著者 : 谷口広樹
19世紀末、エリート官僚太田豊太郎は、明治新政府の期待をになって先進国ドイツに派遣された。自由な気風みなぎる大都会ベルリンで、自我に目覚め孤立した豊太郎は、寂れた裏町で美しい踊り子エリスと出会う。やがて恋に落ちた二人に訪れる悲しい運命。鴎外自身の留学体験を基に書かれた浪漫派の名作『舞姫』が、分かり易い通釈、格調高い雅文体原文(総ルビ付)の両方で味わえ、鑑賞に役立つ図版・コラムも満載。
母がいるホスピスで僕は子供の頃高原で遊んだ少女に再会、彼女は虫を一匹一匹つぶすように刺繍をしていたー。喘息患者の私は第三火曜日に見知らぬ男に抱かれ、発作が起きるー。宿主を見つけたら目玉を捨ててしまう寄生虫のように生きようとする女ー。死、狂気、奇異が棲みついた美しくも恐ろしい十の「残酷物語」。
雪山で死んだフィアンセ、藤井樹の三回忌に、渡辺博子は想い出に封印するかのように、樹が中学時代に住んでいた小樽に手紙を出す。ところが、今は国道になっているはずの住所から返事がくる。天国の彼からの手紙?博子は再び返事を書き、奇妙な文通が始まる。もうひとりの藤井樹は何者なのか?二度と戻れないその場所から、大切な何かがよみがえってくるのだった。
幼い頃に聴覚を失って以来、孤独に生きてきた青年画家・晃次。彼をひたむきに愛する女優の卵・紘子は、手話を必死に習って、彼が重く閉ざしていた心の扉を開けようとするのだが…。言葉をこえた、やさしくせつないラブストーリーとして大きな感動を呼び、大ヒットを記録したドラマの完全ノベライズです。巻末に、ドラマができあがるまでの様々な出来事を著者が日記でしるした「MAKING DIARY」、晃次と紘子の使った手話をイラストでわかりやすく図解した「手話レッスン」を同時収録しました。
駅のベンチで拾ったピンクのトウシューズに恋した僕は、その持主の出現を心待ちにするー「アンジェリーナ」。猫のペーパーウェイトによって導かれたベストセラー小説とはー「バルセロナの夜」。佐野元春の代表曲にのせて、小川洋子が心の震えを奏でて生まれた、美しい10の恋物語。物語を紡ぐ精霊たちの歌声が聞こえてくるような、無垢で哀しく、愛おしい小説集。