出版社 : 幻冬舎
「薔薇が咲き始めます」20年前に突如姿を消した友人からの謎めいた手紙に誘われ、たどり着いたのは薔薇の咲き誇る庭。溢れる色彩と香りの中で、止まっていた時が狂おしく動きはじめる。2人の女性と薔薇が交差し、紡がれる物語。
彼女を愛することには、「死」の影が付きまとう。美しい彼女に出会った瞬間、人生は一変した。自分の幸福とは何か、全てを投げうってでも手に入れるべきなのか。それでもただ愛し合い、愛されることだけを求めた男女の奇妙で純粋な愛の物語。
おしゃべりがうまくできずに学校に行けないネムは、子犬のジドといつも一緒。村の人たちは、獲物一匹取ってこないジドのことを「役立たず」といった。「息子に手がかかるのに、あんな犬までかかえたんじゃ、さぞたいへんだろうよ。」でも、ジドにはひみつがある。耳を羽のように動かして、空をとぶことができるのだ。ある日、空とぶ犬のうわさを聞きつけた村の旦那が、ネムの元にやってきてー表題作「ネムとジド」ほか、優しく沁みこんでいく全5編の物語。
三年勤めた会社を辞めて故郷の田舎町に戻ってきた青年・佑。小さな郵便局でアルバイトを始め、忙しくも充実した日々が始まった。ある日、父の遺品整理をしていた佑は、謎の女性から宛てられた手紙を見つける。それから30年の時が経ち明らかになった、父の知られざる過去とはー世代を超えて繋がる人間模様と慈愛の心を、みずみずしい筆致でとらえた感動作。
とある老舗ホテルのフレンチレストラン。差し向かいで食事する「僕」と「彼女」はアロマエステで出逢った。生真面目で不器用そうだがワインや料理に造詣が深く、豊かな知性と教養を感じさせる彼女に「僕」は強く惹かれ、逢瀬を重ねようとするがー。現代の恋を古語で味わう新感覚文学。
拒食症に陥った彼女の苦悩と葛藤の日々…。食べ物の前ではただ黙ってひれ伏し、服従するしかない。その頑なな心を溶かしたのは、理想の彼との出会いだった。いつも一人で我慢して、いつも一人で頑張ってしまう女性たちにエールを贈る物語。
子供の頃から太平洋を旅してきた亜美は、最近ある夢を見る。それに導かれるようにパラオを訪ねた亜美を待っていたのは、両親が残したメッセージだった。父からの手紙や戦時下を生きた兵士たちの足跡、残された糸を手繰り寄せるうちに、亜美は隠されていた歴史の真実に触れ、自分自身の前世を辿ることになるー。
ちょっと不思議、だけど愛おしい。もしも動物たちや花の精霊と話ができたらー。個性あふれる仲間たちとの出会いを描く、ほっこり短編小説集。運転手に化けた狸とのアイロニックな世間話ー「タクシードライバー」。ネズミに鰺の塩焼きを盗まれた哀れな愛猫とのドタバタなリベンジ劇ー「猫とネズミ」。庭に咲くピンクの花に宿る可愛い精霊のささやかな“お仕事”-「捩花の精霊」。ほか15編の物語。
14年前、家の天井裏には赤ん坊の死体があった。刑期を終えた母・清子との再会をきっかけに、劉生と優子は、被害者に対する罪悪感や家族との関係性、自身の心の問題に直面する。彼らを待ち受けるのは家族の再生か、それとも破滅かー。
瀬戸内海にあるセミの鳴き声しか聞こえないような小さな島に響いた爆音、黒い雲の柱が『日常』を終わらせた。戦時下の日常・煽情的日々を淡々と記しながら、家族との距離感や都会から来た異質な転校生の存在に振り回されるカズオの葛藤と成長を描いた一冊。
ある日突然、巨大な虫へと変身してしまったグレゴールと、異常事態にてんやわんやな家族たち…。はたして彼らは平穏な生活を取り戻せるのか?怒涛のテンポで繰り広げられるドタバタ劇!カフカの名作小説をまさかの大阪弁で翻訳!
呉服店の娘である母・絹子は、家族の生活を守るため、持ち前の商才を駆使して巧みに立ち回り、生きる希望をつないでいた。食糧難でも明るくにぎやかに暮らす一家だが、長男の出征や疎開により、次第に離ればなれになっていく…。敗戦が色濃くなった太平洋戦争末期の東京郊外。死と隣り合わせの日々の中で、何が人々を奮い立たせたのか。実体験をもとに、迫りくる脅威と懸命に闘う庶民の姿を描く。
紅葉山高校茶道部部長・高2の檜山柊は二学期始業早々、顧問から校内の茶室「紅葉楼」の移転を告げられる。紅葉山を借景に、池を抱く広い茶庭に四季折々の花が咲き、観月にもふさわしいその茶室は、柊自身にも部員皆にもかけがえのない場所だったー。「紅葉楼」を、そこでしか得られない時間を守るため、少年たちの熱い闘いが始まる!
バイク仲間の勧めで出版社の作品コンテストに応募した中年、五所川原高志52歳。話題が話題を呼び一躍有名作家の1人となった彼は、充実した日々を過ごしていた。そんな折、別れた妻が認知症に。元妻が彼だけに求めた純粋な想いとはー。
友人との別れ、名声との別れ、最愛な人との別れ…。いろんな別れがあるのは、それだけ出会いがあったということ。人生は邯鄲の夢。つつましい日々が綴られた、琴線に触れる短編小説集。
「勉強ができる」ことを、当たり前だと思っていた。東京の名門大学に入学したものの人生初の挫折に打ちひしがれていた僕は、一人旅のために始めたバイトで、金沢から来た大学生ユミと出会う。ユミが書いた一編の小説、旅中に携えていた数冊の本、そして彼女と目にした“あるもの”-。自尊心が傷つき、自分自身とうまく向き合えなかった僕を揺り動かしたものとは。遠く離れた地での青春が、次第に重なり合ってゆく。
龍野・圓光寺の道場で兵法修行をする宮本武蔵は、剣の腕を磨くために参戦した伏見城攻めの最中、手負いの仲間を抱えた3人の忍びと出会う。共に黒田家に仕えることとなった武蔵たちは、京の剣の名門・吉岡家や彼らに襲いかかる柳生一門、伊賀の忍びとの戦いに臨んでいくー。