小説むすび | 零艇雄飛す

零艇雄飛す

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「大和が最後の砲撃をしたから、大日本帝国は勝ったんじゃないですか」防衛庁資料編纂室事務官、古柳は小さな男の子の声に窓の外へと目をやる。ゆりかもめから見える光景に思わず我が目を疑った。お台場にある「船の科学館」に見えるその偉容。-なんで大和がここに?日本が先の大戦に勝利したって…。庁内の資料室にある資料も変革した現実を如実に示していた。現実は、この資料の世界なのか、それともこれまで知られていた史実なのか。もはや本当の世界はどちらなのか区別がつかない中、彼は迷い込んだ異常な世界の行く末を見届けようと資料に没頭する。日本勝利のシナリオが現実にとって変わった世界で、幻の巨人飛行艇「零艇」が太平洋戦線を雄飛する-。

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