猶予(いざよい)の月(下)
世界を“時間”“実現事象”“可能事象”の三次元として表現する事象理論の発明者にして犯罪者であるバールが、理論士イシスのリンボス世界(=地球)でのシミュレーションに干渉してきた。北極圏に近い寒村センティシス、ニューデリー、ロンドン、そして日本の各地で、イシスと恋人である弟のアシリス、バールたちは、名前と外見をさまざまに取り替え、自らの目的を達しようとするが…神林SFの最高峰、待望の文庫化。
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〈第三眼〉を持つカミス人は人工衛星カミスに設置した事象制御装置アスタートによって、惑星リンボスの世界を制御していた。アスタートの操作に携わる理論士イシスの恋人は、詩人である弟のアシリス。だが、カミスでは姉と弟の恋愛は禁じられている。そこでイシスは自分の理論士としての立場を利用し、カミス人の理論の実験場でありリンボス世界を改変することにより、カミス世界をも改変させ、弟との恋を成就しようとしたが…。言葉が世界を紡ぎ出す神林長平の魅力をあますところなく伝える本格SF。 1992/05/01 発売