著者 : 菊地秀行
Dがジェネヴェの村に入った直後に戦いははじまった。潜入していた尖兵が吸血蝙蝠を放ち、疑似吸血鬼に率いられた“黒死団”の本隊は村から五〇キロの地点にまで迫っていた。狙いをつけられた村は、老練な村長と新参者の治安官の指揮の下、Dを雇い、流れ者の傭兵も可能な限り動員して、総力戦の態勢を整えようとした。だが、敵は単なる凶悪な無法者集団ではなかった。真に恐るべき敵・疑似吸血鬼が、次第にその牙を剥きはじめたのだ。
D、3人の戦闘士、そしてライがアニスの村に着いた夜、20年ぶりに貴族の館に灯がともり、伝説の歌が流れ出た。かつて貴族が村人を招き寄せるために作ったという、聴く者の心を捉えて離さぬ魔性の歌が。表題作「D-昏い夜想曲」の他、「D-想秋譜」「D-戦鬼伝」の3作品を収録し、昼と夜二つの世界の狭間を歩むDの孤独な戦いを鮮やかに描く、待望の傑作中編集。
虚空王迎撃のため、“破壊魔”ダイゴと“妖姫”アケビは辺境星区へと向かい、第二次辺境護衛艦隊司令リューベックは伝説の“プレストン教授の船”に乗り込んだ。一触即発の包囲網の狭まるなか、虚空王は“コアの形なき宝石”と呼ばれる三角錐に秘められた“宇宙を制する仕組み”の解明に取り組んでいた。
辺境星区で工場群や輸送船団が襲われ、一瞬のうちに壊滅する事件が瀕発した。人類文明の科学力を遥かに超えるパワーを持つ兵器を駆使したこの一連の攻撃は、“虚空王”と名乗る謎の人物の手によるものだった。全銀河文明に限りない憎悪を抱くスーパー・ヒーローの復讐の旅が、ついに開始されたのだ。
凍てついた最北の海辺の村フローレンスに、待ち望んだ夏が訪れた。わずか一週間の夏。その束の間の歓びを噛みしめる村人の顔には、だが、どこか翳りと怯えが秘められていた。村のはずれには、かつて人間に暴虐の限りをつくした後、旅の男に滅ぼされ海に封じ込められたと言い伝えられる貴族、マインスター男爵の城跡がある。その伝説の貴族は、夏になると姿を現し、飢えを満たすのが常だったからだ。三人の若者が貴族の犠牲となった夏の第一日目、連合戦線を張った戦闘士らは、一気にDに襲いかかったのである。壮大なスケールと圧倒的な迫力でおくる〈D-北海魔行〉完結編。
一年前の夏、海から貴族が上がって来た夜に浜辺で拾った“珠”は、辺境の最北の漁村に住む姉妹の想像を遥かに超えた価値を持つものらしかった。姉の使いで、珠を売りにウーリンが町に出た時、珠を眼にした者は例外なく、あらゆる手段を用いてそれを奪い取ろうとするのだ。一度は危機を通りがかりのDに救われたものの、ウーリンはクローネンベルクの町の顔役ギリガンに、珠の由来を問いつめられた挙句、無残に殺されてしまった。死の間際の少女の願いで、Dは珠を持って少女の村フローレンスに向かった。壮大なスケールで迫る〈吸血鬼ハンター〉シリーズ最新刊、全2巻で登場。
今どきの修学旅行に京都なんて-という轟々たる非難を押し切って、おれの高校は今年も京都への修学旅行に出発した。おれは、毎年恒例のこの行事が嫌いではない。いかにもダサく、汗臭い青春の真っ只中という気分が味わえるし、それに今回は、トレジャー・ハンターとしての仕事も兼ねていた。八頭大・痛快登場、第8弾!