著者 : リン・グレアム
二十歳のタリーはパーティで出会った美しきギリシア人男性に惹かれた。海運王を父に持つ将来有望な投資家のプレイボーイ、サンダー。タリーはといえば、古風な乳母に育てられ、恋愛経験は皆無だった。このパーティには妹のつき添いとしてやってきたけれど、妹に使用人扱いされているような私を、サンダーはどう思うかしら?彼の目はしかし、タリーを明らかに女性として賞賛しているようだ。本当の相手が見つかるまでは独りでいいと考えていたけれど、胸が痛いほどのこの情熱を、今こそ解き放ってもいいのでは?タリーは誘惑されるまま、サンダーに純潔を捧げたーまさにその瞬間、彼がはたと気づき、吐き捨てた。「初めてなのか?何を企んでいる!」
フェイスは空港で見知らぬ男性から“ミリー”と呼びかけられ、困惑した。人違いだと言って逃げるようにその場は立ち去ったが、数日後、その男性、ジャンニが再び現れて写真を突きつけた。「きみは僕の恋人だった。3年間、ずっと捜していたんだ」そこに写るミリーは、まぎれもなくフェイス自身だった。いったいどういうこと?なぜこんなに胸がざわつくのだろう。3年前、フェイスは身重の体で交通事故に遭い、記憶を失つた。以来、両親を名乗る夫妻のもとで、生まれた息子だけを支えに生きてきたのだ。でも、私がミリーならここにはいられない。彼女は衝動的にジャンニの胸に飛びこむが、突然記憶が蘇り…。
両親に捨てられ、掃除人として身を粉にして働くタビーは、里親の元で姉妹のように育った親友を看取ったあと、遺された生後6カ月の赤ん坊の後見人となった。だが、独身で貧しい彼女に福祉局が養育権を認めず、悩んだ末、タビーは会ったこともない遺児の共同後見人ーギリシア富豪アケロンに協力を仰ぐことにした。巨大なビルの最上階で対面した彼は、恐ろしいほどハンサムで、とてつもなく冷酷だった。「その薄汚い女をつまみ出せ」にべもなく追い返されたタビーだったが、なぜか数時間後、態度を急変させたアケロンにプロポーズされて…。
ギリシア大富豪ニックと離婚協議中のベッツィ。もう引き返せない。夫のあんな秘密と嘘を知ったあとでは。ニックを心から愛していた。だから子供が欲しいと言った。なのに、まさか彼がもう何年も前に避妊手術を受けていたなんて!名もなきウエイトレスだった私に、ギリシア名家の跡継ぎを産ませるつもりなどはじめからなかったのだ。だが別居中のニックがふらりと屋敷に立ち寄ったある日、二人は離婚のことも忘れ、何度も激しく求め合ってしまう。尽きることのない情熱と、夫への愛に苛まれるベッツィは、2カ月後、信じられない体の変化に気づく…。
失職してロンドンを離れ、元里親の家に身を寄せていたリアは、ある日、臨時の家政婦としてイタリア富豪の留守宅に赴いた。汗だくで掃除を終えたあと、ついに我慢できなくなり、生まれたままの姿で室内プールに飛びこんだ。そこへ男性が現れ、リアは凍りついた。ああ大変!庭師かしら?だが、秘書だという彼の美貌に惹かれ、たちまち虜になる。一夜限りの恋と知りつつ純潔を捧げた翌朝、彼が屋敷の主人ジオだと知って愕然とし、リアは逃げ帰った。3カ月後、リアは彼のオフィスを訪ねたー身重の体で。
父を訪ねてきたニックに会ったとき、リーはひと目で恋をした。こんなすてきな人のためなら死んでもいいとさえ父に言い、17歳のリーはニックと結婚式を挙げた。だが、結婚初夜からずっと彼はリーに指一本触れようとしない。もう5年も、リーは砂を噛むような空疎な日々を送ってきた。ニックと別れる決心を固めた矢先、彼女は恐ろしい事実を知る。父がニックの家族の重大な秘密を握り、脅迫して、彼に結婚を承諾させたのだという。夫は、別れたくても私と別れるわけにはいかないのだ!
