著者 : 澤田澄江
研修を終え宮廷に戻ったタリアだが、直後、「女王補佐」としての決断を迫られる。エルスペスにもたらされた、隣国の王子アンカーとの縁談を巡り、議会が分裂していたのだ。セレネイは一見申し分のない縁談に罠の臭いを感じて迷うが、証拠はなにもない。呼応するかのように、不穏な動きを見せるオーサレン卿。ついに女王の命令が下り、クリスとタリアは隣国の偵察に向かうが…。
「きみはクリスのもとで研修を受けるのだから、最後に彼に会ったときよりも落ち着いた状況で顔なじみになっておきたいだろうと思ったのだよ」「落ち着いた状況ですって?これが落ち着いた状況だっていうんですか?」「相対的にはな」正式な“使者”となり、“学院”での日々に別れを告げたタリア。研修の指導官はクリス、任地は北の“国境地帯”。辺境出身のタリアにとって比較的簡単な任務になるかと思われた。研修はクリスと協力して難題に向かうことが不可欠である。しかし、二人の信頼を揺るがすべく、密やかに不和の種は蒔かれていたのだった。執拗に迫る“女王補佐”排斥の魔手。タリアはこの陰謀を打ち砕けるのか。
三女神との誓約を破って魔術を行使し、女王アスリンの切り札・白の魔術師を撃破したジェセックス。制裁を覚悟し臨んだ三女神との会見で、自分こそが預言の魔術師イーロンであることを知る。一方、部下を殺され危機感を強めたドリューデンの指揮下、女王軍の攻撃は日に日に激しさを増していった。戦況が逼迫する折、なぜか女王は王位交代のため赤の王キリス=キリンを首都に招致した。疑問を抱えながらも、危険を押し、南に向かう決意をする王たちだったが-。
「僕はこの世界の力だ」僕は囁いた。「許してください。三女神よ。でも、服従することで全てが滅びるという時に、どうして従えるものでしょう。許してください。母神イーよ。もしも、僕のすることが間違っているというならば。イーロンが来ないなら、僕が行きます」青の女王に対する北域の民の不満は日に日に高まり、森の王キリス=キリンは、ついに叛乱の狼煙をあげることに!一方、三女神の下で魔術を学ぶ少年ジェセックスは、誓約により魔術を行使することを禁じられ、戦渦が広がる中、無力な自分へのいらだちを抱えていた。残された希望は、王を救うと預言された魔術師イーロンの到来のみ。長い間封じられたアーセンの森を出軍する王に、女王は切り札である白の魔術師を投入し、攻撃を仕掛けてきた-。
数奇な星の下に生をうけた少年ジェセックス。青の女王の圧政に苦しむエアインの民の希望、森の王キリス=キリン。運命に導かれ少年は王と出会った。神秘の森アーセンの奥深く闇に閉ざされた聖堂に、少年は光を灯し、王と神に仕える日々を送る。やがて湖畔で出会った女神たちから魔術を学び、自らの宿命に目覚めていく…。王のため、エアインの民のため、ジェセックスは青の女王に立ち向かう-。