2021年4月発売
海と山に囲まれた餅湯温泉。団体旅行客で賑わっていたかつての面影はとうにない。のどかでさびれた町に暮らす高校2年生の怜は、複雑な家庭の事情、迫りくる進路選択、自由奔放な友人たちに振りまわされ、悩み多き日々を送っている。そんななか、餅湯博物館から縄文式土器が盗まれたとのニュースが…。モヤモヤした日常を吹き飛ばす青春群像小説!
「私、あなたの娘です」 四十歳独身の大守良行の家に、突然中学生の少女・都築日向実が訪ねてきた。 良行は十五年前、かつての恋人・都築街子に頼まれ、精子提供をした事を思い出す。 交通事故でこの世を去った街子の遺言によって、良行は日向実と暮らすことになるが……。 親子とは何か、家族とは何かを問いかける長編家族小説。
幽霊の世話をする人々、女性だけの村、姿が透明になる犬……。 とても不思議なのに、どこか懐かしい光景。 日本のどこかに、こんな場所がまだあるのかも、と思えてくる。 豊かな発想から物語を紡ぎ出す、新しい語り部の誕生だ! 松永美穂(翻訳家/早稲田大教授) 「ことばと」掲載の表題作を含む4編を収録。 <あらすじ> 大学の友人サクマの帰省に同行したぼくは、そこで幽霊と暮らす奇妙な村人たちと出会う…「幽霊番」。女性だけの村で育った卯月と、「騙されちゃ、だめよ」と云い、突然いなくなってしまったハルカ。サナさんの秘密の儀式を偶然目撃した卯月は、自分の知らない世界があることに気づいてしまう…「レースの村」。夫との関係はいつも少しずれていると感じる杏子はバイト先の店長とのふとしたはずみで起こった出来事により…「空まわりの観覧車」。透明になった犬の夢二、病気がちで寝たきりの姉綾子とともに過ごす日々はあの雪の日のように儚い…「透明になった犬の話」。綻びのできたレースのように繊細で不可思議な世界を紡ぎだす四編の物語。 幽霊番 レースの村 空まわりの観覧車 透明になった犬の話
忠死よりも全生を大切にした悲姫の物語。 時は江戸時代、元禄年間。 広島三次藩から播磨赤穂藩の浅野内匠頭に輿入れした阿久利は呆然としていた。 内匠頭が江戸城中松の廊下で、勅使饗応の指南役である高家筆頭・吉良上野介へ刃傷に及び、切腹となったのだ。 国を失った藩士たちは、生き残った吉良にはお咎めなしという将軍徳川綱吉の裁きに抗議すべく、籠城討ち死に、もしくは全員切腹と、真っ二つに割れていた。 さらに、主君の無念を晴らすべく、堀部安兵衛を筆頭に、仇討ちを志す者たちも現れる。 一方、夫の遺言もあって、仇討ちも籠城も、切腹も望んでいない阿久利(瑤泉院)は、忠死を覚悟する浪士たちを思い止まらせようと、綱吉の生母桂昌院へ御家再興の嘆願をはじめる。 国家老だった大石内蔵助も、赤穂遠林寺の僧祐海を通じて、周旋を図る。 だが、阿久利と内蔵助の努力も虚しく、御家再興はならず、吉良邸に討ち入る浪士たち。 吉良の首級を挙げた「義士」たちの助命を乞うべく、阿久利は再び力を尽くすが……。 広島県三次市出身の大人気時代小説作家が筆を揮う、新しい「忠臣蔵」! 【編集担当からのおすすめ情報】 話題沸騰のシリーズ「浪人若さま新見左近」「公家武者信平」「春風同心十手日記」で、盤石の人気を誇る時代小説作家が描く、広島三次藩の「忠臣蔵」です!
