1997年8月5日発売
あとは野となれあとは野となれ
あらゆるコウインシデンス(偶然の一致)を書き留めた、略称「デンス手帳」を小脇に抱え、『ジェイムズ・ジョイス伝』と『ねこまた、よや』という二冊の本を読み進めながら、言語遊戯の“言海灘”を横断しつつ、「野」にわたる風のように人間の哀しみに触れる“私”の傑作長篇。
モ-ツァルトは子守唄を歌わないモ-ツァルトは子守唄を歌わない
モーツァルトの子守唄が世に出た時、“魔笛”作家が幽閉され、楽譜屋は奇怪な死を遂げる-。その陰に策動するウィーン宮廷、フリーメーソンの脅しにもめげず、ベートーヴェン、チェルニー師弟は子守唄に秘められたメッセージを解読。一七九一年の楽聖の死にまつわる陰謀は明らかとなるか。85年度江戸川乱歩賞受賞作。
フェルナンド・ペソア最後の三日間フェルナンド・ペソア最後の三日間
1935年11月。フェルナンド・ペソアは聖ルイス・ドス・フランセゼス病院で死の床に就いていた。苦悶の三日間、ポルトガルの偉大な詩人は、訪れたかれの異名たちと話を交わし、最後の遺志をつたえ、生涯の伴侶であった亡霊たちと対話を交わす。それはまるで妄想のなかの出来事。小説とも(架空のものだとはいえ)伝記ともみえる短篇の中で、アントニオ・タブッキは20世紀最大の作家のひとりの死を、やさしく情熱的に描いている。
大反撃一式砲戦車隊大反撃一式砲戦車隊
圧倒的な物量。質的な凌駕。太平洋戦争中期以降の日本軍戦車隊は、米軍の機甲戦力の前に完膚なきまでに叩きのめされた。しかし、その悲劇を回避する方法がなかったわけではない。欧州やアフリカで戦車殺しの誉れも高いドイツの88ミリ高射砲を、太平洋戦争以前に日本軍も入手していたのだ。後はそれを自走砲化するだけで、太平洋の島嶼戦は一変するのである。
PREV1NEXT