著者 : ジョン・ディクスン・カー
結婚を目前に控える青年弁護士リチャードがパリ近郊の別荘を訪れたのは、高級娼婦ローズとの関係を清算するためだった。しかし、彼が別荘に到着した時、ローズは既に寝室で事切れていた。彼女の部屋からは、カミソリとピストルと睡眠薬と短剣が見付かる。過剰に配置された凶器は何を意味するのか。多すぎる凶器の謎に、予審判事を引退したアンリ・バンコランが挑む。不可能犯罪の巨匠たるカーの登場を彩った名探偵の“最後の事件”を描く力作。
大西洋をイギリスに向かう豪華客船クイーン・ヴィクトリア号のなかでふたつの重大な盗難事件が、さらには奇怪な殺人事件が発生する。なくなったはずのエメラルドがいつの間にか持ち主の手にもどったり、死体が消えたあとに〈盲目の理髪師〉が柄に描かれた、血まみれの剃刀が残っていたり。すれ違いと酔っ払いのどんちゃん騒ぎに織り込まれる、不気味なサスペンスと意表を突くトリック。フェル博士が安楽椅子探偵を務める名長編!
不気味なまでに精巧な絞首台の模型。この面妖な贈り物を端に発して、霧深いロンドンに奇怪な事件が続発する。喉を掻き切られた死者を運転席に乗せて疾駆するリムジン、十七世紀に実在した絞首刑吏〈ジャック・ケッチ〉の名前を差出人にして届く殺人予告、そして霧のなかから現れる幻の街〈破滅街〉--悪夢の如き一連の怪事件に、予審判事アンリ・バンコランが挑む。横溢する怪奇趣味と鮮烈な幕切れが忘れがたい余韻を残す長編推理。
パリの予審判事アンリ・バンコランは、剣の名手と名高いサリニー公爵の依頼をうけ、彼と新妻をつけねらう人物から護るために深夜のナイトクラブを訪れる。だが、バンコランと刑事が出入口を見張るカード室で、公爵は首を切断されていた。怪奇趣味、不可能犯罪、そして密室。カーの著作を彩る魅惑の要素が全て詰まった、探偵小説黄金期の本格派を代表する巨匠の華々して出発点。