2016年7月23日発売
拝啓、舞原和颯様。風の便りであなたのことを聞きました。8年前に別れた恋人に一目会いたい。夢に破れ、長く陰鬱な後悔の時を経て30歳になった彼女は、節目の年に開催された同窓会に出席する。かつての恋人との再会は叶わなかったものの、友人に促され、彼女は想いを手紙に託すことにするのだが…。きっと、誰にだって忘れられない恋がある。往復書簡で綴られる『風』の恋愛ミステリー。
昔ながらの家屋が残る姉小路通沿いにこぢんまりと建つ、仕出し弁当屋「ちどり亭」。店主の花柚は二十代半ばの美しい女性。しかし、なぜか毎週お見合いをしている。いつも残念な結果に終わるのを知ったバイトが「結婚したいんですか?」と尋ねると「お見合いがライフワークなの」と答える、お茶目な人だ。そんな彼女が心をこめて作る最高に美味しいお弁当を食べれば、どんな人でも笑みがこぼれてしまう。ちどり亭を舞台に紡がれる幸せな物語、存分にご賞味を。
全国大会を目指し、県立伊佐美高校吹奏楽部に入部した梶浦康規。真面目な演奏しか取りえがない康規が命じられたのは、天才的な音楽の才能を持ちながら、破滅的な指揮を振り続ける問題児「踊り場姫」藤野楡を、まともな指揮者に生まれ変わらせること。周囲に関心がなく自分の思う指揮を振る楡には取りつく島もなく、演奏は空回りを続けるばかり。どうすれば、彼女と周囲の歯車を噛み合わせ、美しいコンチェルトを奏でることができるのか…。青春の踊り場にいる彼女と僕の、吹奏楽ストーリー。
三輪ケイト。誰もが振りむくほどの奇蹟的な美しさをもちながら、人見知りでまともに人の顔も見られない女の子。そんな彼女は「暗号」を目の前にした時にだけ、その瞳に類まれな知性の輝きを宿らせるー暗号中毒者だった。名映画監督が残した暗号、ストーカーの残した謎めいたメモ、記憶喪失の少女が描く謎の図案、そしてケイトの人生に影を落とす暗号…。「暗号には、それを作った人の強い思いが込められている」ケイトの前に現れる様々な暗号と、その裏に隠された人生の物語とはー。
妻が事故で逝ったー。小さな不動産屋を営む幸一郎は、別居中だった妻を事故で亡くし、高校生の一人娘・美嘉とは関係がうまくいっていない。なんとか美嘉と仲直りしたい幸一郎だが、「母を死なせた」と美嘉は取り付く島もない。そんな中、幸一郎は親子3人の思い出の動物園が、ほぼ閉園状態にあることを知る。美嘉の笑顔を取り戻したい。幸一郎は何の知識もないまま、動物園の再建を決意する。最初は誰にも相手にされない幸一郎だが、彼の熱意に次第に協力者が集まり始めー。
妹の部屋に居候中のニートである伊佐屋古森は、心霊スポットで動画を撮影し、サイトにUPする小遣い稼ぎを思いつく。高校時代の後輩で、大学生の羽利田和希に相談すると、生真面目な彼は一緒に撮影に参加してくれることに。早速、男二人で心霊スポットを訪れる。霊を信じていない二人だったが、撮影した動画に映っていたのは…。
古都金沢。情緒溢れるこの街のとある店では“本当の心”が見つかるという。「偽物には本物の物語がある」と語る星野灰。彼が始めた贋作しか取り扱わない風変わりなアンティーク店には、訳あり客の品ばかりが集まる。マリー・アントワネットの首飾り、モナ・リザ、モネの睡蓮…灰は贋作に隠された真実の物語を解き明かしていく。一方、妹の彩は十年以上も音信不通だった兄の店を手伝うことに。兄の気持ちがわからないと悩む彼女だが、やがて贋作と向き合ううちに兄の本当の心に気付き…。