1990年12月10日発売
狙われた密会狙われた密会
大きな平らな岩が、川の中に突き出ている。男は不意に、「おや?」と瞳を凝らした。碧い水のよどみのなかに、蝋細工のような人体が浮いていた。でも、それは蝋細工ではなかった。なぜなら白いナイロンのパンティをつけ、その乳房や首筋のあたりに、バラの花弁のようなキス・マークが、滲むように浮き上がっていたからだ…。(「男の階段」より)男の出世の踏台となって無惨に殺された女をはじめ、日常の裏側に潜む愛欲と野望を赤裸に描く、ミステリーの傑作集。
それぞれの関ヶ原それぞれの関ヶ原
加藤清正の妻を大坂城から脱出させる大木土佐守。落城寸前の伏見城に向けて鉄砲を運ぶ堺の鉄砲鍛冶。清酒〈生諸白〉で名を挙げる鴻池一族の祖、新六。家康の命で大砲〈国崩し〉を鋳造する近江国友鍛冶。裏切りの誘いに心揺れる石田家重臣粟津権之助。石田軍の巨魁・大谷刑部の首を追う藤堂仁右衛門。豊臣秀頼の命を狙うため甦えった初代服部半蔵正成。興るか、滅ぶか。生死を賭けた男たちの野望と決断。
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