ダ-クライン
黒人も女性も、自分たちの立場をわきまえていた。“ゲイ”という単語は、まだ“ハッピー”の同意語にすぎなかった。商店は日曜日に休業し、われらの爆弾は敵の爆弾より大きく、米国陸軍は無敵だった。無知な私は、世界はすべて順調にいっているものと思っていた。1958年は、そんな時代だった。テキサスの田舎町デューモントに引っ越してきた私は、まだ13歳だった。父さんのドライヴ・イン・シアターで映画を観て、新しく出来た友達と遊び、姉とそのボーイフレンドを冷やかして、夏休みを過ごすはずだった。ところがある日、家の裏で犬と遊んでいた私は、地面に埋められていた古い手紙と日記の断片を発見する。それは思春期の少女が綴った恋の記録だった。さらにその先の森には、焼け落ちた屋敷の跡が黒々と聳え立っていた。好奇心にとらわれた私は、古い事件を調べてみた。そこでは13年前、火災で一人の少女が命を落としていたのだ。さらに奇怪なことに、同じ夜、町外れにすむ別の少女が、首無し死体で発見されていた。どちらの事件も真相ははっきりしないままだ。私と姉は、事件の真相を突き止める決心をするが…人生で最高に輝いていた夏休みと、それを彩った数々の事件。MWA賞受賞作『ボトムズ』をも凌駕する、鬼才の最高傑作。