集。
あるもンしかねエんだ。進歩も進化も関係ねエのよ。エレベーターはなくても階段はあった。階段があっても梯子はあった。それもなければ二階屋がねエよ。そう言うことだ、わかるか?人類の進歩じゃアねエのさ。飛行船ってのがいっとき流行ったなァ。空を飛んだらどうだッて言うんだ。飛ばなくたッて人間は生きていける。それがあるのはどうしてだ。理由なんてねエよ。ただあるのさ。なくていいものでもあるからあるんだ。だから大事なのは、それをだれが造っただとか人間の業だ叡智だかが素晴らしいとか、そんなことじゃアねエ。そこにあるそれはなんなのか、ッてことだ。ないものをあるように見せかけるのは馬鹿げてやがる。だがあるものをねエッていうのはもっと馬鹿げてる。わかるか?(本文より)。超新星登場!驚愕仰天のデビュー作。
組織再編の大波に揉まれながらも、職務をまっとうし、道半ばで斃れた銀行員。彼を冷たく使い捨て、労災認定を渋る役員たち。“戦死”した者の誇りを守るため、経済界の一匹狼・勇次が立ち上がる!(「名誉ある死」)。娘が自殺した背景を追及する表題作、中小企業の復活を描く「家業再興」等、会心のハードボイルド経済小説集。
「ホームズはなぜ、切り裂きジャックについてまったく言及していないのか?」-ホームズ物語の中でも最大級の疑問に、ひとつの解釈を与えたホームズ・パロディ界の名著、待望の邦訳。英推理作家協会賞を受賞したイギリスを代表する現役人気作家が、ホームズ研究者や批評家の間に強烈な反応を引き起こした問題作。