著者 : バ-バラ・キングソルヴァ-
心身ともに虐待され、心にトラウマを負ったチェロキー・インディアンの幼女、タートル。若い独身女性のテイラーはその子の傷を癒し、ともに生きようと決意して、やがてタートルを養女にした。しかし、人生とはつねに思わぬ方向へ転がるものなのかもしれない。たまたまタートルとテイラーがテレビに紹介されるや、チェロキーの女弁護士がいきなり乗り込んできて、こう言ったのだ。「白人は部族の許可なしにインディアンの子を養子にはできないのよ」切れ者と評判の女弁護士にわが子を奪われるとおびえたテイラーは、衝動的に、あてのない逃避行へと走る。一人の傷だらけの子をめぐり、サスペンスフルに、かつ情味豊かに繰り広げられる、大人たちの人生を賭けた駆け引き。旧来の幸福な家族像がことごとく崩壊しつつあるアメリカ社会で、新しい家族のありかた、新しい母子と隣人の関係を鮮明な夢のように描き上げ、全米ベストセラーに輝いた感動の大作。
この奇妙な青春のストーリーは、わたしが貧しく希望のない町をオンボロ車に乗って逃げ出したことから始まった。オクラホマのチェロキー・ネーションを通過中、インディアンの女が近づいてきて、頼みもしないのに車の座席に小さな子供を置いていった。わたしの体にしがみつこうとするばかりで、声も出せず、体じゅうに生々しいあざがあった。しかもその子は、女の子だったのだ。突然ころがりこんだインディアンの子供を連れたまま、わたしはアリゾナのとある町にたどりつく。そこにはまた、乳呑児をかかえ夫に捨てられた女や、暗い過去をまとうグアテマラからの亡明者夫妻がいた。それぞれの痛みや悲しみにとまどい、途方に暮れながらも、わたしはその町で生活の糧を得て、傷だらけの子供の閉ざされた心に光をあてようと試みるが…やがて、子供の心にさらに傷を負わせる事件が起こった。へらず口を叩きつつひたむきに生きる若い女主人公と、いたいけなインディアンの女の子との心の交感を描く感動作。