小説 大逆事件(上)
明治天皇に危害を加えるべく爆裂弾を製造した宮下太吉、宮下に賛同して事件を主導した新村忠雄、幸徳秋水と同棲していた過激な闘士・管野スガー。無政府主義、社会主義を標榜する彼らは、次々と「無政府主義者の撲滅」をめざす政府当局の手中に落ちてゆくー。「天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ危害ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者ハ死刑ニ処ス」-1947年まで存在した刑法第73条、いわゆる大逆罪。皇室に対して危害を加えようと企図した者は死刑、しかも控訴や上告をすることができないという、大変厳しい内容だ。この罪が初めて適用された通称「幸徳事件」について、著者が豊富な資料をもとに鋭く切り込む。
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明治43年、政府は明治天皇の暗殺を企てたとして大量の社会主義者を検挙、翌年1月には幸徳秋水を含む12名の処刑を断行した。反政府活動とそれに対する国家の徹底した弾圧という、近代日本の暗部を象徴した「大逆事件」。新資料を駆使、小説の形式で事件の全貌と関わった人間たちの真の姿に肉薄しようとした労作。 2004/02/10 発売
“破倫無道の挙”か、冤罪かーいよいよ結審の時来る。(幸徳秋水が担当弁護士にあてた陳弁書には)無政府主義にたいする誤解への弁駁と、検事の取り調べに不法とが述べてある。この陳弁書にあらわれたところによれば、幸徳は決してこのような無謀を、あえてする男ではない。それは法廷での事実と符号している。社会主義者、無政府主義者たちが明治天皇の暗殺を企てたとされる、いわゆる幸徳事件。当初は「破倫無道の挙」「常識を失した凶暴な沙汰」と断じていた石川啄木は、事件の記録を読むうちに、検察による事実の歪曲に愕然とする。一方、ことを早く片づけたい検察は、逮捕後異例のスピードで予審を終え、嫌疑のかかる26人全員に極刑を求刑してしまうのだったー。事件関係者について綿密に調べ上げ、その真の姿に肉薄した渾身のノンフィクションの完結編。 2022/06/09 発売