出版社 : 鳥影社
戦前から戦後を生きた父と、戦後70〜80年代に青春時代を生きた息子。介護の現実の中でその関係を見つめ直した表題作と、「エヴァモア」「息子たちへの手紙」を合わせた本書は、著者渾身の三部作であり、同時代を生きる者たちへの応援歌とも言えるだろう。
信州の高原別荘地で見つかった男の焼死体。現場から見つかる特殊防火液体…。事件の真相に迫るいま、大東亜戦争の闇が浮かびあがるー。聞いて欲しい命の叫びを。戦争に便乗して最大の殺戮事件を実行したのは誰だ。忘れてはならない時代の慟哭を綴る社会派ミステリー。巻末資料「国民築城必携」収録!
幻想文学の鬼材E.T.A.ホフマンの数奇な生涯を描く伝記小説。約200年前のドイツで、作家、音楽家、画家として多彩な才能を発揮した彼は法律家でもあって、当時の社会情勢に翻弄されながらも先駆的生き方を貫いた。
若くして亡くなった友達への思いをこめて、実際にあった受験生をめぐる朝の電車内の出来事を簡潔にして清楚な筆で活写した表題作外、著者多年の修錬の結晶がキラリと光る短篇(学習院輔仁会雑誌賞準入選の処女作「不昧公の小箱」を含む)と、昭和の情緒溢れる幼少期の思い出等を綴った随筆を収める。
われわれは今、「悪魔の黙示録」の世界を生きているのか?ドストエフスキー生誕200年をすぎて、21世紀の今日また切実さをもって甦る名作を、長年ドストエフスキー研究・比較文学に携わってきた第一人者が徹底解析する。
女誰かの家の二階に集って織物、刺繍、縫い物、布鞋作りなど女紅と呼ばれる手仕事に従事する。そこで女書によって詠んだ詩を歌い、年配になれば自伝を書いて詠じた。女たちは、文字によって現実とは違う世界に遊び、苦しみや悲しみを発散した。彼女たちは苦しみや悲しみで縒った糸を文字にする。文字は涙である。詩や自伝という形式は、その涙を溜める袋である。彼女たちは、女書を習得することで涙の袋を抱え、そこに涙を捨てていたのだ。そして涙は笑いに変えられた。これは男性や親から抑圧され、不自由な身の上をかこつ彼女たちにとっては少なからぬ救いだった。
発禁作家になった。「何も変な事も書いていない」「自分が女である事を、医学、科学、唯物論、現実を守るために書いた」…多くの校閲を経て現行法遵守の元で書かれた難病、貧乏、裁判、糾弾の身辺報告。朝日新聞、東京新聞、共同通信等で絶賛された作品を中心に全8作収録。
ゲーテが苦しんだ理性と感性との葛藤。そこから『親和力』は生まれた。いまだ謎とされるこの作品に込められた理念解明への試み。