著者 : ダニー・コリンズ
この結婚に愛はない。花嫁のエデンは浮かない顔だった。亡き父の会社を守るため、想いを寄せる男性のことはあきらめた。だが花婿に隠し子がいるとわかり、式は一転、中止となってしまう。失意と屈辱の彼女を救ったのは、富豪のレミーだった。私を嫌っていた人がなぜ?私は彼に恋いこがれていたけれど。レミーの真意はすぐにわかった。「僕は君が欲しい」ただし、一度ベッドをともにしたら、あとは他人に戻りたいという。1時間でもそばにいたくて、エデンは彼に純潔を捧げた。他人に戻るどころか、妊娠によってさらに深く結びつくとも知らず。
いつもと変わらない朝、アメリアは父に急かされて車を出した。向かった先はワイナリーで、脳裏にある一夜の記憶がよみがえる。1年前、アメリアは富豪ハンターと出会い、純潔を捧げた。しかしその後、彼からは“婚約したから二度と連絡するな”という無情なメールで別れを告げられた。ふと見ると、飾りつけられた黒板には凝った文字が綴られている。“ハンター&エデン、結婚おめでとう”まさか、だめよ。アメリアは動転し、気を失いそうになった。父は私たちの存在を、よりによって彼の結婚式で暴露するつもりだ。アメリアの腕の中で、生後2カ月の娘が純真無垢な瞳を母親に向けた。
ああ、まさかそんな!ターニャは息をのんだ。乱れた黒髪、鋭い光を放つ瞳、無精髭の生えた精悍な顔。なぜレオンがここに?5年前の結婚直後、父親の訃報に接し、ギリシアへ帰国した夫は、それきり音信不通になっていた。「やっと会えたね。きみを連れ戻しに来た」夫の美貌は冷ややかでひどく険しいのに、抱きしめられると、愚かにも恋心のなごりがターニャの体内で脈打った。やがてレオンは部屋の中にいる幼い女の子に目を留めた。自分と同じ、カールした黒髪のー。
ビアンカは非道な元婚約者から逃れるため、人目を忍び、マイアミへ向かう飛行機に乗り込んだ。機内で思いがけず魅力的な男性エヴァレットに誘惑され、熱い夜を共にした翌日、彼女は追手を恐れて素性を隠し、大富豪の留守邸の住み込み家政婦となった。半年後、突然帰宅した屋敷の主を見てビアンカは仰天する。エヴァレット!なぜあなたがここに?これは…何かの罠?混乱するビアンカを前に、彼は謎めいた笑みをたたえている。彼が自邸を隠れ家にした真の理由を、彼女は知る由もなかった。
暴君の父から逃れ、異国で働き始めた貧しい育ちのベッカ。仕事先でハンサムな富豪ヴァンと嵐のような恋におち、周囲の猛反対を押し切って、駆け落ち同然に結婚した。だが母が病に倒れたとの報せを受け故郷に帰った折、なんと自身が子供を産めない病と知る。ああ、私は夫に何も与えてあげられない…。夫を愛するがゆえ事実を告げられぬまま、ベッカは別れを切り出し、家を出た。4年後、ベッカは母の形見を取りに新婚時代を過ごした家を訪れた。ヴァンの留守を狙って。ところが、そこになぜか彼が現れ…。
「おなかの子の父親はぼくだというのか?ありえない!」世界的複合企業の社長、ジュン・リーに妊娠を告げたとたん、黒い瞳に冷たく見据えられ、アイビーは呆然とした。あの夜、情熱に陰る黒い瞳で愛を囁いた彼とは別人のようで、すばらしい夢の一夜には想像もしなかった、辛い現実だった。けれど彼女は涙をこらえて言った。子供は私一人で育てると。すると彼の豪邸に連れていかれ、父子鑑定を受けることに。自分の子に違いないと知るや、彼にプロポーズされたが、アイビーは拒んだ。彼とは住む世界が違いすぎる。でも…。
旅先で唯一の家族の父を失う悲運に見舞われたフレイヤ。今はニューヨークで憧れの仕事に就くことを夢見つつ、ケータリング会社でウエイトレスのアルバイトをしている。ある夜、豪華なボールルームで出会ったのは、威圧感を漂わせるシチリア富豪、ジョヴァンニ・カタラーノ。事故で家族を亡くしたうえ、自らも体に癒えぬ傷を抱えながら、ソフトウェア開発で莫大な富を築いたカリスマ的な人物だ。フレイヤは彼の魅力に囚われ、誘われるまま純な身を捧げた。まさか結婚までしてくれた彼が突然姿を消すとは思わずに。
ヴェネツィアでつましい暮らしを送るキアラは、イタリア富豪ヴァルの誘惑に抗えず、なすすべもなく純潔を捧げた。プレイボーイのヴァルが去っていったあと、キアラは気づく。妊娠しているなんて!いっそう生活に困るようになった彼女は、ヴァルの父親である大富豪の庇護を受け、ひそかに娘を産んだ。3年後、ヴァルの父親が闘病の末に逝去し、遺言が開示された。その席でキアラはヴァルと再び顔を合わせ、自分の血を分けた子の存在を知って激高する彼に言い渡された。「娘にはぼくの姓を名乗らせる。きみはぼくと結婚するんだ」
スカーレットが秘書として仕えていた億万長者が亡くなった。その遺言書が開示される日、彼女は絶体絶命の状態だった。今日は遺族の一人として、スペイン富豪ハヴィエロも現れる。かつて私は自分の想いを抑えきれず、彼に純潔を捧げた。でもハヴィエロは私を、亡き父親の愛人だと疑っていた。だから別の女性と婚約したのだ。私になんの感情もなかったから。そんな人に言えるの?おなかの子はあなたの子だと。いいえ、言うのよ。スカーレットは化粧室の個室で涙をこらえた。たった今、破水したからだ。もうすぐ赤ちゃんが生まれるー。
