著者 : 見沢知廉
バブル経済に浮かれる時代の外務省キャリアの一家を主人公に、サディズムとマゾヒズム、価値の変換、両極の同位性を追求した傑作。リアリズムの極致とファンタジーが交錯する(『背徳の方程式ーMとSの磁力』)。若者の偏執的な愛情を描く。三次元から二次元へのスライドと狂気(『人形ー暗さの完成』)。一九七八年三月二十六日の成田空港開港阻止決戦、三里塚闘争をユーモラスに描く。生き生きと描写される新左翼活動家たちの闘争は、まさに現代の神話(『七十八年の神話』)。野村秋介と見沢はともに千葉刑務所に十二年収監されていた。野村と自分とを重ね合わせた、自伝的作品(『獄中十二年』)。遺品から発見された、未発表原稿。「主観的な真実」を信じ抜いた作家の原点。
神社爆破と警官殺害で独居専門棟に収監された過激派政治犯Sは、その処遇をめぐり「担当」と呼ばれる看守部長と常に対立。苦情を申し入れても却下され、リンチ同然の暴力を受けるなど絶対服従を強いられた。小説を書くことで生きる望みを見出すSはやがて、看守も所詮、刑務所という閉鎖社会でしか生きられぬ「囚人」に過ぎないと考える。凄まじい獄中描写が大反響を呼んだ問題作。
これはスゴい、そこまで書くかと右翼が驚き、左翼も呆れた前代未聞の「天皇小説」。天皇とは、日本人にとってどんな存在なのか。われわれはなぜ、これほど天皇にこだわるのか。監獄、右翼左翼、精神科病院、北朝鮮と、さまざまな「非日常」のフィルターを通して見てみたらー。獄中で執筆され、獄中で新日本文学賞を受賞したデビュー作にして超問題作、大幅加筆を経て、文庫版で復活。
政治犯Sが収監された刑務所は、凶悪犯専門の監獄だった。そこの更に最底部の独房舎では、囚人に対する極度の合法的リンチと重労働が課せられ、看守への絶対的服従を強いられる。異分子に対しての徹底的な自我の破壊、尊厳の否定が恒常化していた。果てしなく繰り返されるSへの攻撃。「正常」でいられること、自己と創作活動を守り保つための権力との凄絶な闘いの末に…。十二年におよぶ獄中生活のすべてを賭けた渾身の衝撃作。