著者 : 越智和弘
夜夜
ベルリンの壁崩壊の夜、名のない女に殺された作家の俺は眼と化し、街に出た女を追った…。ムージル『特性のない男』、デーブリーン『ベルリン・アレクサンダー広場』、カフカ『流刑地にて』、ベン『屍体公示所』、グラス『犬の年』、ワーグナー『パルジファル』、エーコ『フーコーの振り子』、プラトン『饗宴』-多数の引用による仕掛けと冷徹な描写力とが、究極の合一「愛」を求める男女とドイツの苦悩を描き出す。ヴァルザー賞、バッハマン奨励賞、クルチウス奨励賞等に輝く鬼才の野心作。
モガディシオ窓際席モガディシオ窓際席
ネオナチの台頭に揺れる今日のドイツ的状況の萌芽はどこにあったか。西ドイツ過激派と国家の緊張が頂点に達した1977年秋、のちのドイツ右旋回の端緒となったルフトハンザ機のハイジャック事件が起きた。本書は、ハイジャック機に乗り合わせた女性科学者の克明な心理描写を通して、戦後西ドイツと今日の統一ドイツの底に一貫してうずまく〈暴力〉の問題に正面からメスを入れた、ヨーロッパで話題のアクチュアル・ロマンである。
PREV1NEXT