出版社 : PHP研究所
脆くて、同じものは一つもない。人生はまるで、ガラスみたいだー。みんなと同じ行動がとれず、他人から疎まれてしまいがちな兄の道。落ちこぼれでも優等生でもなく、なんでも平均的にこなせるけれど、「特別ななにか」が見つからない妹の羽衣子。祖父の遺言をきっかけに、ともにガラス工房を引き継ぐことになった、相容れない二人の絆の行方とはー。大阪・空堀商店街にあるガラス工房で兄妹が過ごした、愛おしい10年間を描く感動の物語。
明治維新の五年前、四国の宇和島に生まれた油屋熊八は、大阪で経済記者をするかたわら株で大儲けし、一時は「油屋将軍」と呼ばれるほどだった。だが日清日露の戦争後に読みを誤り、財産を失う。妻のユキの助けもあり、熊八は再起を懸けてアメリカへ行くも、思うような成果は得られなかった。しかし、四十八歳で大分県別府で宿屋を始めたときから、熊八の第二の人生は始まった。これまで日本になかったような温泉観光地をー地元の反対、資金不足など、様々な困難に遭うも、仲間や妻とともに別府を日本一の温泉地へと導くまでの奮闘を描いた感動の長編小説。
神田旅籠町の一角で、素麺箱に古本を並べ、商売をする男がいた。その名は藤岡屋由蔵ー古本販売を隠れ蓑に売っていたのは、裏が取れた噂や風聞の類。買いに来るのは、各藩の留守居役や奉行所の役人であった。そんな由蔵のもとに、ある日、幕府天文方の役人が逃げ込んで来るが、シーボルト事件に絡むその騒動で、由蔵の手下が命を落とす。手下の理不尽な死を許すことができない由蔵は、真実を暴くため、動き始めるのだが…。気鋭の作家が描く傑作歴史小説。
幸道光り子。1973年、尼崎の長屋「さつき文化」で生まれる。幼ななじみで母子家庭に育った江口明、作家志望で繊細な西条司、父親が「京野不動産」社長である京野麗奈らとともに青春時代を過ごした彼女は、貧しい家庭で生まれ育ったため、堅実に生計を立てられる銀行員を目指していた。そんな光り子に転機が訪れる。きっかけとなったのは、1995年のあの大地震だったー。
民主主義は、国を豊かにし、明るい未来をもたらすのか。軍事政権下の東南アジアの国・メコンから日本に留学したピーター・オハラは、大学で政治活動に情熱を注ぐ犬養渉と知り合う。祖国メコンを民主化するため、父・ジミーが大統領選に出馬することを知ったピーターは、父の選挙を応援するため、渉とともに帰国する。一方、人々の期待を一身に背負い、ジミーが帰国するがー
朝敵とされ、慶喜にも裏切られた男は、それでも抗おうとしたー会津藩・松平容保の弟で、桑名藩主・松平定敬。兄と共に徳川家のために尽くそうとしたゆえに、越後、箱館、そして上海にまで流浪した男の波瀾に満ちた人生と秘めたる想いに迫る。
愛する息子を喪い、未来をなくした夫婦は悲しみの果てに離別。平和だった家族は崩壊した。それから数年を経た命日の前日、夫は過去を忘れるために、息子の骨壼を抱え、心が凍てつき暗い家に引きこもる妻を訪ねる。だがその途上、夫は実の両親を亡くした少年と出会い、妻の家に一緒に泊まることに。その日から心に仄かな灯が生まれた…。
四年前、殺人罪に問われた女性の無罪判決を勝ち取り、脚光を浴びた弁護士の大石。医療過誤の裁判で、彼は依頼人である原告・長瀬の尋問に向け、準備を整えていた。しかし当日、時間になっても長瀬が法廷に現れず、大石は裁判官や相手の弁護士に頭を下げる破目に。大石が原告の自宅を訪ねると、そこにいた「長瀬」は、昨日まで打ち合せをしていた原告とは似ても似つかぬ、全くの別人だった。弁護士生命さえ危うい事態に、真相究明に乗り出した大石だったが…。
“再建の神様”早川種三に憧れる銀行マンが絶望の末に出会ったのは、一人の経営コンサルタントと、会津の倒産した旅館。地元の抵抗、従業員の軋轢、そして震災ー蘇らせるのは企業じゃない街だ!人だ!大逆転劇が始まる!
ドラマの撮影中に起こるさまざまな事件やトラブルを鮮やかに解決するベテラン俳優の南雲。-そこにはある秘密が隠されていた。名演技に潜む「罪」と「罰」-『教場』の著者が、芸能界に生きるものたちの“業”を描いた連作短編ミステリー。
14年前の殺人犯が出した告白本。そこに記された「嘘」と「秘密」とは…。ベストセラー「書店ガール」シリーズの著者による、書店員を主人公とした、「良心の重み」を問う慟哭のミステリー。
「下意上達」の組織作り、世界初の児童手当、理想の藩校の創設ー何よりも「人」を大事にしたすごい名君がいた!ベストセラー『小説上杉鷹山』の著者が描く、鷹山の兄にして高鍋藩第七代藩主・秋月種茂(鶴山)の生涯とは。
けがれなき飛騨白川郷をこの手で守るためにー。戦国武将が喉から手が出るほど欲しいもの…金銀と、鉄炮火薬に欠かせない塩硝。それらは天離る地で豊富に産するという。天下の覇者へと邁進する織田信長に送り込まれたのは、津田七龍太。天才軍師・竹中半兵衛の愛弟子だ。白川郷では、七龍太の出生に関わる思いがけない出逢いが待っていた。
たとえ天下の大軍が攻め寄せようともー。織田信長の後継者となるも、恋い焦がれてきたお市を手に入れることができなかった秀吉は、怒りの矛先を津田七龍太に向け、その処刑を黒田官兵衛に命じる。一方、徳川家康の支援を仰ぐべく、真冬の立山連峰越えに挑む猛将・佐々成政の前に、内ケ嶋の姫が現われ…。秀吉・家康らが虎視耽々と狙うなか、天離る地の小国は、生き残れるのか。
お金、結婚、仕事…。夢なのか、悪夢なのか、不思議な出会いー読みやすい物語から本当の幸せとはなにかを問う「三郎と幸福のホテル」、飛べないカラスの子どもとキツツキの子どもが海へと大冒険「クラゲの大王物語」-生きることの意味、成長とはなにかがわかる物語2編。