小説むすび | アマルフィの庭

アマルフィの庭

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カーチャはイタリアへ向かう飛行機の中にいた。機体がふわりと揺れるたび、おなかに感じる羽ばたきは決して気のせいではなく、小さな命が息づいている証だ。わたしの赤ちゃん…。思わず胸が熱くなる。込み上げる思いをカーチャは慌てて打ち消した。情が移らないようにしなければ。私に母親になる資格はない。だから今、この子を委ねられるかどうか見極めるために、はるばる子どもの父親に会いに行くのだ。たった一夜だけをともにしたプレイボーイの外科医、ベネデット・メディチ伯爵のもとへ。

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