僕といた夏を、君が忘れないように。(1)
僕の世界はニセモノだった。あの夏、どこまでも蒼い島で、君を描くまではー。美大受験をひかえ、沖縄の志嘉良島へと旅に出た僕。どこか感情が抜け落ちた絵しか描けない、そんな自分の殻を破るための創作旅行だった。「私、伊是名風乃!君は?」月夜を見上げて歌う君と出会い、どうしようもなく好きだと気付いたとき、僕は風乃を待つ悲しい運命を知った。どうか僕といた夏を君が忘れないように、君がくれたはじめての夏を、このキャンパスに描こう。日本最大級の新人賞、第27回電撃小説大賞“メディアワークス文庫賞”受賞。