小説むすび | 愛なき伯爵の手に堕ちて

愛なき伯爵の手に堕ちて

愛なき伯爵の手に堕ちて

「抵抗しても無駄だ。安心しろー悪いようにはしない」リネットは仮面の男に抱きすくめられ、甘いおののきを覚えていた。弟が悪友にそそのかされて盗んだ宝石を返そうとしただけなのに、偶然居合わせた泥棒にとらわれて、唇を奪われてしまうなんて…。混乱するリネットの口から不意に、恥ずべき言葉が飛び出したー私の純潔と引き換えに、盗みを諦めてはもらえませんかと。男は彼女の申し出を一笑に付し、宝石を手に立ち去った。呆然と立ちすくむリネットは夢想だにしなかった。彼は単に、友人に預けていた宝石を持ち帰っただけだということを。そして、やがてリネットが住み込みで働く伯爵家の主だということを。

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