父の死後、カシオペアは父が遺したホテルを相続したものの、欲深い継母と義姉に奪い取られ、使用人同然に働かされていた。ある冬の夜、温水プールで清掃をしていると、ホテルに滞在中のヴェリーナ国の王子リースがやってきた。陶然となったカシオペアは、思わず熱い抱擁に応えてしまう。「この続きはぼくのスイートルームで。すぐに迎えに来る」純潔を捧げる覚悟を決めて待ったが、彼が戻ることはなかった。翌日、リースはホテルを買ったと告げ、結婚を申し込んできた。王子様がなぜ急に私を花嫁に?カシオペアは狼狽いるが…。
ポピーは両親に顧みられず、祖父母に引き取られて育った。今は祖父は亡く、祖母と幼い娘リリーと暮らしている。娘の父親は2年前、スペインでただ一度愛し合ったリコ。旅先でお金をだまし取られたポピーが、帰国費用を稼ぐためメイドに雇われた公爵家の御曹司だ。ひと目見た瞬間からリコに恋していたポピーは、彼に身も心も捧げた…。でも翌日、帰国する彼女をリコは追ってはこなかったばかりか、婚約解消したはずの女性と結婚してしまったのだ。だがある日、彼は再び現れる。まさか娘を奪うつもりではー?実らなかった身分違いの恋を忘れられぬまま、娘を心の支えに生きてきたポピー。一方、リコは妻を喪ったあと、ポピーが娘を産んだと知って花嫁に望むが…。王道シンデレラ・ロマンス!
14歳のとき、ルリはその完璧な美貌を妬む実母に、遠い異国へ借金のかたに売られた。以来、自由も友達もなく、気難しい老女性実業家の秘書として懸命に仕え、孤独に耐えてきた。だが8年後、雇い主が亡くなると、ルリは途方にくれた。私にはもう帰る家などない…。そこへニューヨークから雇い主の孫ガブリエルがやってきた。黒髪の長身でハンサムな彼は、冷酷と悪名高い大富豪実業家だ。その彼が告げた祖母の遺志は、あまりに衝撃的だったー私があなたと結婚する、ですって?
兄の結婚式の夜、ガリラは中庭で自分の孤独を痛感していた。誰かに愛されるってどんな感じ?私もいつかは経験できるの?そのとき暗闇からカリムという男性が現れ、彼女を熱く見つめた。初めて経験する胸のときめきに、ガリラは有頂天になり、気づいたときには、彼に情熱的な口づけを許していた。ところが翌日、カリムは国王という身分を明かし、ガリラを妻にすることを、彼女の兄に強引に承知させた。ばかね、一瞬でも、カリムに愛されたと思ったなんて…。愛はないがベッドで満足させる、とバージンの私に言う人なのに。
ようやく内定をもらえたホテルから採用を取り消され、納得のいかないカメオは担当者を訪ねた。するとそこで思いもよらぬ人物に遭遇する。ダンテ・ガッロー10年前、カメオの父を泥棒だと糾弾し、イタリアから追放した張本人がホテルの社長だったなんて!逃げるように立ち去った彼女は、途中、体調を崩した老婦人を助けるが、偶然にもそれはダンテの祖母だった。後日、彼から礼を兼ねた食事に誘われ、出向いたカメオは後悔するも遅かった。誘惑に抗えず、強引に唇を奪われて…。
雇い主の誕生日パーティに現れたゴージャスな紳士を見て、家政婦のカーリは絶句した。スタヴロス!それは紛れもなく、先だって屋敷のプールの改修を手がけ、甘いキスと抱擁で彼女をとりこにした修理工だった。彼が世界的に有名な大富豪?じゃあいったいあれは…?混乱するカーリに、スタヴロスはさらなる衝撃を与えた。「ぼくと期限付きの結婚をして、ニューヨークに来てほしい」愛のない結婚なんてまっぴらよ。でも、あの街にはひと目会いたい息子がいるーカーリは苦渋の決断をした。
「僕の妹の婚約者には、二度と会わないと約束したまえ」王族らしい高慢さをたたえ、カシムは嘲るような口調で言った。君のような女に妹の晴れ着を作らせるわけにはいかない、と。カシムの妹のドレスを縫うことになっているアンジェリクは、内気ながらその美貌ゆえにありもしない男性遍歴を噂されていた。私は彼の愛人じゃないー必死の抗弁は聞き入れられず、アンジェリクは気づくと力強い腕に抱きすくめられていた。「もう話すことは何もない。君の特技を見せてもらおうか」熱を帯びた褐色の瞳に絡めとられ、彼女は我知らず唇を開いた。
まさか、船が動いている!ヴィヴェカは窓の外を見て慌てた。ここは豪華なクルーザーの船内、持ち主はミコラス・ペトライデス。今日、妹が政略結婚するはずだったギリシアの大富豪だ。ヴィヴェカは不憫な妹のために、花嫁になりすまして祭壇に立ち、妹が恋人と逃げおおせるまでの時間稼ぎをする予定だった。ところがすぐにミコラスに見破られ、この船に連れてこられた。密室で男性と二人きりになり、無垢なヴィヴェカの体がこわばる。それを知ってか知らずか、ミコラスは傲慢な口調で宣言した。「代わりに僕と結婚してもらう。寝室に移ろう」