著者 : 椹野道流
銀杏村に冬がやってきた。ゴータが経営する料理店「にゃんこ亭」は、相変わらず試行錯誤を繰り返しながらも、地域に密着したお店を経営中。頼れる相棒は、パティシエのサトルと、愛くるしいおかっぱ頭に三角の耳とふさふさの尻尾を持った少女ー神さまの子、コギ。バレンタインデー、ひな祭り、そしてコギのお誕生日と、穏やかな日々が続くが…ハプニング発生!?人気の簡単レシピと一緒に、小さな幸せをお届け。
銀杏村で暮らしはじめたゴータの日々がゆるやかに流れていく。銀杏村ー不思議の村。妖しが人と共に生きている村。風に、雲に、雨に、闇に。銀の雨の降る水無月。苗代に早苗の翠映り、川原に蒼く蛍舞う。日々を重ねて文月、葉月。やがて亡くなった祖母の新盆がやってくる…。銀杏村で生きるゴータの、穏やかで、どこか懐かしい、不思議の日々、はじめての夏。
「あれ?もしかしてー琴平さん?」人気テーマパークに小一郎たちと遊びにきていた敏生は、人込みのなかで誰かに呼ばれ、振りかえって、目を丸くした。かつての事件で会った懐かしい顔ー当時は女子高生だった二人の女性の姿が、そこにあったからだ。その二人から持ちかけられた、ある相談事。「あるひとから預かってくれって頼まれたものがあるんです。でも、それが…」思わぬ事態が手繰り寄せられようとしていた。
「おまえの名は森ー罪」天本の脳裏に、あの男の言葉がよみがえる。行方不明になった河合。重傷を負った早川。龍村は負傷し、誰より愛しい敏生は枴された。そしてついに式神・小一郎までもがー。これはおまえの罪。知らなかった罪。知ろうとしなかった罪。あの男はそう言った。では、すべての事件はそのために起きたのだというのか。だが、いったい誰がこんなー?天本の前にいま、驚愕の真相が現れる…。
クリスマスイブ!特製ローストチキンの食卓をなごやかに囲んでいた天本と敏生に、新たな「依頼」が舞い込んできた。あるテーマパークで幽霊騒ぎが頻発しているので、浄化を行ってもらえないかという。そこは以前、天本が術者として半人前だったころ、関わったことがある場所だった。今、再び、敏生とともにその地を訪れることになった天本。だが、悪夢の迷宮は、まさにその扉を開こうとしていた…。
「…いた。あそこです」その声に、敏生も天本も龍村も目をあげ、そして息をのんだ。星も凍るような寒夜。静まりかえった裏庭に、じっと立ちつくして。やがて、つぶやいたのは、誰だったろうか。「…あれが…」彼らの目に等しく映っていたものーそれは、首のない大きな白い犬の姿だった…。最新刊、ネオ・オカルト・ノヴェル。
「すべては儀式だ。…おまえのための」そう言って、男は、微笑んだ。「可愛い伴侶を見つけたな。あれこそ…おまえにふさわしい。美しい生きものだ」戦慄が天本の背に走った。この男は、いったい、何をしようとしている。(…まさか…)難事件のなか、唐突に降ってわいた、とてつもない恐怖ー。それはー。急展開、ネオ・オカルト・ノヴェル。
監察医・龍村泰彦の誘いで、丹後半島の海辺に住む彼の祖母の家を共に訪れた天本と敏生は、そこで奇妙な事実を知る。龍村が六歳の少年だった頃、神隠しに遭った経験があるというのだ。だが、現在の龍村は、当時の記憶をほとんどなくしていた。やがて、奇怪な出来事が彼らを襲い、龍村の記憶が蘇りはじめる。記憶が完全に再生されたとき、果たして何が起こるのか。天本と敏生は、龍村を護ることができるのか。
「母さ…やめ…」振りほどこうともがく、まだ少年だった天本を、母は信じられないような力で押さえつけていた。「…消えて」細い指が、ぎりぎりと天本の首に食いこむ。「消えてしまいなさい、おまえなど…!」過去の悪夢を見はじめた天本のもとに、ベトナムから届けられた父の手紙。いま、失われた記憶の扉が、ゆっくりと開きはじめるー。
「え…えええええええええっ!」「ば、馬鹿なー」弥生三日の雛祭りー男所帯ながら、ちらし寿司などを愉しく食していた天本と敏生は、その夜、テレビのニュースに目をむいた。京都で、平安装束の謎の男が、刀で通行人を傷つけ、行方を晦ましたというのである。が、その男の顔はまぎれもなく、「たっ、龍村さん…!」-それが思いがけぬ事件の発端であった。
