キノの旅XI the Beautiful World(11)
関連ラノベ
そうー。この世界は美しく、そして輝いている。ボクの心を落ち着かせ、なごませてくれる。辛いことを忘れさせてくれる。それが、ボクの心がおかしくて、狂っていて、壊れていることの証明だとしても…。それでもボクは、そう思えることを幸せに思う。思える今を大切に思う。さあー。ボクはこれからもこれを見続けよう。ボク以外の世界中の人が、これを美しくないと吐き捨てても。そう思うことが、これ以上ないほどの間違いだとしても。ボクが、これを美しいと思うかぎり。人間キノと言葉を話す二輪車エルメスの旅の話。短編連作の形で綴られる、大人気新感覚ノベル第5弾。 2002/01/10 発売
よくない道だねえ、と走ってきたモトラドが言った。後輪の脇には箱が、上には大きな鞄と丸めた寝袋とコート。旅荷物をたくさん積んだモトラドだった。でもやっぱりこれは近道だよと、モトラドの運転手が言った。黒いジャケットを着て、帽子とゴーグルをした十代中頃の若い人間だった。腰を太いベルトで締めたジャケットの前合わせは、初夏の風が入るように大きく開けていた。その下に、白いシャツを着ていた。人間キノと言葉を話す二輪車エルメスの旅の話。短編連作の形で綴られる、大人気新感覚ノベル第6弾。 2002/08/10 発売
ーモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)の反対側で、運転手が草の上に座っていた。両足を前に出して、後ろに手をついて、そして空を見上げていた。春の暖かい太陽に、蒼い空を背景にいくつかの雲が流れていく。運転手は十代中頃で、短い黒髪に精悍な顔を持つ。黒いジャケットを着て、腰を太いベルトで締めていた。-人間キノとモトラドのエルメスは“動いている国”に出会い入国する。その“動いている国”が進む先には“道をふさいでいる国”があった(「迷惑な国」)。他全8話収録。短編連作の形で綴られる、新感覚ノベル第7弾。 2003/06/10 発売
「あー…」運転手が口を開いた。力のない声だった。「何さ?キノ」モトラドが聞いた。キノと呼ばれた運転手は、ポツリと「お腹すいたな」「だったら、止まって休む!空腹で倒れられたらー」モトラドの訴えを「はいはい。何回も聞いたよ、エルメス」キノは流す。エルメスと呼ばれたモトラドは「分かっててやってるんだから」呆れ声で答えた。「そもそも、あの国が滅んでいたのがいけない」カーブを抜けながら、キノが言った。-お腹をすかせたキノとエルメスが辿り着いた場所には、盆地の中央を埋め尽くすように、数百人の難民が集まっていた…(『愛のある話』)他、黒星紅白が描くイラストノベルも含め全8話収録。 2004/10/10 発売
そして、すぐに、キノとエルメスは大きな病院の前にさしかかった。玄関ドアの前に、数人の看護婦が見送りをするために並んでいた。さらに、一台の黒塗りの車が道に止まっていて、運転手がそのドアを開けるところだった。車の後ろにエルメスを止めて、キノはその光景を眺める。やがて、祝福の声に包まれて、病院から夫婦が現れた。若い二人は顔に笑顔を浮かべながら、夫の方は大きな鞄を、妻の方は、小さなバスケットをその手に抱いていた。夫婦はお世話になった看護婦達に何度もお礼を言って、幾人かと笑顔で抱き合った。(プロローグ「幸せの中で・b」)他、全16話収録。 2008/10/10 発売
キノとエルメスは、西に向かって走っていました。大地がほんどん岩なので、舗装道路並みに固いです。段差もなく、どこを走っても道になります。キノは快適にエルメスを走らせ、そして次に進路を塞ぐサボテンをゆったりと避けながら、「もともとは、師匠から聞いた話なんだ」「じゃあ、結構前の話だね」エルメスが言って、キノは頷きました。「だね。師匠はこう言っていたー“とてもとても美しい廃墟があった。岩山の麓に石で作られた国があった、泉から引かれた綺麗な水がまだ水路を流れていた。今にでも何万人もが住めそうなほど綺麗な町だった”って」(第三話「過去のある国」より)他全10話収録。 2011/10/10 発売
