イン・ザ・ロウ
北国の女王、ここに降臨す。雪の結晶の脆さと鉄(くろがね)の強靱さを兼ね備えた歌声で、ターヤがすべてを露わにする。
かつてメタル・バンド、ナイトウィッシュの一員であり、現在ではジャンルを超えてフィンランドを代表する女性ヴォーカリストとして活躍するターヤ。
7作目のソロ・アルバムとなる『イン・ザ・ロウ』はそのタイトル通り、彼女の歌手人生において最も“生々しい=RAW”な作品だ。
ヘヴィでメランコリック、繊細で重厚。ターヤの多彩な精神性と想いを歌い上げた本作は、その内面を露わにし、脆く、それでいて猛々しい作品に仕上がっている。
「クリエイティヴであることは苦痛を伴う。アルバムの歌詞を書き上げたとき、自分が空っぽになって、浄められたように感じた」とターヤ自らが語る本作は、
さまざまなスタイルの楽曲に乗せて、そのエモーションを歌い上げる。
その美麗でオペラチックな歌唱は、さらに磨きがかかっている。ダークでヘヴィでありながら耽美的なメロディに満ちた(1)「デッド・プロミシーズ」は
「私のライヴで、みんなでジャンプしまくる曲を書きたかった」とターヤ自身が語るものだ。
デペッシュ・モードからマリリン・マンソンの系譜に則った(2)「グッバイ・ストレンジャー」、彼女のポップな情感を表現した(4)「レイルローズ」、
ピアノとストリングスを従えて歌い上げる(5)「ユー・アンド・アイ」、クラシカルな調べとインストゥルメンタル・パートが強化された
(6)「ザ・ゴールデン・チェンバー」など、シンガー“ターヤ”“としてのペルソナに留まることなく、“ターヤ・トゥルネン”の人間像が掘り下げられた作品だ。
本作はかつてナイトウィッシュが『ワンス』(2004)で成し遂げた音楽的達成を、彼女のソロにおいて具現化させたアルバムだといえるだろう。
彼女に共鳴した実力派アーティスト勢がゲスト参加。(1)「デッド・プロミシーズ」では ビョーン“スピード”ストリッド(ソイルワーク)、
(2)「グッバイ・ストレンジャー」ではクリスティーナ・スカビア(ラクーナ・コイル)、(8)「サイレント・マスカレイド」では
トミー・カレヴィック(キャメロット)がヴォーカルを披露している。
メタルからクラシック、ポップ、ゴシックに至るまで、ターヤ・ワールドを余すところなく描き切った本作のミックスは、
彼女の音楽性を熟知するティム・パーマーが手がけている。
本作をターヤは“黄金”に例える。「黄金は洗練されて完璧な物質。でも同時に、自然に存在する生々しい物質でもある」
聴く者を黄金の道へと導くアルバム。それが『イン・ザ・ロウ』だ。
【メンバー】
ターヤ(ヴォーカル)
【ゲスト・ヴォーカル】
ビョーン“スピード”ストリッド (ソイルワーク)
クリスティーナ・スカビア (ラクーナ・コイル)
トミー・カレヴィック (キャメロット)