著者 : リン・レイ・ハリス
ジャーファル国の王子アダンは、我が耳を疑った。2年前に砂漠へと姿を消し、亡くなったと思われていた新妻、イザベラを見かけた者がいるというのだ。王位継承を目前に、アダンは再婚を控えていた。だが妻が生きているとわかった以上、このまま先へは進めない。アダンは自らの目で確かめるために現地へ飛ぶが、そこにいたのは、別人のように美しく成長したイザベラだった。驚いたことに、彼女は夫がいることも、幼い息子のことも、すべての記憶をなくしていた。「お願い、息子に会わせて」彼女の申し出を聞くまでもなく、アダンは妻を連れ帰るが…。
パーティに向かうリムジンに乗った秘書のフェイスは落ち着かなかった。社長レンツォが恋人と今朝別れたので、私は単なる身代わりだけれど、彼は地味な秘書の変身ぶりに、少しでも気づいているかしら…?もちろんフェイスは、レンツォのこの個人的な頼みを断ろうとしたが、結局、彼の押しの強さに負けて押し切られてしまったのだった。レンツォの下で働いて半年、なんとか彼の魅力にあらがってきた。しかし今夜、ドレスに着替えた秘書に興味を引かれたレンツォは、さらなる要求を突きつけてフェイスを驚かせるー故郷のイタリアへ一緒に来てほしいというのだ!彼の屋敷に住んで24時間一緒に仕事をこなす、個人秘書として。
一夜だけでもいい、自信に満ちた魅惑的な女性になれたら。その一心でティナはベネチアの仮面舞踏会へ出かけ、身を捧げたいと思えるすてきな男性とめぐりあった。「仮面はつけたまま、名前も明かさないことにしよう」耳元でささやかれた言葉に、彼女はうなずいた。ところが、夢のような時間を過ごしたあと、どうしても素顔を見たくなり、眠る彼の仮面をそっとずらした。まさか初めての男性が、兄の仇敵の侯爵ニコだったとは!皮肉な運命に愕然とし、ティナは無言でその場を逃げだした。だが2カ月後、ティナはその身に小さな命を宿していて…。
ジャーファル国の王子アダンは、我が耳を疑った。2年ほど前に砂漠へと姿を消し、杳として行方が知れない妻、イザベラを見かけた者がいるというのだ。王位継承を目前に、アダンは再婚を控えていた。だが妻が生きているとわかった以上、このまま先へは進めない。アダンは自らの目で確かめるために自家用機で現地に飛んだ。案の定、そこにいたのは亡くなったと思われていた妻だった。だがイザベラの美しい目は、まるで他人を見るようだ。アダンは怒りのあまり、すぐ国に帰るよう鋭く言い渡したが、イザベラは、夫に関する記憶をすべて失っていたー。