大阪で独りカレー屋を営む三宅紘二郎のもとに、絵葉書が届いた。そこに書かれた漢詩が、封じ込めていた記憶を呼び覚ます。愛した女、その娘。五十年前兄は彼女たちを惨殺したー老境を迎え全て忘れようとしていたが、もう止められない。半世紀、抑えていた殺意が紘二郎の背中を押す。兄のいる大分に向かう途中、ひょんなことから、金髪の若者・リュウを交代運転手として雇うことに。祖父と孫ほど年の違う二人の、不思議な旅が始まった。
緊急出版!「神様のカルテ」著者、最新作 「この戦、負けますね」 敷島寛治は、コロナ診療の最前線に立つ信濃山病院の内科医である。一年近くコロナ診療を続けてきたが、令和二年年末から目に見えて感染者が増え始め、酸素化の悪い患者が数多く出てきている。医療従事者たちは、この一年、誰もまともに休みを取れていない。世間では「医療崩壊」寸前と言われているが、現場の印象は「医療壊滅」だ。ベッド数の満床が続き、一般患者の診療にも支障を来すなか、病院は、異様な雰囲気に包まれていた。 「対応が困難だから、患者を断りますか? 病棟が満床だから拒絶すべきですか? 残念ながら、現時点では当院以外に、コロナ患者を受け入れる準備が整っている病院はありません。筑摩野中央を除けば、この一帯にあるすべての病院が、コロナ患者と聞いただけで当院に送り込んでいるのが現実です。ここは、いくらでも代わりの病院がある大都市とは違うのです。当院が拒否すれば、患者に行き場はありません。それでも我々は拒否すべきだと思うのですか?」--本文より 【編集担当からのおすすめ情報】 現役医師としてコロナ禍の最前線に立つ著者が 自らの経験をもとにして克明に綴ったドキュメント小説。 2009年に第十回小学館文庫小説賞を「神様のカルテ」で受賞し、シリーズ(既刊5冊で累計337万部)を書き継いでいる夏川草介氏は、現役の内科医でもあります。コロナ禍の最前線で多くの患者さんと向き合う日々が、一年以上続いています。本書は、著者が2020年末から21年2月にかけて経験したことを克明に綴った、現代版『ペスト』ともいえる記録小説です。
彼が焼いたのは、何か。 若き学僧は、破滅を夢見て金閣に火をつけたーー。実際に起きた事件に材を取り、三島が自身の戦中体験を重ねあわせて書き上げた『金閣寺』は、まぎれもなく日本近代文学の最高峰。なぜ金閣でなければならないのか。美を破壊する行為が意味するものとは。作家・平野啓一郎が、三島ならではの文学表現を味わいながら、大胆かつ精緻に作品の深層へと迫る。
探偵小説黄金時代に入り、さらに円熟味を増すソーンダイク博士探偵譚。第3巻収録の短篇集『パズル・ロック』『魔法の小箱』は毒殺、暗号、アリバイ、幽霊出現など多彩なテーマと独創的なトリックの宝庫! ジョン・ソーンダイク博士は、20世紀初めに数多登場したシャーロック・ホームズのライヴァルたちの中でも最も人気を博した名探偵である。当時最新の科学知識を犯罪捜査に導入、顕微鏡をはじめ様々な実験器具を用いて証拠を調べ、事件の真相をあばいていく法医学者ソーンダイクの活躍は読者の喝采を浴びた。また短篇集『歌う骨』では、最初に犯人の視点から犯行を描き、次に探偵が手がかりを収集して謎を論理的に解き明かす過程を描く「倒叙ミステリ」形式を発明した。真相解明の推理のロジックに重きを置いた作風は、現在も高く評価されている。本全集は、ソーンダイク博士シリーズの中短篇42作を全3巻に集成、初出誌から挿絵や図版を収録し、完全新訳で贈る、探偵小説ファン待望の決定版全集である。 《パズル・ロック》 パズル・ロック 緑のチェックのジャケット ネブカドネツァル王の印章 フィリス・アネズリーの危難 疫病をまき散らす者 バーナビー事件 砂丘の謎 バーリング・コートの幽霊 謎の訪問者 《魔法の小箱》 魔法の小箱 箱の中身 巧妙な隠れみの 法廷の博物学者 ポンティング氏のアリバイ パンドラの箱 巨獣の手がかり 急を救う病理学者 瓦礫で集めた情報 付録 キングズ・ベンチ・ウォーク五A番地(パーシヴァル・メイスン・ストーン) 解説 渕上痩平
『宝島』『ジキル博士とハイド氏』で名高い、英国の文豪スティーヴンソンの知られざる傑作小説。 恐怖の爆弾テロリストたちの暗躍を物語の経糸にして、黄昏の世紀末ロンドン、合衆国の荒野、はたまたカリブ海の小島を舞台に繰り広げられる、怪奇で波瀾万丈な奇談の数々。ドイルやマッケンにも大きな影響を与えた連作小説、本邦初訳なる!!
