ヴィクティム・イン・ペイン
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一発目の音が鳴った瞬間からニューヨーク・ハードコア界の“ボス”の貫禄を、さらりと見せつけられて参った。ストイックなアティテュードと、研ぎすまされたバンド・サウンドに裏打ちされた、まさにリアル・ハードコアがここには封じ込められている。やはり凄い。 2007/12/26 発売
ニューヨーク・ハードコアのパイオニアにしてクロスオーバー界の伝説としてもその名を轟かせるアグノスティック・フロント。12作目となる本作は、クロスオーバーの傑作『Cause for Alarm』を露骨に彷彿させるアートワークが示すとおり、パンク、ハードコア、スラッシュすべてを飲み込んだ彼らのキャリアを総括する力作だ。 ニューヨークのハードコア・シーンを代表するバンド、アグノスティック・フロント。ニューヨークをハードコアの聖地にしたパイオニアである彼らだが、エクストリーム・メタルの世界においても彼らのファンは多い。80年、ギタリストのヴィニー・スティグマを中心に結成。 83年に『United Blood』EP、そして翌84年、現在も永遠の名盤として語り継がれる『Victim in Pain』でアルバム・デビュー。ラモーンズやトーキング・ヘッズなどがいたニューヨークはもともとパンクの中心地であったが、バッド・ブレインズがニューヨークがやってきたこと、そしてこのアグノスティック・フロントが登場したことで、一気にハードコア・ムーヴメントが開花したのだ。 アグノスティック・フロントの名がメタルファンにも轟くきっかけとなったのが、86年のセカンド・アルバム『Cause for Alarm』。のちにタイプ・オー・ネガティヴで大成するピート・スティールも深く関与したとされる本作は、メタルとハードコアを融合したクロスオーバーの傑作として、その名を歴史に刻むアルバムだ。 ただまあこのメタルへの接近、バンドのコアメンバーにとっては不本意な部分もあったようであり、サード・アルバム以降、メタル色は急速に消え去っていくのだが。 その後90年代は一時解散状態にあったものの、98年にはエピタフ・レコードから5thアルバム、『Something's Gotta Give』をリリース。また04年の8thアルバム『Another Voice』からは、ヨーロッパの大手レーベル、ニュークリア・ブラストへと移籍し、コンスタントにアルバムを発表し続けている彼ら。 この度リリースとなるのが、4年ぶり12枚目の作品『ゲット・ラウド!』だ。本作についてヴォーカリストのロジャー・ミレットは「俺たちのキャリアを総括する内容だ」としているとおり、ルーツのパンクやハードコアに根差した実にアグノスティック・フロントらしい作品に仕上がっている。 特に耳を引くのは、スラッシュ的成分の多さ、もっとストレートに言えば『Cause for Alarm』的要素の濃さだ。 これはアルバムのアートワークにも露骨に表れている。アグノスティック・フロントのファンならばすぐにおわかりだろうが、本作のジャケットを手掛けたのはショーン・タッガート。アートワークには『Cause for Alarm』のキャラが再登場。あの時代の感動が蘇ってくる。 全14曲、ハードコアのゴッドファーザーによる『ゲット・ラウド!』は、80年代のニューヨークを生き抜いたものたちによるリアルなメッセージにあふれた作品。 パンク、ハードコアはもちろん、クロスオーバー、そしてエクストリーム・メタルのファンも必聴のアルバムだ。 【メンバー】 ロジャー・ミレット(ヴォーカル) ヴィニー・スティグマ(ギター) グレイグ・シルヴァーマン(ギター) マイク・ギャロ(ベース) ポーキー・モ(ドラムス) 2019/12/04 発売