小説むすび | 葦と百合

葦と百合

葦と百合

著者

奥泉光

出版社

集英社

発売日

1991年10月1日 発売

ブナの原生林奥深く、物語の発生する気配がある。ひとつの謎の種子が虚構の大地に舞い降りる。近代小説のあらゆる夢をはらんだその種子は発芽し、やがて錯綜し繁茂する浪漫の森林となる。水底に沈む谷間の村。消えたコミューン。伝説のキリシタン集落。失踪した青春の恋人。茸毒の幻覚作用。予期せぬ殺人事件。謎を追う者は、物語の放つ霊気を膚に感じ、遠い音楽を耳に聴きながら、いつしか深い森に迷い込む。リアルな認識と知性の証である葦の森。遥かな憧憬の象徴である百合の森。その中心の場所、最も緑の闇の濃い処、夢の密かに生まれる場所に彼が到達するとき、永遠に女性的なるものが光のなかに姿を顕にし、すべての虚構の秘密が解き明かされるだろう。

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