小説むすび | 上杉覇龍伝(2)

上杉覇龍伝(2)

上杉覇龍伝(2)

上杉景虎との邂逅。直江兼続の胸中で懐かしさと苦さが交錯する。袂を分かって以来、景虎は兼続と彼の主である上杉景勝を恨み続けている。突然面会を申し入れてきたのには、何か裏があるというのか…。確か、景虎は会津征討へと北進する徳川勢の一角に名を連ねていたはず。「恨み骨髄の我らに何やらお話があるとか」年を経ても変わらない景虎の凛々しい目を、兼続は正面より見据えた。「内府が兵を退いておるぞ。早くせねば、三河狸が逃げおおせてしまうわ」久しぶりに聞いた景虎の第一声は、「またとない機会」を兼続に告げていた。(家康、逃げるでない。天下が欲しくば我らと一戦交えよ)兼続は逸る気持ちを目前の男に気づかれぬよう、両の拳を握り締めた。

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