「できるだけ早く、帰ってきますね」-ひとりは、さびしいから。そう言って、微笑って父のもとに出かけていった敏生の、なつかしい、可憐な姿。-冷たい父だった、という。優しい言葉ひとつ、かえてもらえなかったという。けれど、死期が迫ったとき、彼は突然、息子に言って来たのだ。会いたいーと。(…何か、胸騒ぎがする…)天本の予感は、まさに的中しようとしていた。
天本と龍村の運命的な出会いのシーンが明かされる『石の蛤』学園祭の舞台で龍村が大活躍する、感動的な『人形の恋』修学旅行先の遊園地での不思議な幽霊との交流体験の『約束の地』三つのエピソードで、天本と龍村の高校時代が語られる!“奇談シリーズ”初の短編集をお楽しみください。
『蛇が来る。怖い!』押屋女子学園高等部の生徒が二人、謎の言葉を残して死んだ。二人に共通しているのは、こっくりさん遊びに熱中していたこと。調査に赴いた天本は、水田桐枝という生徒を見て驚いた。昔の恋人で悲惨な死をとげた霞波と生き写しなのだ。桐枝は事件と関係があるのか?そして敏生は天本の悲しい過去を知ることにー。
「あの…その絵、以前は女の人がいたんです。ええ、絵のなかの、その場所に…」天本も敏生も眼を疑った。その絵のなかには女の姿など何処にも見えなかったからだ。「いえ、確かにいたんです。でも、いなくなってしまったんです。姉が失踪した夜、ふと、その絵を見てみたら…」その姉はやがて水死体で発見された…。追儺師・天本と半精霊・敏生。行きずりの娘の語った、世にも奇怪な謎を追う。
「…教えてくれ。わたしは…誰だ」。恋しい人と瓜二つの男は、美しい眉を歪めてそう言った。「お前は、知っているのではないか。わたしが何者か…本当の名を、何といったのか…」。その、切れ長の目も。唇も。なにもかもがあの人と、寸毫も変わらないのに。あまりの切なさに少年の瞳から涙が落ちる。安部晴明は、果して天本なのか。違うのなら彼はどこに!?時空の悪戯によって引き裂かれたまま、決戦の時が訪れる!亡き恋人を想う、その心が悪か。罪か。百鬼妖魔を討ち破る!ネオ・オカルト・ノヴェル。
ー細い三日月の下、その男は橋のたもとに佇んでいた。夜風にふくらんだ長い袖。白皙(はくせき)の頬にこぼれかかる、つややかな髪ー。天本さん……!」(やっと会えた。やっと、僕を見つけてくれた)だが、敏生(としき)の喜びは束の間だった。男は敏生に手をさしのべることもせずに消えてしまった。あたかも雲隠れしてしまった月のごとくにー。追儺師(ついなし)・天本と半精霊・敏生。夢のなかの妖しを追って、たどりついた先とは……!?
「僕、たぶん、まだやれることがあるから」天本はぎょっとして、敏生の顔を見やった。敏生は、微笑していた。そら恐ろしいほどの水音の響く中、血と土とに汚れたその顔は、地底の闇の底で、優しく、柔らかな微光を放っているかのように見えた。「だから…生きて。天本さん」次の瞬間、少年の身体は怒濤の渦に消えた。追儺師・天本と半精霊・敏生。かつてない恐怖、そして最大の敵が二人を襲う。
天本の喉から、苦悶の声があがった。まがまがしいほど美しいーあの人の面影をうつした人形のやわらかな舌が、無抵抗の天本の唇を、ゆっくりと割っていく。(罠だ。…これは、妖しの仕掛けた…罠だ)だが、抗う力は、もはや残っていなかった。(すまない、敏生…)-それが、最後の正気の言葉であったか。追儺師・天本と半精霊・敏生。話題のコンビが百鬼を討つ!ネオ・オカルト・ノヴェル。
叩かれた左頬を押さえ、敏生は茫然と天本の顔を見つめた。手の下で、頬が火のように熱く疼いている。(天本さんが…僕のこと…ぶった…?)信じられなかった。けれどーけれど。「天本さんは…いらないんだ。…僕なんか、いらないんだっ!」「敏生っ!」追儺師・天本と半精霊・敏生。十月のイギリスで見た恐怖とは?ネオ・オカルト・ノヴェル。