人間キノと言葉を話す二輪車エルメスの旅の物語。全10話収録。 2012/10/10 発売
エルメスが強奪されたー。『新しいあなたになりませんか?新しいあなたになれます!私達と!-“人生の真実を見つけるホウデンの会”』。エルメスを奪った者たちは、怪しげなテレビCMを放送する宗教団体のメンバーだった。しかし、その国には彼らのような宗教団体を手厚く保護する法律があって…(「神のいない国」)。その他、2013年4月より新聞紙上でウィークリー連載された話題の小説&イラストも完全収録!書き下ろし8話を含む全18話という、シリーズ史上最大のボリュームでお贈りする「キノの旅」17巻。 2013/10/10 発売
そこには、一人の人間が倒れていた。あまりに汚れた服を着ているので、手足や頭の形がなければ、野生動物にすら見えた。体格は大人。時々、呻くように小さく動くので、まだどうにか生きていることが分かった。「行き倒れか。荷物がないのが不思議だな…」キノが呟いた。「あったら、サクッと奪えたのにね」「人聞きの悪い。ボクは生きている人間から荷物は奪わないよ」「つまり死んでいたら容赦しない!ってことだね、キノ」「ま、まあ…、すでに亡くなっていたら、残り物の有効利用は、させてもらうかもしれないけど」「モノは言い様だね。で、あの人はどうする?助ける?」(「復讐の国」)他全13話収録。 2014/10/10 発売
どんなに願っても会えない。私は私に会えない。人間キノと言葉を話す二輪車エルメスの旅の物語。 2015/10/10 発売
「旅人さん!マニッシュな雰囲気がステキだせ!だから単刀直入に言うぜ!オレの彼女にならないか?」キノは、一人の男にそう話しかけられた。ガラガラだった店で生魚の切り身を美味しく平らげて、港に面した広い歩道にとめていたエルメスに近づいた時だった。「はい?」口調は若かったが、実際には四十歳は越えているだろう男だった。身綺麗で、暑い中、小洒落たジャケットを着ている。不自然なニコニコ笑顔で、「おっと、怒った顔も綺麗だぜ?」「いえ、呆れています」「だろう?呆れた顔も美しいぜ?」(「拘らない国」)他全11話収録。 2016/10/08 発売
ずしりと重い音と共に城門が開ききって、キノがエルメスを押していくと、彼等が喋っているのが分かった。その声が聞こえてきた。『情報通りです!旅人さんが!たった今入国しました!若いモトラド乗りで、モトラドは銀色タンクの渋い一台!革鞄には年季が窺えて、旅の過酷さを如実に物語っている!』彼等は喋っていた。キノとエルメスにも聞こえるくらいハッキリとした大声で。しかし、それは隣にいる人間に向けてのではなく、全員が視線をキノ達に向けたままでー。(「有名になれる国」)他全13話収録。 2017/10/07 発売
キノとエルメスは誰もいない街を走りーそして、国の南側で、一つのドームを見つけた。「よし、行ってみよう」そのドームへ続く道へとエルメスを傾けた。薄暗いドームの中には、平らな石の床が広がっていた。その上に、無造作に散らばっているのは、多種多様な白い骨。薄暗闇の中で、骨はまるで、ちりばめた宝石のように光っていた。「なるほど…」「一つ謎が解けたね」キノは、滅多に点灯させないエルメスのヘッドライトをつけた。ドームの床を、真っ直ぐな灯りが走った。「いくよ」「あいよ」(「餌の国」)他全11話収録。 2019/07/10 発売
「あの箱ですか?私達の永遠の命を守ってくれるものですよ!」国に入る前に、キノとエルメスは答えをもらいました。答えが全然理解できなかったので、キノが訊ねました。背広を着た入国審査官は、とても若い男でした。まだ二十歳前に見えました。彼は、それはそれは嬉しそうに、手続きそっちのけで説明してくれます。「あそこには、たくさんの国民達が眠っています!」「眠っている…?」キノが首を傾げました。「つまりまさかー」エルメスの言葉を、「墓地じゃないですよ!」入国審査官は笑顔で遮りました。「みんな生きています!ただー」キノが反対側に首を傾げました。 2020/11/10 発売