クレオはギリシアの海運王アリが経営する会社で、臨時の受付係として働きだしたが、初日から大失態を演じ、アリに呼びだされて大目玉を食らってしまう。だが、不覚にも彼女はボスをひと目見るなり陶然となった。こんなに美しい男性がこの世に存在するなんて…。社員旅行先の湖で溺れたところをアリに救われたクレオは、これは運命なのだと信じ、彼に身も心も捧げてしまう。魔法の一夜が明け、身分違いの恋に怯えた彼女は逃げだすが、彼に異母弟の遺児と会ってほしいと意外な頼み事をされて…。
イギリスの田舎で小さな花屋を営むジェマイマは、ある日、見覚えのある高級車が店の前に止まっているのに気づいて青ざめた。別居中の夫、アレハンドローついに彼がやってきた!伯爵の彼とは出逢ったとたん恋に落ちて結婚し、スペインの城へと移り住んだものの、彼の情熱は日ごと失われた。不運な流産を機に、アレハンドロのベッドからも追い払われ、2年前、ジェマイマは泣く泣く家を出たのだった。警戒心をあらわにする彼女に、アレハンドロが傲慢に言い放った。「僕を裏切った女と離婚するために来た」皮肉ね。あのとき失ったはずの子がじつは生まれたというのに…。
窓の外でヘリコプターが着陸するのを見て、ギャビーは仰天した。あれはテモスの国旗!アンゲル王子がなんの用でこの田舎へ?ギャビーは大学時代、誰もが憧れる彼に熱烈な恋をしていた。5年後アンゲルと再会した彼女は、熱く誘惑されて純潔を捧げる。翌朝、姿を消した彼の赤ん坊を身ごもるとは想像もせずに。ところがギャビーが妊娠を伝えに行っても、アンゲルは信じず、弁護士を従えて“僕の子のはずはない!”と言い放った。あの屈辱から1年、彼は赤ん坊が我が子だと突きとめたらしい。結婚か裁判か迫られ、ギャビーは泣く泣く結婚を選んだ…。
大企業の御曹司ラファエロと、屋敷の庭師の娘グローリー。5年前、若い二人は自分の差など気にせず愛し合っていた。だが彼の父親に、息子と別れなければ家族を破滅させると脅され、グローリーは泣く泣く一人屋敷を去るしかなかったー何も知らないラファエロに裏切り者だと恨まれながら。そして今、彼女はすがる思いでラファエロを訪ねた。弟が屋敷で騒ぎを起こし、窃盗の疑いまでかけられているのだ。弟を訴えないで。できることはなんでもするから…。そう懇願するグローリーに、ラファエロは冷淡に告げた。「なんとかしてやろう、きみが体を差し出すなら」
未婚の母から生まれたタティは一族の恥とさげすまれ、おじ一家から使用人同然の扱いを受けながら暮らしていた。今日はいとこのアナの結婚式だが、タティは花嫁から、自分が逃げ出すあいだの身代わりになってと強引に頼まれる。美しいいとこが結婚するのは、アルハリアの王太子サイーフ。そんな大役を野暮ったい私が?すぐに見破られてしまうわ。案の定、別人と気づかれ、激怒したおばに叩かれそうになる。止めに入った凜々しい花婿を見たときは、助かったと思った。ところが式はそのまま続き、タティは王太子妃にされてしまう!
「子どもたちを認知してもらうために、裁判所に訴えるわ」ベルは震えながら、冷酷な大富豪クリストに宣言した。幼いベルを連れ、クリストの父の別荘で住み込み家政婦となった母は、雇主を愛し、5人の子をもうけたー日陰の身にずっと甘んじたまま。その母も雇主も亡くなった今、父親違いの弟妹たちと遺され、途方に暮れるベルの前に現れたのが、クリストだった。隠し子の存在を一族の恥とし、養子に出すよう迫る彼に、ベルは弟妹たちを守りたい一心で、とっさに裁判の話を持ち出したのだ。醜聞を避けたいクリストは、思惑を秘めた目でベルを見据え、言った。「ならば子どもの面倒は僕が見よう。ただし、君が妻になるのが条件だ」
結婚式当日、スージーはウエディングドレス姿で逃げ出し、のぼった木から下りられずに低体温症になりかけていた。村の有力者の花嫁にならなければ、父の借金は帳消しにならない。でも暴力をふるわれて、結婚は無理だと気づいたのだ。彼女はスペイン人男性に救われ、彼の隠れ家で介抱された。男性は父の借金まで清算してくれ、スージーは驚く。なんと、彼はスペインでも屈指の富豪一族の長だったのだ!その富豪に婚約者になってほしいと頼まれ、彼女はさらに驚いた。彼も私をお金で買うつもりなの?元婚約者のように?
