小説むすび | ベル・カント

ベル・カント

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突然、邸内は真っ暗になった。南米のある小国の副大統領官邸がテロリストに占拠された。折りしも、工場誘致のために日本の大手企業社長の誕生パーティが開かれており、出席者は人質となった。オペラ好きな主賓のために招ばれた世界的歌手のロクサーヌ・コスも、各国の要人たちも。幽閉生活が続くうち、人々は奇妙な安らぎを覚えていく。金と名誉を求めるばかりが人生ではないと気づいたのだ。テロリストたちも、実際は貧しい家の子どもだった。知的な大人たちと接して初めて、この世には美しい世界があることを知っていく。やがて、ロクサーヌの歌をきっかけに、人質とテロリストは心を通わせていく。首謀者までが人質に心を開き、官邸には牧歌的な時間が流れるようになる。だが、この平穏な日々が永遠に続くはずはなかった…。人間の根源的な愛とは何かを問いかけるオレンジ小説賞、PEN/フォークナー賞受賞作。

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