小説むすび | 永遠をさがして

永遠をさがして

永遠をさがして

オナーはその日、見上げるほど豪奢なマローン家の門をくぐった。かつて誘拐されたマローン財閥の令嬢と判明し、26年ぶりに帰ってきたのだ。代理人トレースとともに。だが、オナーを高慢な親族たちが歓迎するわけもなく、あまつさえ財産目当ての偽物と拒絶した。冷え冷えとした屋敷のなかで、味方はトレースだけだったが、彼の出張中、オナーは暗闇のエレベーターに閉じ込められる。闇を引き裂き、「このあま」と吐き捨てるような声が響きーそして落下してゆくなか、思い浮かぶのはトレースの黒い瞳…。誰もが白い目で見る屋敷で、彼だけが心のよすがだった。居場所を求めて彷徨う、孤独な乙女の祈り。

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