著者 : 献鹿狸太朗
みんなを嫌いマンみんなを嫌いマン
ある日突然スーパーパワーを手に入れた上原至は、“みんなを守るマン”として今日も人類の平和を脅かす地球外生命体と闘う。致命傷と思える攻撃を受けても完治し、どんな敵をも薙ぎ倒し、どこにでもワープできる彼は生きる伝説となっている。闘うことを強要され、弱音を吐くことを禁じられ、助けられなかった命に想いを馳せる全人類の奉仕者は、全人類の奴隷であった。至はいつまで皆を救えばよいのか。至に救いはあるのかー。
地ごく地ごく
無情、ひたすら無情ー。「死んだ方がましのくせになぜ生きているのか不思議な底辺が、将来そうなるであろう若いだけの同じ底辺によって苦しめられている」と同じ団地の住民を見下す久野。自身の惨めさを糊塗するために、現状から抜け出せない人々を定点観測するだけに飽き足らず、土井という老人を弄ぶ手段を考え、実行することに生きがいを見出していた。ところがある日土井から相談を持ちかけられて…。表題作を含め、自らの毒に冒されたい人に向け描かれた短編集。
赤泥棒赤泥棒
「捨てられたものを拾うのは泥棒ではない」と嘯き、女装をして女子トイレに侵入し、捨てられた生理用ナプキンを盗む百枝菊人。女装がバレたら心の性別をたてに被害者ぶろうと思っていたところ、同じ学校の明石睦美に目撃される。彼女は百枝が自分と同じく、性別に違和感を抱いていると思い急速に接近してきた。無理解と偏見がマイノリティを利用し、共感と愛情が暴力を肯定する…。表題作「赤泥棒」に加え、文藝賞最終候補に選ばれた「青辛く笑えよ」、「普通」を唾棄する高校生が才能の塊と出会い自我を崩壊させる「奇食のダボハゼ」をおさめた短編集。
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