日本がドルショック、オイルショックの荒波を乗り越え、本物の経済大国への道を驀進し始めた頃。吉野洋行は20代半ばにして、テレビCMディレクターとして一本立ちした。そして、もうワンランク上の、日本のトップメジャーで勝負したいと考える。だが、そこは限られたエリートが支配する世界だった。テレビCMが世の中を大きく動かしていた時代。アイデアと度胸と空気の読めなさ(?)を武器に、果たして洋行はどこまで駆け上がることができるのかー。テレビCM界のレジェンドが、夢多き冒険の時代を描いた大河小説。いよいよ第三部へ!
松本孝雄は消化器外科医である。松本家の愛犬ナサは悪性リンパ腫を患い、抗癌剤治療を行ったが亡くなった。松本は鼠径部のリンパ節腫脹に気付いた。精査の結果、ナサと同じ悪性リンパ腫と診断され、抗癌剤治療を開始した。松本の休職中、代行として桐生が赴任した。松本は生命の危機に見舞われ、桐生の思わぬ過去を知ることとなる。
望雲の竜、無辺の煙霧を切り裂いて、Kawasakiゼファーが疾走する。 映画化が決定するも、台本の検閲に遭い、未だにクランクインできない問題作! いま、中国で最も注目されるベストセラー作家、韓寒の第6作!! 急速な経済発展を遂げる中国、大都市上海の近郊にある町、亭林鎮にもその波が押し寄せるなか、負の影響たる環境汚染も広がりつつあった。ガールフレンドを愛車のバイクに同乗させて走り回っていた左小竜は、町が経済文化振興の一環で開催することになった文化芸術コンクールに、別の意中の人とともに合唱団を組み参加しようと企てる。
韓国最大の企業グループ「現代」を一代にして築き上げた鄭周永氏は、彼がいなかったならば韓国の戦後の経済発展は、数十年は遅れていただろう、とさえ言われる企業人である。絶えざる努力の中から、斬新なアイデアを次々と生み出し、絶体絶命の危機を必ず好機へと変えてきた人物であるが、それだけでなく、「牛1001頭」を率いての北朝鮮訪問、金剛山観光開発など、祖国、同胞への惜しみない愛をそそいだ偉人である。 激動の人生とその哲学を数々の写真と併せて綴った自叙伝。 韓国のベストセラー『この地に生まれて』の邦訳として2000年に出版された『危機こそ好機なり』の改訂版。
教師のリアは困窮する母のため、祖母の遺産を必要としていた。相続の条件は結婚だが、婚約者も遺産目的だったことがわかり、リアは婚約を解消。失意の彼女を慰めたのは、マルコだった。元婚約者の異父兄で、いつも横柄なイタリア富豪が、なぜ…?妻を亡くしたばかりの彼は幼い息子の家庭教師を探しており、リアに、住み込みで息子の面倒を見てほしいというのだ。しかも、彼と結婚すればリアも遺産を相続でき、一石二鳥だと。期限つきの便宜結婚だとしても、リアにはひとつ問題があった。それは、マルコが危険なまでにハンサムで魅力的なこと…。
ミアはイタリア富豪でボスのロッコと公私ともに親密な間柄で、幸せの絶頂にあった。だが、待ち望んだプロポーズの直後、事態は急変する。機密を漏らした疑いで会社は解雇、さらにロッコは婚約も破棄し、ミアを追い払ったのだ。イギリスへ逃れた彼女は失意の底で妊娠に気づき、動揺した。せめてロッコに会って直接伝えられたら。そんな願いも空しく、近づくことも禁じられた彼女は、一人で赤ん坊を産み落とした。3年後、慎ましく暮らすミア親子の前に予想外の男性が現れる。ロッコ!変わらぬ青い瞳に射貫かれ、心は千々に乱れて…。