きつい清掃の仕事をしながら大学進学を目指すロージーは、新しい派遣先でハンサムなギリシア人アレックスと出会った。初めて惹かれた男性に身も心も捧げ、幸せを感じたのも束の間、彼の子を身ごもったことが、その後のすべてを変えてしまう。妊娠を伝えに行くと、そこにいたアレックスーいや、本名アレクシウス・スタブローラキスは、大企業の経営者で、天涯孤独のロージーは、実はギリシア富豪の孫だと言いだした。そして飄々と告げたのだ。「結婚とひ孫の誕生を報せに行こう」アレックスは驚愕するロージーを連れて、一路アテネへー。
犬23匹に猫6匹、うさぎ2羽。解雇され、住まいも失ったのに、この子たちの行き先を見つけ、生活費も稼がなくてはならない。しかも今、エイミーは妊娠していた…富豪セヴの子を。天涯孤独な動物看護師の私にやさしく声をかけ、誘惑したのは、プレイボーイのセヴにとって、ただのゲームにすぎなかった。でも愚かで無垢な私は舞い上がり、すてきな彼に夢中になって、一夜をともにした。愛されている、幸せになれると思って。愛を否定された心の傷は、まだ癒えていない。だが追いつめられたエイミーは、震えながら彼に助けを求めた。
19歳の清掃員ビリーは、勤め先の高級アパートメントでギリシア富豪のギオが倒れているのを見つけ、懸命に介抱した。それを機に急接近し、ビリーは求められるまま彼に身も心もゆだねたが、情事の相手以上の存在として見られることは決してなかった。愛も純潔も捧げ尽くした哀しき愛人ーそれがビリーだった。その証拠に、ギオは良家の女性と結婚。彼女は失意に暮れ、姿を消した。ところが2年後、ギオが予告もなしに家の玄関先に現れる。「離婚したから、君とよりを戻しに来た」と言って。なんて身勝手なの…。むろん、ビリーは即座に拒んだ。足元で無邪気に笑う、ギオに似た幼子を、必死に彼の目から隠しながら。
母の死後、継父から家を売ると言われて、タンジーは驚いた。さらに、あるギリシア富豪の形だけの妻になれと言われて戸惑う。富豪のジュードは目の覚めるようなハンサムな男性だったが、タンジーを日用品か何かみたいに品定めし、結婚の話を進めた。しかしベッドをともにすると聞いて、タンジーは仰天する。まだ男性を知らなかった彼女は、怖くなって家に逃げ帰った。だが継父は激怒し、それなら今すぐ出ていけと継娘に迫った。生後10カ月の、愛する妹の幸せを考えるのよ。泣く泣くタンジーは富豪に電話し、結婚を承諾するのだった…。
病院での夜勤のあと、ピクシーは兄の話を聞いて耳を疑った。面倒を見るのがいやで、私の子を捨ててきたですって?いいえ、兄のめあては子供の父親ギリシア富豪トールのお金だ。1年半前、ピクシーはトールに純潔を捧げて身ごもったが、妊娠を告げると、“君を知らない”と彼に追い払われたのだった。急いで会いに行った彼は、今もハンサムで堂々としていて、ピクシーは安っぽい自分の格好を恥ずかしく思った。でも昔と同じ屈辱を味わってでも、トールには真実を伝えよう。どうか母親失格だといって、彼があの子を奪いませんように…。
ベサニーがラズルと出会ったのは学生時代。そのエキゾチックで危険な魅力に一目で惹かれたが、彼から激しく求められても、二人が結ばれることはなかった。砂漠の国の皇太子である彼との未来なんてありえないから…。数年後、ベサニーは仕事でラズルの国へ派遣される。一国の権力者がベサニーの入国を知ることなどないはずなのに、なんと彼女は空港で拘束され、まっすぐ宮殿へ連れていかれた。再会したラズルは端整な顔に不敵な笑みを浮かべ、言った。「あのとき僕を拒んだ君に、女の悦びを教えてやろう」
ある日裁判所から届いた召喚状を読み、貧しいマヤは驚愕した。借金をすぐに清算しなければ、家が没収されるという。両親の代理で出向いたマヤに、債権者の富豪ラッファエーレは、彫刻のように美しい顔で驚くべき解決策を持ちかける。「ぼくと結婚して後継ぎをもうければ、借金は棒引きにする」見知らぬ人と愛のない結婚をして子供を産むなんて、無理よ!でも断れば、障害のある弟をはじめ、一家は路頭に迷う…。悩んだ末、両親に高給の仕事が見つかったと嘘をつき、マヤは偽りの花嫁になるために、イタリアへと旅立った。大スター作家リン・グレアムが描く、胸に響く珠玉のシンデレラロマンス。一見、傲慢で冷酷に見えたヒーローの隠された優しさに気づき、しだいに心惹かれていくヒロイン。待望の妊娠がわかったとき、喜びと同時に悲しみも湧きあがり…。