小説むすび | 水都の富豪と愛の妖精

水都の富豪と愛の妖精

水都の富豪と愛の妖精

ヴェネツィアに降り立って双子の妹の婚約者マルチェロを見たとたん、古くさい中年男性と聞いていたのとはまるで違う精悍で魅惑的な大富豪の姿に、ジュリアは色を失った。旅行中に彼と出会ってすぐ衝動的に婚約した妹は、帰国後に交通違反がもとで出国禁止になったため、妹になりかわって彼と母親に挨拶しに行くようジュリアに強いたのだ。こんなにすてきな人に対して、偽りの婚約者を演じろだなんて…。無事に役目を終えられますようにというジュリアの願いも空しく、ふたりきりになるやいなやマルチェロの黒い瞳に射すくめられ、激しく唇を奪われて、彼女の心は千々に乱れた。

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