ただひとたびの契りに、 乙女は、王家の血を引く子を宿した。 カシアは大学の研究のため訪れた砂漠で砂嵐に遭い、 間一髪のところを、馬に乗った逞しい男性に救われる。 テントにたどり着き、彼の顔をよく見たカシアは驚愕した。 なんてこと……。この方は、国王の弟ーーレイフだわ! プレイボーイ王子と名高いレイフの男性的魅力は圧倒的で、 カシアは導かれるまま、彼と共に情熱の高みに舞い上がった。 だが甘い名残にたゆたう彼女に、レイフが衝撃の宣告をする。 王家の者が無垢な乙女と枕を交わしたならば、 二人は結婚しなければならないーーそう掟に定められている、と。 大好評を博した『黄金の宮殿で秘密の夜を』の関連作です。愛ではなく掟に従う結婚なんてとカシアは抗いますが、おなかには既に彼の子が……。一人で産み育てることを決意しながらも、情熱を教えてくれた男性を忘れられないヒロインの姿が切ない名作です。
ギリシア富豪の甘く技巧的なキスーー つい演技だと忘れ、溺れそうになる。 モデルのレクシーは、深刻な悩みを抱えていた。 根も葉もない嘘が書かれた暴露本を出すと脅されているのだ。 レクシーは兄の助言に従い、偽の婚約者を仕立てることにした。 世間の目を、華やかなラブストーリーに向けさせるのだ。 だが、兄に引き合わされた実業家のゲオルグ・ニコラオスは、 自信たっぷりで強引で、レクシーの最も苦手なタイプだった。 あの魅惑的な瞳とセクシーな唇に抗える女性はいないだろう。 彼を相手に、情熱的な恋人の役を演じるなんて……。 激しい戸惑いと裏腹に、レクシーの背筋は甘く震えた。 トップ作家として長いキャリアを誇るH・ビアンチンの名作です。世慣れたギリシア富豪のキスや抱擁に、演技だとわかっていても全身が喜びに震えてしまい……。
結婚も恋愛も、家族のために諦めた。 なのに、予期せず新しい命を授かり……。 病弱な母と車椅子暮らしの妹のため、医師になったエルスぺス。 あるとき上司の結婚式に列席した彼女は、浮かない顔をしていた。 エルスぺスの家族に理解のない冷たい婚約者と半年前に別れ、 いまだつらい思いを抱えている彼女に、見知らぬ男性が声をかけてきた。 フレーザーと名乗った彼も、親戚づき合いで仕方なくここにいるという。 意気投合した二人はいつしか式場を離れ、めくるめく夜をともにした。 けれども、婚約の破談後にもう恋愛は無理だと悟ったエルスぺスは、 翌朝ため息とともに彼のベッドからそっと脱け出したのだった。 一瞬、人生を変えられればいいのに……と思った自分を責めながら。 6週間後、彼女は妊娠検査薬を手に、バスルームに立ち尽くしていたーー 大富豪のフレーザーは貴族の家に生まれながら、不実な父のせいで、受け継ぐはずの称号も屋敷も捨てて母を連れて家を出た過去がありました。以来、愛を信じなくなった彼は、一夜の相手のエルスぺスから妊娠を告げられたとき、はたしてどう応えるのでしょうか?
身を引き裂かれる思いで別れた彼……。 偶然の再会は、新たな苦しみの始まりだった。 小児病院の看護師ルーシーは、5年前につらい別れを経験した。 病気がもとで、ほぼ子を望めないと医師に言われた彼女は、 温かい家庭を築くことを何より望む最愛の恋人トムに、 泣く泣く別れを告げたのだーー別に好きな人ができたと、うそをついて。 そのトムが今、愛らしい息子を連れ、新しい医長として赴任してきた。 1年前に妻を亡くしたというトムの目には悲しみが浮かび、 3歳の息子と二人だけで生きていくつもりだと、彼は言い放った。 それでも、あの日と変わらず魅力的なトムと一緒に働くうち、 ルーシーは彼への気持ちが5年前と変わっていないことに気づき、 どうしようもなく胸を締めつけられるのだった……。 命の現場を舞台に綴られる感動的なロマンスで人気の作家、ジェニファー・テイラー。本作は、愛するトムのために、優しいうそをつくことで彼の夢を守ったルーシーの、感涙必至の切ない再会物語!