クジラの歌
ザトウクジラたちは、緑の光の記憶に包まれて生まれ、やがて「光のわだつみ」へと召されてゆく…。のちに群れの長となるザトウクジラのフルナが回想する若き日々。母親の巨体の陰に守られて育った赤ん坊のころ。幼なじみのローテと遊んだ記憶。畏怖に満ちた父親との対面。そして、長老から聞かされた神秘の物語…。やがてフルナにも、成年期の〈孤独な巡航〉に旅だつ日がやってきた。途途であう仲間たちは、イルカ、カモメ、アホウドリ、ラッコ。だが、人間だけは…。詩人としても有名な著者が、哀調を帯びた鳴き声で〈歌うクジラ〉として知られるザトウクジラを主人公に据えて、ファンタスティックにつづる、海の民たちと大自然への賛歌。