2017年5月発売
ひのきの棒。それは最低最弱な武器の固有名詞である。この物語はそんなひのきの棒をこよなく愛し、これが史上最強の武器であると豪語する武器商人と、彼のもとに集まる迷える冒険者達の愛と感動の秘話である。武器商人の名は伊藤。彼はほんの些細な仕草から相手の本質を見抜く目を持っている。話は一流の戦士を目指す赤毛の少女の視点から始まる。彼女の名はヴァルナ。片田舎の農村で生まれ育った少女ヴァルナは、立派な戦士になることを夢見て、世界最大の交易都市アイゼンハードに旅立つ。だが、少女は夢破れ、路上生活を強いられるほどに落ちぶれてしまう。行き場を失ったヴァルナが向かった先は、伊藤の武器屋だったー。
戦争に勝利したガングレイブ傭兵団。戦勝祝いの宴の席で料理の実力を示したシュリは、ニュービスト王家の姫、テビス・ニュービストから手元に置きたいと誘われる。誘いを断ったシュリたちは、次の町へ向かう準備を始めるが、なぜか必要な物を買いそろえることができず、店では門前払いにされる事態まで起こる。ガングレイブは傭兵団の内部に裏切り者がいることを察知し、行動を開始する。シュリの尾行と護衛をするオルトロスが見たのは、信じたくない現実だった。裏切り者を特定し、動き出すガングレイブたちだが、オルトロスの心は晴れない。シュリはそんなオルトロスを励ますために、料理を振る舞うのだがー。
人里離れた山奥に一人暮らすアルベルタ。旅に出た父親の帰りを待ちながら修行の日々を過ごすが、待てど暮らせど父親は戻らなかった。そしてアルベルタが15歳を迎える直前、父親の死を知る。『僕は父ちゃんみたいな冒険者になる!』-その決意を胸にアルベルタは山奥での生活に終止符を打ち、冒険者になるため世界に飛び出す。世界を旅し、たくさんの仲間、友達を作ることを目標にするのだった。しかしアルベルタは知らなかった。ずっと山奥で修行をしていたから。己が規格外の強さであることを。期待に胸膨らませ街へと向かう途中、ハーフエルフの少女と出会い、運命が加速していくのだが…。