著者 : ヴィークトル・ペレーヴィン
汝はTなり汝はTなり
謎の目的地「オプチナ・プスティニ」に向かうT伯爵の前に現われる驚くべき試練の数々、その最初のミッションはトルストイになることだったートルストイが記憶喪失の武術の達人になり、ドストエフスキィが斧を振り落し、ソロヴィヨフは監獄にいる。ロシアの春樹とも評される現代ロシア最大の巨人がつくりだす壮大なる狂気の迷宮。世界と文学、生と死の臨界を問う空前の巨編。
虫の生活虫の生活
日々回転しつづけるわたしたちのこの世界はフンコロガシに押されていく糞の玉だ。その中で他人の生き血を吸うことに明け暮れる蚊=ビジネスマンが飛び回り、闇の中で光の意味について蛾=若者が語り合い、いつか陽の目を見ようと単調な穴掘り仕事をつづける蝉の子=労働者が這いずっている。人生は虫の生活に似ているなどと思ってはいけない。宇宙に行き交うものすべてが変態を続ける虫の自我の現れなのだからーカフカの『変身』で始まった二十世紀の文化を締めくくる小さく深い虫物語。
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